弾けるパンッと派手な音を立てて頭が弾けた。
あ、死んだ。
暖かい液体を浴びながらどこか冷静にそんな事を考えていた。
多分次弾けるのは俺の頭だろう。
そう思ったけどそれに抗うのも面倒持っていた銃を地面に落とした。
死ぬ時くらい人を殺す道具なんか持っていたくない。
またパンッと音がなった。
でも俺の頭は弾けずに形を保っていた。
弾けたのは数メートル先にいる人間で、また派手な音を立てて崩れ落ちた。
あ、また死んだ。
周りの人間が何かを捲し立ててくるがもう何も気にならなかった。
パンッ、パンッと音が鳴り続ける。
周りにいる人間の頭は弾けていくのに、不思議と俺の頭は弾けなかった。
そういえば俺は昔から変なところで運が良かった。
液体を含んで重くなっていく服が肌にへばりついて不快だ。
知らない言葉で何か言われた。
いつのまにか敵の陣地に入り込んでたらしい。
あ、殺さなきゃ。
ようやくなぜ自分がここにいるのか思い出して銃に手をかける。
しかしその手はスカッと空を切った。
あぁ、そういえばさっき捨てたんだった。
そんな事をしている間にナイフで襲いかかってきた。
もう死んでもいいかと思ってたけどいざ襲われる体が勝手に動いた。
訓練は無駄じゃなかったのか。
敵の武器を奪って1人、また1人と数を減らしていく。
汚いなぁ。
いつのまにか右目は開かなくなっていた。
「痛そうやなぁその傷」
「…あ?」
急に視界が開けた。
「どしたん珍しくボーッとして」
「さっきから心ここにあらずって感じやったな」
「いや昔の事思い出してな」
うっかり本当の事を言ってしまった。
あんな事こいつらに話せるわけもないのに。
「で、なんだって?」
「いや痛そうやなって」
簓はそういうと手を伸ばして傷に触れようとしてきた。
「…ッ‼︎」
その手にこれを触れさせてはいけない。
何故かそんな考えに襲われて思わず手を振り払った。
「ッたぁ〜‼︎」
「いや今のは自業自得やで。いきなり目の近く触られそうになったら驚くやろ」
「すまん簓ッ大丈夫か?」
「ダイジョーブダイジョーブ!簓さんは強い子やからな!」
「もやしみたいな体しとる奴が何言うとんねん」
「ただの悪口やん!」
すぐにいつも通りギャーギャー騒ぐ2人に安心する。
「ごめんな零急に触ろうとして」
「いや、俺も悪かったよ」
「で、痛くないん?」
このまま流してくれるかと思ったけどどうやらそういう訳にはいかないらしい。
「簓…零その傷に触れられるの嫌そうなの分かってるやろ」
「おん。分かってんで。でもここで踏み込まんと零いつまでも壁作るやろ」
「そやけど…」
そりゃ壁は作る。
俺とこいつらじゃ生きてる世界が違う。
壁を無くしたら、俺の世界に巻き込んでしまうかもしれない。
「零がなんで壁作ってるかはなんとなく分かんで?分かっててその壁無くせって言ってんねん」
「簓…?」
「いいか零。今までお前がどんな風に生きてたなんか知らんわ。何人騙そうが何人不幸にしようがもっと酷い事やってようがどうでもいい俺は零の事を善やとは思ってへんし、それはこれからも変わる事は無いと思うわ。やけどな、それでも俺は壁無くせって言ってんねん。いつまでも他人でいられると思うなよ。どついたれ本舗に入った時点でお前は俺のモノになったんや。絶対に逃がさん。分かったか」
「簓〜一気に言い過ぎや。あと重い。メンヘラか」
「そんな簓ちゃんも好きやろ」
「はいはい好き好き。零も好きやで」
「は…、は?」
一気に色々捲し立てられて理解が追いつかない。
「まぁ簡単に言えば俺も簓も零の事好きやから逃がさんでって事や」
「も〜そんなキョトンて顔して〜かわええなぁ」
「いやいやいや分かんねぇ、俺そんな好かれるような事したか?」
「恋は落ちるもんやからねぇ…理由は分からんわ」
「落ちてしまったらどうにもならんからな」
「お前らおかしい…」
こんな俺に恋だと。恋に落ちたとあっけらかんと言ってくる。
「まぁ諦めて零も俺らに落ちてきてや」
「ちゃんと受け止める準備は出来とるでな。安心して落ちてき」
「ハハッなんだそれ」
パンッと派手な音を立てて弾けた。
浴びたのは暖かい2つの唇で、あっという間に俺は2人の元へ転げ落ちた。