Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    しゃけ

    適当に書いたり描いたりする(と思う)

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 10

    しゃけ

    ☆quiet follow

    道化、又は道化師とは滑稽な格好や言動などをして他人を楽しませる者の総称。

    舞台の裏側エリトラで逃げる三人を、遂に殺す事が出来なかった。やっとだ。やっと、死ぬ建前が出来た。これで良い。これで良かったんだ。数十年間この身体を蝕み続けた仮面を剥がし、床に落とす。そして、渾身の一撃で割る。これでこの呪いを受ける奴も未来永劫いなくなった。やっと《俺様》は〈俺〉になったんだ。自分の身体が思い通りに動かせるのは久しぶりだな。
    思えばくだらない人生だった。産まれてから一度も愛を与えられずに売られ、身を粉にして働いても主人に慰みものにされ、挙げ句の果てには骨董品の呪いに取り憑かれ、今の今まで〈俺〉として生きていなかった。
    だがその人生にも幕が降りる。飛行船の高度が着々と低くなっている。〈俺〉が何もしなくても瓦礫に埋もれて窒息死するか、もしくは運良く生き残るか。いや、確実に死のう。もう充分じゃないか。兄を殺した時点で分かっているじゃないか。〈俺〉があの時、スナイパーで心臓を撃ち抜いて殺した〈俺〉の唯一の家族。〈俺〉の大切な、大切だった兄。そう、リアムだ。お前らには信じられないだろうけどな。血の繋がった家族を殺す。それが呪いの唯一の解呪方法だった。ただ、それだけだ。恨むなら恨め。憎むなら憎め。呪いたければ、呪ってしまえ。〈俺〉は全て受け入れる。そうでもしなければ、《俺様》が殺した人間の怨みが晴らせないからな。
    死に場所はずっと前から決めている。今から向かっても遅くない。〈俺〉は足早と不安定に揺れる船内に向かった。

    「…………………」
    ステージにはもう冷たくなり始めた兄の亡骸があった。心臓に小さな穴が空き、兄を中心に血溜まりが出来ていた。その姿を見ても一切動かない心が憎い。うっすら開いている瞼を左手でそっと閉じる。天井に設置していた檻を下げ、極力瓦礫で遺体が損傷しないようにする。勿論、スティーブも既に頑丈な部屋に移した。この船で一番頑丈な部屋にな。
    兄の入った檻の中に仮面のかけらを三つ投げ入れる。これは〈俺〉がここにいた証拠。〈俺〉はイロアス女王陛下直々の"極秘任務"を果たせなかった。そういう証拠だ。

    ステージから降り、最後尾の席の後ろに立つ。ここなら全体も見渡せる。最期には丁度いい。懐から自分で持ち込んだ自決用のポーションを取り出し、一気に飲む。
    「ぐぁ……あ"あ"ぁぁ………っ!!」
    膝から崩れ落ち、喉を抑える。濃硫酸が口を、喉を、気管を焼く。声が出せなくなり、視界が狭まる。まだだ。まだ、このままでは死ねない。もっと苦しまなければ。震える手で懐に入ってあるもう一つのポーションと少量の粉を取り出す。ポーションに粉を入れ、よく振って混ぜる。その混合物を焼け爛れた喉に無理矢理流し込む。これに関してはどんな薬品なのか全く知らない。ただ、"任務"が遂行できず捕まりそうになった場合のみ服用しろと、そう言われただけ。
    「ひゅー………ひゅー………」
    喉から笛のような音しか聞こえなくなった。手足の痙攣が徐々に始まり、遂に身体を横にした。視界が更に狭まる。身体の感覚が失せる。
    船が先程より激しく揺れ始め、細かな瓦礫が降ってくる。もうじきここも崩壊する。だがその前に俺の意識は途絶えるだろう。

    なぁリアム。いや、兄貴。あんたは確かに【強い意志】を持った、【揺るぎない庇護者】だ。あの囚人達を最期まで〈俺〉から守り切ったんだからな。
    【永遠の敗北者】は俺だ。結局何も手に入れてない。得られていない。この手で掴もうとしたものは全部俺の手からすり抜ける。手に入れたとしてもそれは〈俺〉の心を満たしてはくれない。一体〈俺〉は何の為に生まれてきたんだ。誰か、教えてくれよ。
    天井が崩れる音がした。〈俺〉より大きい木片が〈俺〉に向かって落ちてくる。あぁ。これで終わりか。

    次の人生はせめて、人を殺めずに生きたいな。

    そして俺の視界は完全に暗転し、二度と幕を開ける事は無い。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    しゃけ

    DONE※ここからは呪鬼本編後の話になります。先に呪鬼を閲覧する事を強く推奨します。
    見たと言う方はどうぞ。
    第一章 第五話「終点」あぁ。何で?どうして逃してしまったんだろう?何で妨害出来なかったんだろう?何で、殺せなかったんだろう?
    "館から無条件に解放できるのは50人まで。それ以上解放すると徐々に力が弱まって、果てには何も残さず消滅する。"
    微かに残る爺やの言葉を思い出す。噂を広める為に何十人も解放した。流石にもう無理だった。消滅は免れない。せめて、外に出てみたかったな。彼らは仲間の一人を犠牲にして脱出した。彼らにとってはGame clear。僕にとってはGame Over。何だろう。何だか心が楽になったようだ。これで殺さなくても良い。楽になれる。そんな感情が少しだけある。消えてしまうなら、最後ぐらい我儘言っても許されるよね。生贄になったあの人に外の世界の話をしてもらおう。話してくれなくてもいい。ただそばにいてほしい。あっ!だったら早く治療しないと。せっかくの最後の人間に死なれたら困るんだよ。でも僕はどんな姿だっけ?あの刑事と看守に撃たれた時に、ちょっと身体が邪魔だと感じたから館に同化していた。その時に自分の姿を覚えていれば元に戻れる魔術をかけたんだけど、まぁ良いか。この人の姿を借りよう。そして、この人の服装は来た時に戻そう。
    2367

    しゃけ

    DONE彼らが来ます。ここから先軍パロです。
    シックザール
    第一章 第四話「平常」今日はいつもと違う事をしたいから僕の一日を書いていこうと思う。まず大体日の出と共に起床。そして紅茶を入れる。今日はアールグレイにしよう。そうして朝のルーティーンを終わらせたら来客が来るまで図書室に入り浸る。ここにある本は読みきれない。だってこの館で死んでいった人間の記憶が本としてここに存在しているから。だから読み終えれない。僕が人を殺し続ける限り、本も棚も図書室の面積も増え続ける。だから僕の知識欲はこれだけで満たされる。ここの本を有効活用して色々な事を知った。
    国名、建造物、畜産、農業、漁業、政治、法律。あとは様々な学問、食事、衣料、機械、医療。でもそれは僕には無縁で無価値なもの。僕の興味が惹かれたのは宗教、人身売買、戦争、武器、飢饉、災害、身分格差、強姦及び性行為。そういう汚くて醜くてドロドロしている方が僕の好みだった。その情報を元に二桁程度人間を生かしてデスゲームを開催した。全員殺すけど。男女の割合が非対称だったら館中に人間にしか効果がない媚薬を撒いたりして、欲望に抗えない人間達を観察した。たまに様々な蟲の毒を抽出したり、薬品の化合物を使って遊んだりもした。
    1760

    recommended works