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    asatosan_44

    @asatosan_44

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    マイ武中心、🎋受け大好き人間

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    asatosan_44

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    pixivに投稿したものをこちらにも再掲します。

    #マイ武

    過去から戻ったら関係が泥沼化してたんですがこれ如何に?⚠︎一人称、三人称入り乱れます。読みづらかったらバックプリーズ
    ⚠︎色々キャラ崩壊注意
    ⚠︎誹謗中傷はNO
    ⚠︎名前の呼び別けかたは特に意識してないので深く考えないでください。
    ⚠︎中身のないお話なのでフィーリングで読みましょう。
    ⚠︎誤字脱字はそっと教えてください。






    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    【大団円の後の後は修羅場】




    _____もしかして俺は何か重大な過ちを犯してしまったのだろうか?
     彼氏の過去が壮絶すぎて助けてあげたいと思って東奔西走。過去へ未来へ行ったり来たりした結果やっとみんなを救うことができたのですが、こんな結果俺も予想外です。






     …どうして俺は時代劇でよくある様な藁のむしろで米俵よろしく縛られているんでしょうか?え、だれか説明プリーズ???
     藁のむしろって意外とあったかいけどチクチクして痒いな?俺恋人に抱きしめられるよりも前に藁に抱きしめられるなんて思わなかったなぁ…。

     今の武道の状態を説明するのなら、一言で言えば簀巻き状態。
     詳しく説明するならば、今の武道の状態に不釣り合いなほど毛足の長いフカフカなカーペットの上に“簀巻き”にされ雑に転がされていた。
     一見、反社に捕まった愚か者が辿る最後を想像してしまうが、ここは彼らが所有(してそうな)廃工場でも、廃ビルでもないので多分殺されることはないだろう。
     いやまぁ、恋人が反社のトップな時点で人生大分詰んでいるんだが、そこはまぁ愛の力(と書いてBIG LOVEと読む)があるので別に職業云々はどうでもいい。どうでもいい問題でもないんだけど。
     人を殺してたとしても悪いことしてたやつ?とか裏切り者だとか?だって前に言ってたし…。
     あれ、でも過去を変えたのになんでまた反社やってるんだろマイキーくん?
     まぁそこは追々考えていこう…。これからは、人殺しさせないように俺が監視すればいいだけの話だもんな…!!!
     簀巻き状態の俺は目の前の座り心地の良さそうな皮張りのソファに座る反社の首領、佐野万次郎(通称マイキー)を餌を待つ魚のように下から見上げる。
     最初、簀巻きにされる前まではマイキーくんが少し楽しそうに俺のこと縛ってるなぁくらいにしか思ってなかったし、簀巻きを完成させてからは満足そうな顔をしていたからまあいいかと思った。
     









     確かに、“俺の”、“彼氏”、のマイキーくんが楽しそうだし、満足そうだからいいかなって思ったりなんかしたけど全然良くないよね??
     何一ついいところが見つからないね?!?助けてヘルプミー!!!
     ちょっと常識人の方、この中で彼を止められそうなくらい常識のあって、辮髪で龍の刺青のある苗字が龍宮寺、名前が堅で通称ドラケンって方いらっしゃいませんかぁあ!!!

     俺が心の中で1人阿鼻叫喚を体験している中、いつの間にやらマイキーくんの隣に美人さんが立っていた。いや?むしろ簀巻きにされてる時マイキーくん手伝っていなかったか…?マイキーくんにしか興味がなくて見てなかった。失態!!!

     え、まって!ちょっと待ってマイキーくんの隣にいる美人さんちょっと近くないですか?
     桃色の普通じゃありえないマ○メロの擬人化みたいな?

     は?まつ毛が長い、顔がいい、綺麗、口の傷?が印象的だけど顔の良さで全て解決するレベルの美人さん本当、誰??
     いやむしろサモトラケのニケみたいに不完全だからこそ美が引き立つ的なアレ?美術の成績1だったから良くわからないけど。
     浮気?あんなに必死こいて助けたのにまさか俺、捨てられるの?


     【カレピを救うために過去を変えて、戻ってきたら彼氏が知らない美人に“N T R れ”ていた!??】     

     ってAVの題名みたいな悲惨なことある???


     え、俺悲しすぎて泣く、泣いた。
     無理立ち直れない。死にそう辛い。自他共に認める図太さを持ってしてもこの心の傷は言えない無理。家出しよ。実家に帰らせていただきます。そもそも同棲もまだできてないけど。荷物まとめて帰らせていただきます。

     はっ!そういえば今縛られてて動けなかった。
     なら仕方ない恨言の一つでも言ってやらないと気が済まない。
     
     ジーっとハイライトの消えた真っ黒な双眸がなんの感情も読めない状態で武道を見つめ続けている。
     他人が見ればこの恐ろしい状況の中で、口を開くのはもはや勇者を越してただの死に急ぎ野郎としかいえないだろう。
     そんな状態にもかかわらず開口一番、吐いた言葉は死に急ぎ野郎も裸足で逃げ出すほどの大バカ発言。

    「マイキーくんのうわきものぉ〜…」

     浮気という言葉を聞いた瞬間に武道の彼氏である万次郎のこめかみに血管が浮き上がる。
     少しでも触れたら破裂しそうなほどビキビキと浮かび上がる様は地獄の閻魔でさえ恐怖する様などえらい表情と表現してもいいだろう。
     しかし万次郎かて大人である。無闇矢鱈に恋人を撃ち殺したりしない。
     たとえ嫉妬で腑が煮え繰り返りそうになったとしても。
     努めて冷静にかつ、優しい声で武道へと声をかける。その声がたとえ地獄の釜を開けた様なおどろおどろしい音だとしても。

    「は??タケミっち何言ってんの??浮気したのはお前だろ??」


     たとえ万次郎がドスの効いた声で語りかけてもこの死に急ぎ野郎はなんらダメージを受けていない。むしろ声が低くて風邪でも引いたのか?とでも思っているくらいの激にぶ鈍感図太精神の持ち主である。これは周りがある程度妥協をして諦めるしかないレベルの鈍感レベルだ。


     おぉっとー?マイキーくんからのまさかの一言に驚いた。え、俺が浮気?いつ??俺の預かり知らないところで俺じゃないオレが居たってこと??え、じゃあ今の俺はオレであって俺じゃない???
     …ってそんなわけないだろ〜マイキーくんの勘違いだって!だって30年間童貞処女(女じゃないのに何言ってんだろ)貫いた魔法使いの俺だよ?モテるわけないじゃん。
     来世はイケメンに生まれてモテたい(願望)
     とりあえず誤解はとかないとね!!!

