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    ヒロス

    いかがわしいものとか色々置き場

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    ヒロス

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    ドラみつ 🐉🍯
    海賊パロ
    R18
    片想い拗らせてます

    ラグナ○アの海賊衣装がとても好きなので

    白い鳥 真夜中のそこはとてもとても静かな場所だ。
     その部屋は少しだけ深く奥まった所にあり、太陽の出ている日中でも仄暗い。
     大きな宝石の付いた王冠や指輪やネックレス、珍しい香辛料や造りの良い武器などが至る所に散乱している小さな部屋。部屋というより倉庫と言った方が正しいだろう。片付けても片付けても誰かがこうして散らかしてしまうので、最近はもう片付ける事を誰もが諦めてしまった部屋。
     そんな場所にミツヤは居た。
     周りのみんなが深く寝入って、波も穏やかな静かな真夜中。小さな丸い天窓から時たま入る微かな月明かりが、四方八方に乱雑に置かれた戦利品達と、重なる2人の人間の姿をわずかに浮かび上がらせる。
     
     
     
     古びた大きめの木の衣装箱に上半身を突っ伏し、剥き出しの下半身を後ろから小刻みに揺さぶられながら、ミツヤは閉じていた目をそっと開けた。その目に最初に映ったのは数日前に手に入れた美しい絹のドレスだ。
     どれほど高貴な女性が身に纏ったのだろうか。きめの細かい金糸の刺繍が、目に張った生理的な涙のせいでやけにキラキラと輝いて見える。ミツヤは無意識にそっと手を伸ばしたが、そのドレスに触れるその直前で、ミツヤのその手はひと回り程大きな手のひらに掴まれてしまう。

     「服に夢中になんのもいいんだけどよ。今はこっち。な?」
     耳元に落とされる低音の声。その声と共に急に内臓の奥深くを刺激される。  
    「んあぁっ…」
     ミツヤの口からずっと耐えていた声が漏れ出した。暗くて静かな埃っぽい小さな部屋に思いの外反響してしまった自分のその声。我ながら酷い声だと思いながら、それに背を向けるようにミツヤはもう一度キツく目を閉じた。背中の向こうから、フハッと満足そうな笑い声が聞こえてきて、揺さぶられる速度が僅かに上がった気がした。腹の中が熱い。ドロドロしたものが鳩尾から迫り上がってくる。ミツヤは途切れ途切れの息を吐きながら、腹の中を掻き回される緩急になんとか食らいつく。もう頭がボーッとして身体中から色々なものが出そうになって、それを残り少ない理性で何とか押しとどめる。ミツヤの手の爪が古い衣装箱をカリッと引っ掻いたのを合図にしたかのように、ミツヤの手を上から握っていた大きめの手が静かに離れた。  
     離れていった少しカサついてゴツゴツした掌が、ヒラヒラと滑らかな薄手のシャツの上からミツヤの泡立った背中をそっとなぞる。そのままその手はだんだん下に降りてゆき、今度は剥き出しにされて中央に杭を打たれた尻たぶをそっとなぞる。そして最後にその手は、ミツヤの腰をスルスルと数回優しくなぞりそのままその薄っぺらな細腰をグッと掴んだ。その大きな手の持ち主は、今までとは比べ物にならない速さと質量をミツヤの中に打ち付けてきた。後ろから打ち込んでいるこの男も頂点への到達が近いのだろう。これはこの男のいつものラストの動きだ。ミツヤは衣装箱に着いた力の入らない両手でなんとか体を支えながら、身体の中に打ち付けられる焼け爛れた杭を体全体で受け止めようと必死になった。
     「んあぁ…もう…い…く…むり…んっ…」
     ガクガクとゆすられ、内臓の血が逆流しているような熱さと、頭を無理矢理空っぽにされるような霧がかった幸福感に、ずっと抑えてた声が出てしまう。
    「んぁっ…ド…ラケンッ…」
     内臓の中に熱を持った体液を注ぎ込まれるのを感じながら自分も下腹部に張り詰めたものを解放し、ミツヤは相手には届かないような声で背中の向こうの男の名を呼んだ。

