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    せいへき

    @migireihosii

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    せいへき

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    山田一郎はヲタクであるから飲み込みも早い。

    ##獄零

    そうじゃない俺の人生はかなり良かったと思う。
    苦しく辛い時期はもちろんあった。
    だが今ではこうして弟や子供、更に孫たちにまで囲まれて天授を全うしようとしている。
    こんなに穏やかな気持ちで死に迎えることができるなんて思いもしなかった。
    ただ一つだけ思い残したことがある。
    結局親父とは最後まで普通の親子として接することができなかった。
    もし次生まれ変わることができるのならまた親父の子供になって、今度は普通の親子として一緒に暮らしたい。

    〜〜〜〜〜〜〜

    「おめでとうございます!元気な男の子ですよ!」
    やけに明るく元気な女性の声と赤ちゃんの鳴き声がする。
    視界は不明瞭で眩しい。
    さっきまで病室に居たはずなのにどこだここは、というかなんだ、何が起こった。なんでこんなに赤ちゃんの声が近くで聞こえるんだ。
    困惑している間に柔らかい布のようなものに包まれ何か暖かいものの上に置かれる。
    頬にあたるそれはなんというか、人肌のような…ようなというかそのものであるというか、
    「凄いな、元気で力強い声だ」
    まさか…と思い始めたあたりで頭上から声が降ってくる。
    忘れもしない。親父の声だ。
    最初に聞こえた「おめでとうございます」の言葉、やけに近くから聞こえる赤ちゃんの泣き声、不明瞭な視界、頬にあたる人肌のようなもの。
    間違いない。俺はたった今生まれた。
    そして聞こえる親父の声。
    ということは本当に再び親父の子に生まれ変わることができたのか?
    喜びがじわじわと押し寄せて収まってきていた涙の波が再び押し寄せる。
    歓喜の声と涙が出そうになったその瞬間
    「あぁ…それに零にそっくりだ…可愛い…」
    誰だ…
    誰だこの声は、この男は。
    急に湧いて出た知らぬ男の声に涙も止まる。
    「なんだ獄の声聞いたら急に泣き止んだぞ」
    獄!?獄っていうのは天国獄のことか!?
    そういえばそんな感じの声だった気がする。
    でもなんでだ、なんで俺のお産に立ち合ってるんだ。
    「ほんとだな。こんな急に泣き止むのか?」
    天国獄だな…
    いや本当になんでだ。
    たまたま一緒にいた時に陣痛がきてそのまま流れで立ち会うことに?
    いや赤の他人が?
    というかさっきからお袋の声が一回も聞こえないんだが。
    感動して声も出ないとかも考えられるけどそんな無音なことあるか?
    「パパの声に安心したのか?でら可愛いな」
    パパ。
    パパと言ったか今。
    「獄はパパって呼ばれたいのか。じゃあ俺は親父かな」
    パパと親父。
    パパと親父!?
    「楽しみだな」
    「あぁ、2人で頑張っていこうな」
    2人で!?
    ぐるぐるといろんな情報が頭の中を駆け巡る。
    まだ小さな頭には到底処理仕切れず、俺の意識はそこで途絶えた。

    〜〜〜〜〜〜

    あれから十年。
    弟は2人生まれ今は5人家族だ。
    今世でも二郎と三郎が弟になってくれ、いち兄、いちにいとまだ舌足らずな声で呼んでくれる。
    なんの心配もなく2人を可愛がることができる今が幸せで仕方がない。
    しかしだ。
    「おはよう一郎」
    「…おはようございます獄さん」
    俺は獄さんに対してこんな感じだった。
    俺以外の人間に記憶はないのかこの状況を当たり前のように受け入れているが俺からすれば家族の中によく知らないナゴヤの人が急に居座り始めたようなものだ。
    「一郎がパパと呼んでくれない…」
    とヘコんでいるところを見た時には罪悪感がすごかったが許してほしい。
    親父が母親だったことすらまだ受け入れられていないのだ。
    親父の子供になりたいとは思ったが親父から生まれたいとは思っていない。
    一体なんなんだこの世界は。
    山田一郎改め天国一郎10歳(前世を入れると100歳越え)
    家族揃って楽しい朝食をとる中1人、違和感の凄さに悩んでいた。
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    izayoi601

    DONE思いついたので一人飯するじょしょどのの話。台詞などでも西涼二直の中ではじょしょどのが一番食事好きな方かなと妄想…脳内で色々分析しながら食べてたら良いです…後半は若も。庶岱と超法前提ですがもし宜しければ。ちなみに去年の流星での超法ネップリと同じ店です。
    早朝、一人飯「これは、まずいな……」
     冷蔵庫の中身が、何も無いとは。すでに正月は過ぎたと言うのに、買い出しもしなかった自らが悪いのも解っている。空のビール缶を転がし、どうも働かない頭を抱えつつダウンを着るしかない。朝焼けの陽が差し込む中、木枯らしが吹き付け腕を押さえた。酒だけで腹は膨れないのだから、仕方無い。何か口に入れたい、開いてる店を探そう。
    「……あ」
    良かった、灯りがある。丁度食べたかったところと暖簾を潜れば、二日酔い気味の耳には活気があり過ぎる店員の声で後退りしかけても空腹には代えがたい。味噌か、塩も捨てがたいな。食券機の前で暫く迷いつつ、何とかボタンを押した。この様な時、一人だと少々困る。何時もならと考えてしまう頭を振り、カウンターへと腰掛けた。意外と人が多いな、初めての店だけれど期待出来そうかな。数分後、湯気を掻き分け置かれた丼に視線を奪われた。
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