     全くこれだからイケメンは童貞モブ男のモブたる所以を全くわかってないな〜。やれやれしょうがない寛大な俺が教えてやらないと世の中の男に対する万次郎の評価が過大評価になり、多くの人が自信喪失という名のインポになってしまったら困るからな〜。なんてアホ通り越してバカな考えをしながら万次郎に答える。


    「いやいやいや、俺生まれてこの方浮気どころか彼女も中学時代にたった一人だけでキスどころか手も握れずにわかれて、30歳過ぎても童貞(処女)の魔法使い街道一直線な“冴えない”、“モテない”、“センスない”の三拍子揃ったフリーターですよ???浮気どころかモテる要素皆無のボサボサブサ男の俺がマイキーくんの彼氏?になれただけでも天変地異の前触れなんじゃないかってくらい奇跡なのに、剰え別の人を引っ掛けられるとお思いで???こんなモブ男を好きになる物好きそんじょそこらのノーマルな人じゃいないですよ〜〜」

     最初は勢い良く喋り始めた武道も自身の惨めさにどんどん語気は弱まっていく。
     

     …いや辛っ!!!え、自己分析して語ってるだけなのにこんなに自分で言ってて悲しくなることある?
     いやほんとに30年くらい生きてきてモテ期なんてこなかったし、もはや俺のモテ期は虚数だから現実で起こり得ないのだと思ってる。
     こんな何もない俺を好きになってくれるのなんてマイキーくらいしかいないよな…。
     むしろよくマイキーくんは俺のこと好きになってくれたよね?本当に奇跡。神様ありがとう〜〜!
     あんたのこと一度も信じたことなかったけどマイキーくんに合わせてくれたから今日からは俺は入信者。
     まぁ、クリスチャンにはならないけど。日本は他宗教国家なので許してくれ神様。(アーメン)


     




     ふぅ。
     それにしても、今日も俺の彼氏の顔がいい。抱きしめて頭撫でてあげたい。
     くっきりと刻まれた隈は追々退治するとしても、すらっと伸びた手足に透き通るほどの肌色(血色が悪すぎて真っ白に近いが)に淡いピンクの唇がかっこよくてキュート〜!俺の彼氏最高〜〜なんでここにサイリュウムがないのかそこだけが問題だ。
     はっ!!そうだ俺頑張ったんだから、ご褒美にキスの一つでもしてもらわないと俺の疲労は回復なんてしないんだからな!

     ほぁ〜〜マイキーくんほんとかっこいい〜、けど隣の美人マジで誰?????
     やっぱり近いです!離れて!!万次郎同担大歓迎だけど全方位彼女面NGです!!!

    「タケミっち〜、オーーイ帰ってこーい」

     万次郎の顔の良さに1人百面相をしている武道を情緒大丈夫だろうかこいつ?と誰しもが思う中彼氏である万次郎が声をかける。
     万次郎からすれば彼がこうして人の話を聞かず思考の海に溺れて情緒が救済困難になるのは日常茶飯事と言っても過言ではない。
     蛇口を捻れば水が出るのと同じくらい当たり前なのである。


    「っは!!!自分の不甲斐なさと眠れる嫉妬心に宇宙の真理が見えかけるところでした!!!」

    「タケミっちのどんな状況でも物おじしない、そう言うアホなところほんと可愛くて好きだよ…でも、今の状況少し考えようか?」

     今回ばかりは怒りが先んじてきているため万次郎も甘く見ることはできない。本来ならデロデロに甘やかしてお砂糖と蜂蜜をまぶして純培養したいところだがここは心を鬼にする。
     この緊迫感がない状況に流石の万次郎も疲れてきたのが5割、怒りが3割、抱きしめたいという気持ちが残り全てを占めているため表情が少し引き攣ってしまうのは仕方のないことだろう。
     はぁ、本当タケミっちて魔性だわ…。





     え、うそ?“あのマイキーくん”が引いてる?
     え、全方面から俺のこと好きって言ってくれるくらいゲロ甘のマイキーくんが?
     馬鹿な子ほど可愛いって言ってドヤ顔して後方彼氏面するマイキーくんが引いてるだと?一体誰のせいで?




     ん??待って俺が思案しているうちにいつのまにかまたマイキーくんの近くに美人増えてるんですけど?(激怒)
     大手企業に勤めてるできるサラリーマンみたいなあの、七三?みたいな髪型した柔和な笑みを浮かべた新しい美人さん誰ですか??
     マイキーくんの後ろ立たないで〜(泣)


    「いや、余裕すぎじゃない???お前のせいでさっきから兄ちゃんの笑いが止まらないんだけど??ほんとフザケンナ」

    「ぶふぁぁwwwwヒィィ〜wwむり、もうほんとこいつ頭おかしいwwww」

     は??また美人な人でてきたんですけど(怒)
     今度はくらげみたいな頭(頑張った悪口)したこれまた美人がきた。あ、サラリーマンさん(仮名)とお顔が少し似てる気がする?髪色もだ…。紫と黒の毒々しさやばいな…。どういう精神状態してたらそのコンボ決められるんだろ?
     あんな色でも似合うんだから顔がいいって羨ましい…。

     彼らはもしかしてご兄妹?お兄さんってことだからサラリーマン(仮)さんは男確定と。
     うん、マイキーくんは男もいける口?だから仕方ないとしても何人出れば気が済むの???むしろ美形には美形の人しか横にいちゃいけないルールでもあるんですか?(絶許)

     混乱する武道は簀巻きの状態でカーペットをゴロゴロとあちらこちらにローリングする。その様はまるで陸に打ち上げられた魚がビチビチと飛び跳ねるような、この場に全く似つかわしくない緊張感0(ゼロ)のもので、それを見たサラリーマン(仮)さんが大声を上げてさらに爆笑し始めた。
     テロップにするならこんな感じだろう。
    【サラリーマン(仮)は笑いすぎて過呼吸を起こし始めている。彼のライフはもう(ほとんど)0(ゼロ)よ!!】
     
     
     怒った。俺もう怒っちゃうからな!
     万次郎の周りは美人が多すぎて無理、許せない。許さない。浮気ダメ絶対!!!!!
     ま、まんじろぉ〜もしかして俺のこと捨てるの?いやだやだやだ〜(泣)
     俺、万次郎のこと独り占めできなくてもいいよ(1000万歩譲って)、でも捨てられるのだけは嫌だァ…。

     情緒がジェットコースター並みに浮き沈みする武道は顔を赤くさせたり、青ざめさせたり、泣き始める寸前のような耐える顔をしたりと1人百面相を繰り返す。

    「万次郎!!!浮気ダメ絶対!!!かっこいいからって浮気禁止です!!!皆さん万次郎から離れて!!!!!万次郎は俺のなので半径50M以内に入らないでください」


    「ア???」

    「いや独占欲強いな!?」

    「ヒィィっwwwwもう、ほんとこいつ最高〜〜!!!ヤク決めた時のハイテンションヤク中よりウケるwwww」

     万次郎以外の彼女面三人衆(推定)が次々に声を上げる。いやあのサラリーマン(仮)さんさっきから笑ってるけどそろそろ過呼吸で死ぬんじゃないだろうか?
     でも敵が1人でも減るならこちらも万々歳である。
     よろしいならば戦争だ!状態でこちとら挑んでいるのである。妥協などせん絶対にだ!!
     “本妻”は俺だからな!!!
     気合を入れて、美形三人衆に声を張り上げる。しかしお忘れだろうか、今の武道の姿は簀巻きである。とても格好がつかない。とても格好がつかないのである。



    「美人は特に絶許なのでピンク髪の美女さんは絶対に万次郎に近づかないで!!!」



     そう大声で告げると、今まで耐えていた俺のゆるい涙腺がとうとう崩壊した。目が潤み出し始めたら、ダムの決壊の如く涙がバシャバシャと零れ落ちる。

     うっ、なんで恋人の為にお兄さん救ってドスで刺されて、銃で撃たれてもへこたれずに頑張って帰ってきたのにこんなAVみたいな展開で迎えられてるんだろ?(本日二度目)
     え、俺前世で悪行とか業とか何か罪深い物背負ってんの???
     だからこんな泥沼のNTR展開勃発してるわけですか?
     うえぇ〜ん側室は置いても本妻は俺じゃないと許さないからな万次郎のバカァァァア〜〜〜

    「え、タケミっち…なかせ…は??」

    「〜〜〜スゥ、ウルっセェェ!!!!!このゲロドブクソゴミカス!!!!オメェの目玉は腐ってんのか!???だれが女じゃボケ!!!てか王はテメェのモノじゃねぇんだよ雑魚!!!!!」


    ゴチンっ!!!