     
     ボロボロの板に4本の棒を打ち付けただけの低いテーブルに置かれたランプの炎が、小さく震えた。オレンジ色の光が、壁に背をつけお互いにもたれ掛かるように座り込む2人の影を、大きくしたり小さくしたりとゆらゆら揺れる。
     お互いに数回欲を吐き出しスッキリした分の気怠さを体に残したまま、2人でポツリポツリとどうでもいい話をする。それは、もたれ掛かり合う雰囲気とは裏腹に、あまり甘ったるいものでは無い。数日前の他の船との戦闘の話や、尽き掛けの食材の話、次の陸でこの宝物庫という名の倉庫から何を売って何を補給するかとか、そんなピロートークとはかけ離れた会話。少しだけ気怠い熱さの残る声でポツリポツリと事務的な会話を交わすのが、いつもの2人の夜中の逢瀬からの流れだった。
     ミツヤは隣で欠伸をする男の剥き出しの肩に頭を乗せ、自分も小さな欠伸を零した。話す事は事務的だが、この狭い部屋の空気だけは情事の後の匂いを色濃く残していてむせかえる程だ。
     明日の朝になったらこの空気は消え失せる。それまでの間だけ、ほんの少しだけ、この空気に漂うのも悪くないなと、ミツヤは大きく息を吸い込んだ。

     
     
     この男と出会ったのは、もうずいぶんと昔の話。
     母親しかいなく貧乏で、幼い妹達に食べさせる為に男手の自分がなんとか働いてはいたけれど子供が手にできる金銭などたかが知れたもので色んな事に腐りかけてた時、故郷の寂れた路地裏でこの男に出会った。
     この男は娼婦の館で生まれ落ち、親の顔も知らずに育ったという。親のない子もそう珍しくはなかったが、その中でもそれなりに大変な生い立ちだろう。けれど悲壮感も無く、強く優しく大きくて晴々しく豪快なこの男に、ミツヤは何かを感じ取ってしまった。この男に出会ったその時から、自分の中の何かが変わってしまったのだ。何がと言われてもうまくは説明出来ないが、船で言えば完全に舵をきられた感じだった。
     
    「海賊の時代を作る!」
     ドラケンと出会った事でつるむようになった無敵と謳われるマイキーがそう言い出したのは何年も前の事。これまた一緒になってつるんでいた同い年のバジと共に、マイキーとドラケンをツートップに据えた船に乗り込んだのはもう何年も前の話しだ。
     これまた一緒につるんでいたパーもその時は一緒に船に乗ったが、家業を継ぐと言って早々に船を降り、陸に残った。今は側近のペーと共に、それぞれ陸に残してきた家族への仕送りの仲介や戦利品の売買のアポ取り、船の修理の依頼などこの船の拠点として一役買ってくれている。
     船長のマイキーと副船長のドラケン。それからバジとバジが連れてきた家が近所の一個下のチフユと幼馴染のカズトラ。そしてマイキーが引っ張りこんだ泣き虫のタケミッチ。この6人が、ミツヤが今、生活を共にする海の上の家族だった。