    「ぎゃいん!!!!イッタい!!え、うそ殴られた???」


     頭部を襲うあまりの衝撃に武道の目の前には星がカチカチと舞い、頭上をアヒルがピヨピヨと回っている。くらくらとする頭に半分目を回しながら武道は今の状況を理解するために前、自身の頭を殴った元凶を見据える
     

     今、人体から到底出てはいけない様な音がした。え、俺の頭蓋砕けてない?大丈夫?
     というか、今この美人さんが殴ったの?そんな腕力ゴリラみたいなことある?ア○パンマンが顔上げた後みたいに俺の頭凹んでない?
     こんな美人なのに腕力ゴリラなことある?
     え、ゴリラの化身ですか?????
     しかもなんかすごい罵られた様な?既視感を覚える様な…???でもこんなゴリラ友人にはいないしな…。
     

    「テメェ、王の命令だから黙って聞いてりゃ人のこと女だと勘違いしてやがるし、挙げ句の果てにオレのこと忘れてんのかこの阿婆擦れドブスが!!!」


     そう言って縛られている?俺の胸ぐら(正確には藁)を掴み目ん玉かっぽじって良くみろや的な圧をかけてくる美人さんに恐怖した。
     うわっ、肌のきめ細か!!!び、美白ぅ、!!これで口が悪くなければ世の中の人間全員ころっと逝くわ〜。
     顔天使なのに腕力ゴリラって治安悪すぎません?

    「ひぇぇ〜口わる〜!??え、何この美人(ゴリラ)さん口悪すぎだし、え、男…???…ん??この口の悪さにまつ毛の長さと顔だけは天使のこの顔…???ご、5番隊の………ヒェッ、さ、さ、三途様じゃないですか〜ヤダァ…」

     ハハハッと乾いた笑いしか出ない。
     いや、元五番隊副隊長三途春千夜だけはやばい。五番隊のゴはゴリラのゴだったんだなぁ納得〜〜。じゃない!!!!!
     こいつとは過去何度もマイキーくん関連で口喧嘩を繰り広げた。
     お互いに愛のデカさが莫大すぎて1000回くらい引き分けになっている。(もちろんマイキーくんの見えないところで行った非公式バトルである。このゴリラとの壮絶なバトルは、追々話すとしよう。)

     うそでしょ、過去の三途くんも美人だったけど現代でこんなに美人になります?
     なんでこんなに顔は天使なのに腕力ゴリラで口から出る言葉がハリセンボンなんですか?(混乱)
     てか前まで白髪?イケメンだったのになんであんなマイ○ロリスペクトしたみたいな髪色してるんですか???ヤダァこんな治安が悪くて平和じゃないマイメ○信じたくない。
     本当、あんな天使みたいな顔してこんな口汚い人いるってだれが想像つくんだろう?俺は想像つかなかったよ。
     初対面の時に美人さんだから優しいかな?って思って喋りかけたら『オイドブゥ、ゲロカスの分際で喋りかけんな』って言われたの今も根に持ってるよ俺!カスだけどゲロじゃねえし!
     NAR●TOのサ●ラちゃんみたいな髪色して人のことゲロカスとか言いますよこの人?ちょっと保護者ちゃんと教育した方がいいと思いますよ?


     俺と三途(ゴリラ)くんの無言の睨めっこを邪魔する声が聞こえる。

    「ねぇねぇ、三途とタケミチ感動の再会中悪いんだけど、首領が死のうとしてるの止めなくていいの〜?」

     さっきまで過呼吸になりかけるほど笑いまくってたサラリーマンさん(仮名)が話しかけてきた。
     あ、この人まともに喋れたんすね?最早そういうお人形なのかと思ってた…。
     よかったちゃんと人間だった…。
     なんかこの人たち一人一人説明するのに情報量多すぎない?疲れてくるんだけど。

     って!違う今それどころじゃない!!

     マイキーくん死ぬのはダメです!!!オレの地雷踏み抜いて裸でタップダンス踊ってシャンパンタワー作り上げてる様なモノですよ!!!!!

    「「いやいやいや、気づいてんなら止めろ!!!」」

    「えぇぇ〜蘭ちゃんまだ死にたくない〜〜」

    「オレがテメェの頭に風穴開けてやろうか??」
    「男が何、かわいこぶってるんですか!殴りますよ。」

     俺と三途くんが同時に喋り出す。
     俺は拳を突き出せなかったけど、三途くんは懐から銃を取り出してサラリーマン(仮)に向けている。
     嫌だから、治安悪っ!!!頼むから治安を維持してくれ!!!銃を出すな銃を!!!


    「?何、にいちゃんに銃口向けようとしてんだ物騒なマイ●ロが?お前の脳天ぶち抜くぞ薬物ジャンキー」

     あ、やっぱりマイメ○だと思ってる人いたんだ…。薬物ジャンキーのマイ○ロって最早パチもん通り越して別モンのバケモンだよ。いや、誰が韻踏めって言った!
     マイ○ロvs毒色クラゲの勝負はみたい気持ちもあるけど、メンチ切んな切んな顔面が綺麗だと凄みが100倍怖いからいつもの顔に戻って。


    「イヤだから情報量が多いんですって!!アンタらいい加減黙ってください!!!いいから万次郎押さえつけるの手伝って!!!」

    「ええぇ〜蘭ちゃん労働嫌い〜〜だるぅー。」

    「ほんといい加減にしないとアンタのスーツのボタン全部むしっててんとう虫取り付けますよ!」

    「え、このスーツオーダーメイドで(ピー)万くらいしたんだけど?」

     卒倒しそうなほどの高額に半分意識をやられかけたけど、血と硝煙の臭いがどうせこびりついてんだろ?絶対にボタン全部むしってやる!
     クソ反社が!世の中顔がいいやつしかモテないのかよ!金も女も!!!

    「うるっセェェ〜〜!!!!!お前ら一回黙って俺の言うこと聞いてくださいよ!!!!!マイキーくん助けられなかったらアンタら全員のパンツ全部にチンコのところにゾウさんの絵描いて穴開けてやるぅ。そのあと全裸でアンタらの名前叫びながら街中走って死んでやる」

    「「「おぞましいこと考えんな」」」



     初めて息があった3人をキョトンと見つめるとまた頭を叩かれた。
     死ぬとか冗談でも言うなときついお叱りを体罰で受けました。訴えてやる。

     3人+1人(こいつは半ば飽きている)でギャーギャーと騒ぎながら遠くを見つめる万次郎を止めるべく動き出す。




    「タケミっち泣かせてごめん。オレ、おれ…」

      
     万次郎の悲しそうな目がこちらを向き微笑む、ヒェッ、本当地雷です。無理!!!!!
     一瞬息を吸い込むのを忘れて壮絶に咽せる。
     涙が溢れてこぼれ落ちる。
     脊髄反射の如く俺は吠える。





    「万次郎死ぬなー!!!」




     顔面を青くした俺たち四人はもつれ込むようにして前へ進んだ。














            ーーーTo Be Continuedーーー
























     どうも武道です。いつも自分のことを鈍臭いと思っていますが今日ほどそれを呪ったことはありませんね。えぇ、ほんとに…。

     遡ること数分前、銃口を自分のこめかみに当てて微笑んでる万次郎に俺は焦って……勢いよく盛大に滑ってこけましたよね!!!
     もうそれは芸人もびっくりするくらい盛大に!
     そりゃあ、簀巻きにされているのを忘れて立ちあがろうとすればずっこけるに決まってますよね!!!
     でも転んでもタダでは起きない男、それが花垣武道というもので、“走るのを諦めて転がれば速いじゃない〜”の精神でそれはもう勢い良く転がった。
     自信を丸太だと思って一生懸命に。途中鼻を擦りむいて痛かった。ただでさえ低い鼻がさらに低くなったらどうしてくれる…。

     鼻を擦りむきながら勢いのまま万次郎にタックルを決める。
     効果音は宛ら“ストラーイク!!”であろう。
     俺のタックルの衝撃で目をまん丸にして驚く万次郎の顔が幼くて可愛くて少しだけホッとしてまた泣いた。
     万次郎の胸の中でまた号泣した俺を銃を手放した彼が抱きしめてくれた。
     
     銃は真っ青な顔をした三途くんが回収して震える手つきで弾を全て抜いて捨てていた。
     そのあとへたり込む様に地面に座っているのをみてオツカレサマデスとありがとうを込めて心の中で合掌した。


     涙も落ち着いてきた頃、自身の胸に顔を埋めていた俺の顔を少し上げさせ、二人して顔を付き合わせる。お互いの瞳の中にはお互いがいるだけの近い距離。
     彼の深い深い黒い瞳の中に吸い込まれそうな感覚に陥りくらくらしていると不意打ちをかけるように、まるで自分のことを無視するなとでも言うように彼が俺の頭をなぜる。その手つきがあまりにも優しいものだから頬の筋肉が緩み、へにゃりと力なく笑った。そのあと彼も優しく微笑むものだから俺の心臓はドキドキと言う音が早くなる。


     どきどきとして目が挙動不審に揺れる俺を無視して彼はさらに追い討ちをかけるかの如く、擦りむいた鼻の頭を労るようにチュッと優しく可愛らしいリップ音が響かせた。

     スパダリかよぉォォ!!!と心の中で叫んだ。





     俺の必死の行動で万次郎の自殺を止めることができて良かった。
     本当によかった。
     もう万次郎怖い…!至る所に地雷があって、時限爆弾式に爆発するからもうほんとに、目を離しちゃいけない!!!

     もうこうなったら、万次郎と俺のお約束3箇条作る。
    【俺と万次郎のお約束3箇条】
     ①,すぐ死のうとするの禁止!!!
     ②,浮気禁止
     ③,なんでも抱えこむの禁止

     以上



     


     
     ふぅ、そろそろ一息入れたい。
     ちょっと、みなさんだけでお茶飲んでるのずるくないですか?俺にもお茶ください。むしろそろそろこの簀巻きの抱き枕状態から解放してくれ。
     マイキーくんがこの簀巻き状態の俺に抱きついてきたことによってさらに暑くなった。
     いくら君が体温低いからって流石に俺の体温を包んだ藁をさらに君が包めば暑いって!
     アルミホイルの上にラップかけてる様なもんでしょ?違うって?それくらい暑いってことだよ察してくれ!!!
     もう本当にあっつい!さっき動いたから尚更…。ほんと解放して…タスケテ、タスケテェエ…

     そう思って三途くんに目を向ける。
     目を細めてニヤッと笑って中指立ててきたのでエンガチョしてやろ。
     心の中で親指を下に向けてあっかんべーってしてやった後にアッパーカットかましてやった。返り討ちにあった辛い。脳内シュミレーションでも負けんのかよ…このゴリラめ!

     次に万次郎を一緒に止める苦楽(楽はなかったが)を共にしたクラゲ頭さんに目を向けた。
     スッと何事もなかった様に目線を外された。裏切りだァ。

     もうこうなったら最終手段だ…

    「ま、マイキーくん。そろそろ簀巻き状態から解放してほしいなぁ…なんて…えへっ」

     マイキーくんの目を見つめながら小首を傾げ、微笑むという最大限のぶりっ子をしてみる。
     いや、三十路のぶりっ子ってなんだ?ただ気持ち悪いだけだろ。
     オイ、彼女面三人衆(推定)!おえぇぇって顔してんの見えてる見えてる。
     せめて隠せ隠せ、見えないところでやって。
     自分でもきついなって思ったけど、周りの反応を直視するとより如実になるからやめて。
     
    「そうやってタケミっち逃げる気だろ?」

     なんて目元を赤くしてこちらを見る万次郎。心なしか目がうるうると揺れている様に見える。そ、そんな捨てられた子犬みたいな眼で見ないで〜。
     俺逃げないから!マイキーくんが嫌って言ってもずっとそばにいるからーー!!!泣くな万次郎〜!!!

    「違うよ!!!俺がマイキーくんを抱きしめたいの!今度は交代!いいでしょ???万次郎は俺に抱きしめられたくないの?」

     俺がそう力説すると頬を紅色に染めて嬉しそうな顔をする。
     目だけで三途くんの方を見て告げる。


    「ン。三途やれ」

    「…………ウッス」

     声ちっさ!!!!!さっきまでおぇぇえって大声で吐いてた癖にどんだけ不服なんだよ。いい加減ビンタすんぞ。俺ハムスター並みに弱いかんな!すぐ死んじゃうぞ!!!
     久しぶりにやるか?【ハムスターVSゴリラ〜仁義なき万次郎争奪戦〜】ってタイトルで勝負してやってもいいんだぞ!!!
     絶対に負けないからな!!!何しろ俺にはマイキーくんって言う最強のスタンドがいるんだからな!!!ザマァミロ!!!

     そこから亀もびっくりなほどノロノロと貞子みたいな動きをしながらすっごい渋々、渋々俺を縛っていた縄を三途くんが切った。
     ようやっとこの簀巻き状態から脱することができた。
     長かった〜!腕が伸びる!足が自由だ…!は〜、空気がうまい。
     ということで、俺は万次郎を抱きしめることに専念する。


    「えぇー蘭ちゃん無視するとか生意気〜〜。竜胆には助けてぇ〜って目で訴えた癖に〜。ムカつくから目潰ししてやろう〜」

    「やめとけってにいちゃん。今のマイキー邪魔したら殺されるくらいじゃ済まないよ」

    「ちぇええ〜じゃあ仕方ないかぁ〜。あとで仕返しするとして、今は薬中からかってあそぼ〜〜」

    「テメェふざけんな!ゴミクズ兄弟!!!マジで鉛玉脳天にぶち込んでやろうか!!!」

     俺とマイキーくんの後ろで彼女面三人衆(推定)が痴話喧嘩してる。痴情のもつれってやつですか?オツカレサマです。そのままサンズくんを攻撃してくれー!イケイケ柴漬け兄弟〜。
     あの三人見てると柴漬け食べたくなるよね。なんか色味が若干似てる。
     このメンバーかなり胃にくるから胃もたれしてきた…、はぁ、茶請けに柴漬け出してくれないかな…。胃が重い。















     あれから数十分経ったけど、いやほんとにシンドイ…!30歳の身体(不摂生の極み)にここの空気はほんとに辛い。
     後ろでバカ三人は未だ痴話喧嘩してるし、いい加減うるさい。
     万次郎だけは離さないし話せない。俺は万次郎補充のためにコアラになる。
     今日から抱っコアラの赤ちゃんだから万次郎から離れない!!!
     マイキーくんめちゃくちゃいい匂いするんだけど?鼻の中がいい香り。ここが天国ってやつなんだね???
     絶対離さない。無理一生一緒にいよ…。