     その中の1人の男との距離感が、こうおかしくなったのはいつだっただろうか。
     ミツヤは隣から感じるその男の寝息を聞きながら、ふと考える。
     初めて身体を重ねたのは確か、海に出て数ヶ月の頃だった。女の経験も無くましてや受け入れる側の経験などした事も無かったミツヤと、男を抱くのは初めてだと言っていたドラケンの初めての夜はそれはそれは散々で、今考えればお互いに笑ってしまうような有様だった。それが今では、後ろの穴を上手く刺激されればそこだけで欲を吐き出す事ができる。自分の身体とはいえ、数年でよくここまで成長したもんだ。上手く作り替えられたその身体に、ミツヤは小さな笑いを零す。
     あの散々なセックスをしたあの日から、定期的に行われる真夜中の逢瀬。あの日も今日と同じ、この狭苦しい倉庫だった。それは月日が流れ、倉庫が宝物庫に役目が変わっても途切れる事無く続いている。
     けれど最近、ミツヤはどうしても逃げたくなる時があった。
     最初はドラケンに求められるがままに己の身体を差し出した。もちろん脅されたとか無理矢理とかそういう事ではない。
     戦闘後のお互いに血の気の激ったままのそんな夜だった。2人で目の奥にギラギラしたものを抱えたままうっかりキスをして、なんとなくそんな流れになってしまったのだ。
     お互いにどうかしている。頭の片隅ではそう思ったが「ミツヤミツヤ」と掠れた声で何度も名前を呼ばれればドラケンに求められているような錯覚に陥り、受け入れる方に回る事は造作もない事だった。そしてそのままミツヤは自分を差し出した。
     最初はミツヤもそれでよかった。
     一目惚れに近い形で始まって、知れば知るほどその強さに大きさに大人っぽさに憧れて、心酔し、なんなら崇拝していた。ずっと背中を追いかけてきた憧れの男に…心の奥をギュッと掴まれた好いた人間に求められているような気分になるのは悪い気はしなかった。 
     
     けれどドラケンにとっては、この行為はきっとただの処理行為だ。それはミツヤもちゃんと理解している。初めて重なったあの日以来、キスはしていない。なりより繋がる時はいつも後ろからだ。だからミツヤも声を極力出さないようにしている。けれど、自分達2人の行為はそれくらいが丁度いいのだろう。処理行為に甘ったるいまぐわいなど必要ないとミツヤも痛いほど理解しているし、自分だってそう思う。

     一度海に出てしまえば抱ける女もいない。陸に上がってもドラケンは娼館などには行かないらしい。何度陸に降りたとしても、いつも自由気ままな船長のお守りばかりしているし、それがない時はミツヤが異国の珍しい布や装飾品や食材を見て歩くのについて周り、自分が気になる武器や船のカスタム部品なんかをちょろっとだけ見て結局ミツヤと共に船へと戻ってくる。娼館は…この男の家同然の場所だから、そこの女達へはきっと手が出せないのだろう。だったら酒場にでも行って一晩限りのいい女とでも寝てくればいいのに。顔も体も声もいい。気遣いもできるしさりげない優しさもある。この男なら、女の1人や2人すぐに引っ掛けられるだろう。一度なんとなくそんな話をしてみたら、「そーゆうのはなんか違うだろ。てかお前はそーなのか?」と逆にこっちの何かを追求されそうになり、ミツヤはその話を無理矢理途中でやめた。
     

     何が違うのかはよくはわからないが、何かが違うとしても人間だから体に欲は溜まるもので、どこかでそれを吐き出さないと色々な均衡が崩れてしまう。それを吐き出すのにちょうどよかったのがたまたま近くにいた俺だったのだろうとミツヤは思う。お互いに血のたぎりを利用して何となくこんな関係になってしまった。ミツヤはこの男を好ましいと気持ちを腹の底に押し隠し、悟られないように立ち回りながら、この男の処理行為に付き合ってやってるふりをする。けれど付き合ってやってるふりをしながら好きな男の腕に抱かれている自分が、最近なんだか酷く浅ましく感じてしまう。このままでは、いつか腹の奥底に閉じ込めた物が溢れ出してしまうんじゃないかと時たま急に不安になり、ミツヤは最近、逢瀬の途中にふと何度か逃げ出したくなった。

     もし一晩限りってのが嫌なのなら、拠点にしている陸地に決めた女でも作ればいいのだ。そうすればわざわざ無理して仲間内の男を抱く事もないだろう。
     好きな人間からお役御免にされる事を考えると多少の切なさもあるが、そうすれば腹の奥底の物を漏れ出さずに済むと思えばそれが1番いいような気もする。
     そしてこの男が陸でいい女と出会って結婚して、船から降りるのがこの男と自分にとって1番いい事なんじゃないかとさえ思えてきてしまい、ミツヤは自分の突飛した思考を嘲笑うかのように苦笑いを浮かべた。