     マイキーくんに抱きついてると自然と先程の光景がフラッシュバックして涙腺が緩む。
     ずずぅ〜と鼻を啜り、涙がこぼれない様に万次郎の肩に顔を埋めながら呟く。


    「うぅうっ〜万次郎死ぬの地雷です。万次郎いなくなるの地雷です。万次郎闇落ち禁止、自殺禁止、浮気しても何してもいいから死ぬのだけはダメ。俺をひとりにしないでよばかぁぁあ〜」

    「うん。ごめんね、タケミっち。どこにも行かない。タケミっちだけだから。」



    「おい、あのブスめっちゃ猫被ってんぞ?汚ねぇ手でマイキーに触りやがって…絶テェ後でスクラァップ!!!」
    「いい歳してぶりっ子はないわ〜ちょっと引いた」
    「おぇ、三十路のぶりっ子はにいちゃんだけで間に合ってんだけど」
    「え?竜胆???」
    「ッwwwザマァ」

     ちょっとバカ三人組聞こえてますよ!!!
     ほんとそろそろ自重してくれません???キャラが濃いんですよアンタら!?偶には恋人に甘えても良くないですか??労働に対する対価っていうものがこの世にはあるんですよ!




     後ろから聞こえて来る声を無視して、対万次郎完全甘やかし包囲網形態に進化を遂げた俺に死角はない!
     もう全方面から甘やかす!万次郎が素直に泣けて、甘えられて、ぐっすり眠れて、健康で生きてくれるだけで俺は幸せです。
     ねぇ,君は今幸せですか?

     俺はね、君が嬉しそうな顔をしてくれるだけで幸せだよ?
     やっと肩の荷が下せそうだ。
     これからは君と二人同じ歩幅で歩いていきたいな〜。

     万次郎のサラサラの髪を撫でながら武道はそんなことを思う。
     ギャイギャイとうるさい後ろのBGMを遮断し二人微睡の中すやすやと眠りにつくのであった。
















    〜〜〜happy end〜〜〜











     で終わると思った?俺も俺も〜!!!
     これで寝て起きて、二人で寝癖見て笑って、『これからは2人で幸せに暮らそうね?』なんて言って『新居はどこにしようか〜』なんて談笑して終わると俺も思ってました。



     “そうは問屋が卸さない!俺たちの戦いはこれからだ!!!”ってか…やかましいわ!!!



     微睡から醒めたまではよかったんだよ、でこうさ、あるじゃん雰囲気とか!こう二人していい雰囲気だったわけですよね…
     


     俺の理想としてはだよ、

    『俺たち幸せに暮らそうね』

    『うん』

     キスしたいな…キスの流れだよね〜これ!!って目を瞑った瞬間だよ、外からけたたましいほどのドンドンドンドンって言う反社の取り立てもびっくりなノックの音が聞こえてきたのは。
     タイミング悪っい!!!

     チャイム通り越して扉をけたたましく叩かれる恐怖。怖い…何事ですか?
     え、ほんとにうるさいけど騒音被害で訴えられない?大丈夫??

     ノックの音が聞こえた瞬間にマイキーくんの目はぎらりと研ぎ澄まされた刃の様な色を帯び、さっきまで馬鹿騒ぎしていた3人はすぐさま臨戦体制に入れる様に各々の武器を隠している懐に手を添える。

    「オイ、サンズ」

     マイキーくんが声色硬く三途くんに目を向ける。わかっているとでも言う様に無言で頷き玄関へと向かう彼を見送りながらマイキーくんが俺を抱き寄せる。
     緊迫感漂うなか玄関先から聞こえてきた懐かしい声に俺は肩の力を抜いた。

     三途くんの怒鳴り声が聞こえる。

    「ウルセエから一気にしゃべんなゴミカス共!!!チャイム鳴らすの通り越してドアばっかり叩いてんじゃねぇよ!近所迷惑になんだろうが!次やってみろオメェらの頭順番にかち割んぞクソが!」

     うん。いつだって君はそうだよ。
     君が一番、うるさいよ…三途くん。
     言ってること割りかしまともなのになんでだろう、君やっぱり馬鹿でしょ…。




    ーーーーーーーーー





     はい、ということで現在の俺の居場所ですが多分反社が所有する廃工場とかよくあるそういうやばい系ではなく。普通に綺麗で大きなマンションの一室だ。
     

     はぁ、それにしても天井が高いなぁ。
     ソファは皮張りなのに座り心地が天国みたい〜。
     俺のボロアパートに比べるとここは月とスッポンいや、月とうんこだよな。実際俺の部屋ゴミ溜めみたいなところあるし。
     でも思い出が詰まったものをなかなか捨てられないんだよな…。


     
     こんな夢みたいな綺麗で大きな部屋に恋人がいる!
     なんて幸せなんだろうなぁ…
















     はぁ、この現実さえ見なければなぁ…!





    「オイ、マイキーてめぇタケミっち隠してんじゃねぇよ!!!」

     鬼の形相のドラケンくんがマイキーくんの胸ぐらを掴み。治安が悪い。

    「は?何言ってんのケンチン、タケミっちは元々俺のだから。ぶん殴られてぇのお前?」

     身長差をものともしないほど威風堂々と喋るマイキーくんはやっぱりかっこいいなぁ。
     みてみてあの低身長なのに威厳があってイケメンで漢の中の漢が俺の旦那さんです。

    「マイキーテメェ抜け駆けか?ア??」

     団地妻みたいな色気のある格好をした一虎くんが鉄パイプをパンパン鳴らしてる。とても治安が悪い。

    「?俺のタケミっちだけど???独占して何が悪いの?」

     テメェこのやろうとドラケンくんと一虎くんがマイキーくんと取っ組み合いを始めた。
     いやあんたら!!!
     自分たちの腕力や脚力考えて、ゴリラとゴリラとゴリラが喧嘩なんてしたら部屋半壊するから室内で喧嘩しないで!!
     嫌だよ、自分がいるところでマンション崩落なんてするの!しかも崩落の原因がこことか笑えないからな????



     若干痛くなる頭を押さえながら前を向けば今度は千冬がいる。
     猫のようなアーモンドアイをこれでもかと見開きキラキラと輝く様は眩しくて少しむず痒い。
     俺に会えて心底嬉しそうな顔をしてくれるから思わず照れてしまう。
     いつもありがとうな、千冬。


    「あ、相棒ぅ〜〜探したんだぞ!!!相棒が反社に捕まったってきいて場地さん連れてきたぞ!!!」

     はぁぁぁ〜〜癒し!もうほんと天使だよね?
     俺を見つけられて嬉しくて仕方ないって顔をしてスリスリと全力で擦り寄られればもうほんとに嬉しさで泣けてくる。

    「心配かけてごめん!」
    「全く、やっぱり相棒には俺と場地さんがいないとだめだな!」

     ふふんっ!と獲物を取ってきた猫ちゃんの様な得意顔をする千冬に俺の壊れかけの情緒が破綻した。
     ち、ちふゆぅ〜〜俺の心の砂漠を癒してくれるのはやっぱりお前だよ!!!俺の心のオアシス千冬〜!!!

    「お、タケミチいたな〜千冬〜。タケミチも無事で良かったな。千冬がお前のこと心配しすぎて壊れたラジオみたいに“あ、あいぼぅ、アああいぼぼぅ…”って言ってた時はどうなるかと思ったぜ」

    「「場地さん!」」

     千冬とハモる。な、懐かしぃ〜〜〜この感覚!少し前まで体験してたはずなのにもう何十年もやってない様な掛け合い。
     やっぱりあの人たちキャラ濃かったんだな…俺のSAN値死にかけてたはずだもん…。

    「そうだ、久しぶりに一番隊で焼肉にでも行こうぜぇ〜」

     ぁあ場地さん!!本当この混沌の中のヒーローです!!!
     八重歯が今日もかっこよく輝いてます!!!
     ひぇ、俺の癒し…!この二人がいないと朝日は来ないんじゃないかっていうくらい!
     おい治安悪軍団この天使たち見習え!!!

    「ちょっとちょっと!タケミチはもう俺ら梵天のものだから勝手に連れて行こうとしたら殺すぞ♡」


    「ア???何言ってんだテメェ?」

     おいコラ何言ってんだバカ2号!!!って笑顔コワっ!目が笑ってねぇ〜止めろバカ3号!!!

    「にいちゃんの言う通りだよ。タケミチはボスのものでボスのものは俺らのもの(オモチャ)だから勝手に連れていこうとしてんじゃねぇよ」

    「テメェ今何っつた?ァ??相棒はオメェらのもんじゃなくて俺たち1番隊のもんなんだよ!!!引っ込んどけ」

     こ、こいつ加勢しに行きやがった〜!兄の不始末を止めるのが君の役目だろ!!!
     ち、千冬ぅ〜!!!このバカ二人を沈めちゃえ〜!!!俺は全力でお前を応援するぞ!
     そろそろ天誅を下されろ!!!





     三途くんは三途くんでソファに座り興味なさげにこの異様な光景を眺めていた。
     そこに柔和な笑みを浮かべた三ツ谷くんが近づく。

    「オイ、三途!オメェタケミっちの居場所知らねえって言ったよな?」

     ア、あの顔微笑んでるんじゃなくてブチ切れてますね!三途くんご愁傷様です。

    「ア?なんだ三ツ谷かよ。ドブのことなんて俺がいちいち認識してる訳ねぇだろ。バァァカ」

     そう言って中指をたて、三ツ谷くんをコケにする三途。
     そしてキレた三ツ谷くんがタライを、たらいを三途くんの上にゴーーんってお、落としwwww
     すごい、アニメみたいな倒れ方した。
     三ツ谷くん!ナイスです!!!





     それにしてもタライなんてどこにあったんだろ…?





    「ア?俺とタケミっちは結婚すんだよ!!オメェらの出る幕ないから!!!」

    「うるせぇ不健康児!!!お前にタケミっち任せられるわけねぇだろ!!!」

    「???ケンチンやんのか???」

    「テメェのそのひょろ弱そうな身体で相手できんのかよ」

    「やってやろうじゃん!!!死んでも文句言うなよケンチン!!!」


     なんかあっちも盛り上がりが最高潮になってる!!??え、何があったのあそこ!!!



    「タケミチはボスとのハネムーンが決まってんだから元1番隊の番犬はスッこんでろブス!」

    「はぁぁぁ〜〜〜?相棒は俺と場地さんのもんなんだよ!お前らこそ黙っとけブス!!!」

     あれれれ〜おかしいな?俺の千冬がすごい怖い顔してるのが見えるぞ?千冬は天使なのに??
     ち、ちふゆさん???お口が悪いゾォ???

    「オイ、竜胆〜こいつ馬鹿すぎて相手疲れるんだけど〜?タケミチは俺らのもん(玩具)なんだって言ってんだろ〜いい加減聞き分けろ〜」

    「だからお前こそ何言ってんだヨ?タケミチは俺ら東卍のもんなんだからお前らのもんじゃねぇだろ?」

     いやアンタらはまだ俺のこと取り合い(?)してるんですか?
     待って、蘭さんアンタの副音声少しおかしくないですか?
     んんんん????なんかここの雰囲気もおかしいぞ??
     


    「テメェ、よくもやりやがったな!!!」

    「はっ、物分かりが良くなる様に叩いてやったんだよ。ほらよく言うだろ?叩けば直るって」

    「このクソ野郎〜!!俺は昔の家電製品じゃねぇんだよ!!!」


     こっちはこっちで、アア〜もうどこも阿鼻叫喚だな…嘘だろ…







     ガッシャーーーーンと大きな音が鳴り響いたと思ったら、ま、マイキーくん!!何やってるんですかぁ!
     アァァーッ!高そうなガラス張りの机がマイキーくんの踵落としで粉微塵になっていらっしゃる。
     む、むごい…机だってこんなことになると思ってなかったよな…俺もだよ。
     人の頭蓋とかもぐしゃりってリンゴみたいに潰せるんじゃ?やっぱりゴリラのスタンドとか持ってます???






    「っアアァァア!!!めんどくせぇ〜〜〜やっぱり全員コロス!!!!!」

    「ま、マイキーくん???ちょっとちょっと待って!!!今までの俺の苦労は?いや、みんな生きてるハッピーエンドが俺は好きだな!!!」

     ついにマイキーくんが発狂した。堪忍袋というか我慢の糸が切れたのだろう。
     物騒なことを言うマイキーくんの腰に縋りつき俺の全力で止めに入る。
     マイキーくん全然止まりませんやん。前世は重機関車かなんかですか?
     


    「は?タケミっち浮気?やっぱり俺以外に誰か好きなやつできたんだ!!!やっぱり俺じゃダメなんだ!!!」

    「ち、違うよマイキーくん!!!俺が好きなのはマイキーくんで、幸せにしたいのもマイキーくんだよ!!!というか、思い出したけど浮気したのはマイキーくんでしょ?!」








    「…は?」







     今までうるさかった室内にマイキーくんの呆気に取られた声がこだました。
     え、皆さん急に静かになるね?怖い。


    「タケミっち、お前が何勘違いしてるのかわかんねぇけど俺が愛してるのはお前だけ。わかったな?」

    「ひゃい!!!」

     にっこりと笑った彼の顔があまりにも怖すぎて思わず敬礼してしまった、、、
     いや、こっっっっつわ!!!!

    「タケミっちは俺のこと浮気するって言うけど無自覚にたらし込んでるのはお前の方」

    「えっ?どういう??」

    「俺さぁ、もうタケミっちでしか勃たないからそもそも浮気なんてしねぇしな」

     とても綺麗な笑顔でとんでもねぇ爆弾落としたなぁ…。
     天使の微笑みなのに後ろに魔王が見えるのは気のせい?これ気のせいで済ませて大丈夫なやつ???




    「オイ、タケミチ〜こんな浮気野郎じゃなくて俺にしとけよ〜。蜂蜜につけたみたいに甘やかしてやんよ〜」

     猫みたいな掴み所のない顔をして一虎くんが俺の後ろから抱きつく。

    「おー、タケミっちこいつが浮気してんなら俺とも浮気しようぜ♡お前の好きなもんなんでも食わせてやるし服だってなんだって作ってやるよ」

     目の奥が笑ってない三ツ谷くんがこちらに微笑む。相変わらず優しいな三ツ谷くんっていつもなら思うけど今日はなんかやばい気がする。

    「やっぱりマイキーにタケミっち任せらんねぇわ…。俺と一緒に逃げちまうか?」

     一虎くんをベリッと剥がして上から覗き込むように俺に微笑むドラケンくん。うん、かっこいい。

    「相棒〜可哀想に!!!そんな不安な気持ちになってたなら俺と場地さんが慰めてやるぞ!!!」
    「オー、千冬〜俺とお前で半分こでタケミチ慰めてやろうな」

     ドラケンくんから千冬が俺を無理やり奪い取り、俺を真横から抱きしめる二人に頭がとうとう混乱する。

     ん?なんか雲行き怪しくない〜???


    「オイオイオイオイオイ!!!お前らなにかってこいてんだ!!!こいつは王(マイキー)のお気になんだよ!!!脳みそくそでも詰まってんのか?」

     そういって三途くんに抱き寄せられる。
     ほんとこの人中指立てるの好きだな…指長いの羨ましいから折っていいかな?

    「三途がいいとこみせようとしてる〜。面白そうだし、蘭ちゃんも参戦しよ〜」
    「にいちゃんが行くなら俺も〜」

     俺の腰を抱き寄せるのやめていただけません?オイ、どっちかわからんがケツを触るんじゃぁないぞ!!!
     両側の頭からリップ音が聞こえた?
     そういうのは女の人にしてどうぞ???

     ちょっと嫌だったので三途くんのベストに抱きつく形で頭をこすりつけて拭いといた。
     三途くんの耳がほんのりと赤くみえるのは気のせいだろうか?









    「やっぱりタケミっちのこと監禁するしかないか…」


     すごい真剣な顔でマイキーくんがヤンデレ彼氏みたいなこと言ってる!?

    「そもそも反社立ち上げたのだって変なやつからタケミっち守るためだし、いつかは囲いたい。タケミっちが俺以外のやつと喋るとか一緒にいるとか考えるだけでそいつぶっ殺したくなるし…」


     ブツブツと物騒なこと言ってるの聞こえてんだよなぁ…。
     なんでこういう時に限って、少女漫画でよくある“奥義”都合性難聴が発動しないのか!!!
     待って俺閃いちゃった…もしかしてマイキーくんて、独占欲と嫉妬心で反社立ち上げた系?????
     ウワァヤバァ〜〜〜イ!それについてきた皆さんも相当……


    「取り敢えずタケミっち監禁な!」

     いやいやいや、そんな笑顔で言っても絆されませんからね!
     いくら好きな人のお願いでも俺はNOと言える日本人なので嫌なものはNOと言います。





    「普通に監禁はやめましょう!!!俺、マイキーくんと外に出かけたいです!折角なんの憂いもなく二人で楽しいデートができると思ったのに…監禁なんて酷すぎませんか!?」


    「タケミっちがそばにいないとか考えられない無理。俺のタケミっち俺の俺の俺の…」

    「マイキーくんお願いだから帰ってきて〜(泣)!そうだ二人でたい焼き屋デートしましょ!!!そうしましょ!!!さ、今から行きましょうよ!」

     虚な目をしたマイキーくんが俺の俺の俺のと壊れたブリキのオモチャみたいにガタガタぶるぶる体を震わせて呟き続けるので軽くホラーである。
     いや軽くじゃない大分怖い…。取り憑かれたとかじゃないよな???塩撒いとくぅ?

    「た、いやき…たい、、やき」

    「そうですよ〜たい焼き美味しそうなところ行きましょ!何軒でも梯子してもいいですから!!!」

     壊れたラジオなのか、言葉を忘れた地球人なのか、言葉を覚えたてのエイリアンなのか、よくわからないけど目のハイライトが消えて虚な顔でつぶやく様はホラーだ。
     いや目のハイライトが消えてるのはいつもだな?じゃあこれが通常運転ヤダァ

    「オイ、マイキー抜け駆けは良くないぞ。好きなものは仲良く半分こだろ?」

     場地さん〜〜〜!違う!!!
     この場面で1番言っちゃいけない言葉No.1!
     言っちゃいけない言葉ランキング堂々入賞しました!!!オメデトウオメデトウ!
     あ…マ、マ、マイキーくん…お目目がお目目が焦がした鍋の底みたいな澱んだどす黒い何かになっている!

    「場地の言う通りだぞマイキー!お前だけいい思いするなんてズリィ。俺だってタケミチほしい」

     あ、一虎くんがマイキーくんの地雷を土足で踏み荒らしていく…
     常日頃鈍いと(略)俺でもわかるあかんやつや…

    「よせよ二人とも、タケミっちが困ってんだろ」
    「そうだぜ場地、一虎。ちょっと落ち着けよ」

     さ、さすがですドラケンパパ、三ツ谷ママ!
     東卍の良心!聖母!神よ感謝します!

    「半分こじゃなくてみんなで囲えばいいんだよ」
    「そもそもタケミっちって俺らのもんだろ?」

     ん???あれ?なんかちょっとおかしいな?
     あっれれれ?東卍の良心2人が壊れた?実は偽物???ん???

    「タケミチは俺らのもんだぞ〜」
    「そうだそうだ!東卍はお呼びじゃねんだよ!過去の亡霊たちはとっとと失せな」

     おい、柴漬け兄弟いい加減にしろや!お前らの煽りは場を混乱させるんだよ!!!

    「うっせぇぞ紫キャベツ共!いい歳こいて変な頭の色しやがって!」

     千冬千冬、それ俺も思った…。あの色すごいよな。オーダーどうやってんのか知りたい。





     俺を置き去りにした口喧嘩は熾烈を極めついには殴り合いの喧嘩が始まる。
     嫌だからあんたらが喧嘩すると部屋が大破するんだって…
     この惨状見てよ、もう綺麗なの俺の座ってるこのソファしかないよ…
     ゴリラの縄張り争いだってこの惨劇よりマシだよ…

     あぁ、空が青いなぁ…
     あ、飛行機…俺も連れてってくれないかな…



     そんなことを考えていたせいだろうか…?
     視界の端に鈍く金色に光るものが迫ってくる。
     

     その物体は綺麗な放物線を描いて呆けている武道の頭へと落下する。

     “カーーン”とそれはもう間抜けな音が響く。




     



     オイ、誰だよタライ投げたやつ…
     そんなの投げたら自他ともに認める不運な俺にぶつかるに決まってんだろ…。
     ブラックアウトする思考の中、見えた光景に間抜けな顔をした大人の男(輩ども)が並んでいておかしくてフッと笑い武道は意識を失った。




















    ________________




    【君を好きになったから俺は幸せになれたんだよ】




     

     しがないフリーター、花垣武道それが俺である。現在はレンタルビデオショップのアルバイト店員だ。
     馬鹿で間抜けで仕事の要領が悪いと職場で言われ続けてはや数年。
     後悔は数え切れないほどある。
     でも、後悔はしてもそれを変える勇気など欠片もなく、逃げて逃げて逃げて、逃げ続けた毎日に嫌気がさす。
     何か自分を変えるようなそんなものを求めても、行動一つ起こさない自分にそんなものが手に入るはずがない。
     今日も死にたい気持ちを抑え、なけなしの意地とプライドで心を殺して生きている。






     
     この雑踏が響く東京も午後9時を過ぎればいくらかそれも収まる。
     職場の帰り道、ふと夜空を見上げた。こんな都会の真ん中で星など見えるはずもないのになぜか空を見上げそして驚いて足を進めた。
     

     見上げた先のビルの屋上に人影が見えたから。
     月明かりに照らされた人影は今にも消えてしまいそうだ。一瞬だが風になびく真っ白な髪が綺麗で、俺は一瞬目を奪われた。
     
     こんなに美しい人が死んでしまってもいいのだろうか?それが俺が彼に初めて抱いた感情だった。


     そのあと、おそらく初めて会ったであろう赤の他人のために運動不足の体に鞭を打ち階段を駆け上がる。






     “バンって扉を勢い良く開けた先には真っ白な髪をした真っ黒な痩躯の男がいた。
     俺が開けたドアの音に反応して振り向いた彼は、透けるように白い肌と不健康そうな目の下の隈が彼の現状を物語っていたのかもしれない。




     子供のように無邪気に鼻歌を歌う彼は楽しそうなのにとても悲しそうで、俺は彼を見た瞬間から目を奪われた。



     その後のことはよく覚えていないけれど、全く知らないはずの彼を無我夢中で引き寄せて警戒して怒鳴る彼よりも更に大きな声で怒鳴ったことだけは覚えている。


    「死ぬくらいなら俺と結婚してください!!!!!」

     世界一の大馬鹿者は俺だよな…
     唖然としてポカンと口を開けた間抜け顔の彼を見て俺の緩い涙腺が決壊した。
     俺のブサイクな泣き顔をみて微笑んだ彼の顔は世界一美しいとおもったんだ。







           ーーーTo Be Continued?ーーー







    “30過ぎてもフリーターで人生嫌気がさしてたところに彼氏が出来ました。彼氏のクソ重暗い過去にとどめを刺すために過去に戻って頑張ったら関係が泥沼化していたんだが俺は明日死ぬのでしょうか?”




























     タケミっちはさ、俺とお前が出会ったのはあの満月が綺麗な夜だと思ってるんだけどほんとはもっとずっと前なんだよ。
     あの日の熱烈な告白もすごく胸をときめかせられたけど、もっと前から俺はお前にドキドキしっぱなしだったんだよ?
     タケミっちは俺をドキドキさせる天才だね?
     タケミっちのおかげで俺は生きてる。
     あの時も今も、今はお前のおかげで幸せだよ。
     ありがとうな。
     ほんとにありがとう。
     何度も傷ついて、心が挫けそうになったんだろ?昔の俺はどうだった?
     わがままで、気まぐれで手を焼いたでしょう?呆れた?疲れた?嫌いにならないでいてくれて嬉しいよ。

     ははは、タケミっちはいつも俺を笑わせてくれる。今回はタライがクリーンヒットするなんてね。面白すぎるだろお前…
     あぁ、今日も日が沈む。
     同じことの繰り返しなのにこんなに清々しい気持ちはお前のおかげだよ。




     もう忘れているのだろうけれど俺とタケミっちの出会いは実は屋上での告白事件(武道命名)よりずっと前。俺がヒーローを見つけた日だ。
















     万次郎と武道が初めて出会ったのは、武道の職場であるレンタルビデオ店の目の前の路地裏だ。
     武道はよく職場の近道で路地裏を抜けていた。そこで何やら騒いでいる若者たちがいたのを偶然武道が仲裁に入ったのだ。

     武道がたまたま通りがかったそこで体格の良い3人組の男に囲まれるようにして細身の男性が恐喝されていた。
     それを見た武道は震える声で自分よりも体格のいい男に注意を促し、万次郎を自身の背に庇うように男たちの前へと立つ。
     気が立っている男たちは声をかけ、カツアゲの邪魔した武道へ苛立ち、不意打ちで拳を突き出す。その拳は見事武道の顔面に命中し鼻血がでる。それでも武道は決して引くことはなく、ボロクソに殴られても前へと立ち続けた。
     自分が殴られているうちに彼も逃げたであろうと後ろを振り返れば、こちらをガン見する男と目が合う。

    「へっ???」

     なぜ自分を見ているのかわからない武道は殴られている痛みも忘れて素っ頓狂な声を出した。

    「なぁ、オマエなんで弱えくせに前に出たの?まぁ、いいや気分がいいから助けてやるよ」

     そこからは無双状態で、あれだけ騒いでいた大男3人組を細身の男性が一人で、しかも一瞬で伸してしまった。


     返り血一つ浴びず、蹴りひとつで彼らを鎮圧したのだ。もしかしたらこの人の方がヤバい人なのでは?そう武道が思い立ち勢いよく立ち上がる。

    「お、俺ってもしかして余計なことしましたか?」

    「あー、別に。てかお前なんで弱えのに前に出たの?無視すりゃあいいじゃん」

    「えっ?でも困ってる人がいたら体が動いちゃいませんか?」

    「死ぬかもしれねぇのに?あいつ、ほらあの青い服着たやつは懐にナイフ隠し持ってたぞ?もしかしたら刺されて死んでたかもしんねぇぞ?」

    「うーーーん。そう思うとゾッとしますけど、結果的に刺されなかったし…。はっ!それより怪我はないですか?」

    「お前の方が重症じゃね?」

    「あ…、えへへ、ほんとだ。助けてくれてありがとうございました。お兄さんカッコいいからこの辺は気をつけた方がいいですよ。時々露出狂が出現するんです。俺もこの間初めてあって人生で1番早く走って逃げました。」

     なんてことないようにとんでもないことを言う武道に万次郎は眼を剥く。
     いや、露出狂出るならこんな道通るなよ…。
     そう伝えようと思ったが、間抜けな笑顔に絆されてしまい何も言うことが出来なかった。

    「あ!!!バイト!!!すいません俺これで失礼します。」

    「あ、あぁ…」

     そう背中を向けて走り出そうとした武道だが、ふと何かを思い出したように万次郎をくるりと振り返り近づく。

    「あの、お節介かもしれないんですけど…この飴どうぞ。怖いことあった後に甘いもの食べると幸せになれるんです。辛いことがあっても、少し元気が出るんです。ふふっ、幸せって実はすぐ近くにあるのかなって思えるから…だからその、辛そうな君が少しでも楽になれますようにって願いを込めて…なんて、馬鹿みたいですよね。」

     そう語る彼の青い瞳があまりにも澄んでいて、何故か懐かしい誰かを重ねた。
     遠い遠い昔にいなくなってしまった大切な人たち。そんな彼らを思い出すことは久しくなかったのに、彼の笑顔があまりにも優しくて、彼の言葉があまりにも優しくて普段なら絶対にもらわないはずのそれを気づけば手を伸ばして受け取っていた。

     万次郎が飴を受け取り満足したのか武道は踵を返してアルバイト先へと今度こそ本当に向かう。
     万次郎はその場の壁伝いにズルズルとその場にしゃがみ込んだ。
     心臓がドクドク、ドクドクとしばらくない鼓動の高ぶりを感じた。
     顔に熱が集まり少し息苦しい。
     彼からもらった飴を震える手で包みを開き口元へと運ぶ。





    「あっま…」




     緩む頬と、赤く染まる頬を隠すように足の間に顔を埋める。




     見つけた、俺のヒーロー…
     絶対に俺だけのヒーローにする。
     帰ったらまず、彼の素性を調べ上げてどうやって自分のものにするか計画を立てなければ。
     あのレンタルビデオ屋を購入して俺が経営者になってもいい、それとも客として通って顔を覚えてもらう?
     暴漢を追い払って惚れさせるってのもアリか?いや、あいつに他人が触れるのなんて許せない。



     そんなことを考える万次郎が、予想外の展開で武道から告白されるとは、この時は思ってもいなかった。
     これもまた運命ってやつのいたずらなのかな?
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