     
     ミツヤはそっと手を伸ばし、さっきまで自分が突っ伏して居た衣装箱の上から垂れ下がったドレスを手繰り寄せる。
     白い絹に金糸の刺繍。ふんだんに使われたレースは豊かさの象徴だ。
     あの日ドラケンと出会わなければ、ミツヤは仕立て屋になるのが夢だった。小さい頃から街角の仕立て屋のショーウィンドウに飾られた煌めくドレスを見るのがとても好きだったし、いつか自分の手でこんなドレスを作ってみたいと思っていた。見よう見まねで初めて妹達の服を仕立てあげた時は、どうしようもないくらいに嬉しかったのを思い出す。あの時、仕立て屋になる夢を抱いた。
     それがどうだろう。舟に乗り海をかき分け他の船との戦闘三昧の日々。今でも珍しい生地が手に入ればシャツを仕立てたりもするが、夢に見ていた仕立て屋とはずいぶん違うところに流れ着いた。
     けれど今隣で眠るこの男の背中を追いかける事ができるのなら、そんな事は些細な事だと思う自分もいる。
     
     この背中をずっと追いたい気持ちと、早く陸に上がって幸せになって欲しいと思う気持ち。矛盾してはいるが、どちらも本当のミツヤの思いだった。

     真っ白なドレスの潤沢なレースを撫でていると少し気持ちが落ち着いてくる。どうしてもレースに包まれたくなってそのドレスを頭から被りそのフワッフワなレースを堪能していると、ふと隣の男が目を覚ます気配がした。
     ミツヤはドラケンの方に顔を向けて片手で顔を覆うレースを捲り上げる。
    起きた?と声をかけようとしたその瞬間、ドラケンの唇がパクパクと小さく動き、そのままその唇が、ミツヤの唇に吸い付いてくる。
     ほんの一瞬の出来事だった。
     ミツヤは瞬間的にドラケンの胸をドンと押し退けた。
     「誰と間違ってんだよ。」
     ドキドキと早打つ心臓を悟られないように、ミツヤはそう言って笑ってやる。キスはあの日以来これで2度目だ。
     押しのけられたドラケンは一瞬固まった顔をしたがすぐにいつもの顔に戻り、解かれた長い髪をかき上げながらワリーワリーと笑って、大きなあくびをこぼした。
     

     
     「俺、部屋戻るけど、ミツヤどうする?」
     情事の前に床に投げ捨てていたピンクのサッシュを拾いながら、ドラケンが体を大きく縦に伸ばしている。
     「俺はまだいいや。ちょっと外の風でも浴びてくっかな。」
     ドラケンの問いにミツヤがそう答えれば、ドラケンは「ふーん。」とちょっと拗ねたように小さく口を尖らせる。情事の後で人肌恋しいのだろう。
     もうすぐ夜明け。静かな夜に終わりがくる。月明かりを取り込んでいた小さな天窓からだんだんと薄い黄色の明かりが差し込んできて、そしてその光は天窓の下でググッと身体を捻るドラケンの大きめの筋肉がしなやかに動く様子を、静かに照らす。その神々しい光景からミツヤは目が離せなかった。デカい双剣を操る逞しい腕。戦闘中に誰かを庇って出来た細々した傷や、腹の大きな傷。いろんなものが豪快な男だ。けれどそんな豪快な男は、微かに口を尖らせて人肌を恋しがったりと意外に繊細で儚げだったりする。あーやっぱ好きだなぁ。とミツヤは心の中で呟いて、目の前の男にバレぬ程度に目を細めた。

     「ほらドラケン。忘れもん。」
     床に落ちていた眼帯を拾って渡してやる。ドラケンはサンキュとそれを受け取り、左目を覆い隠した。大分前の戦いで負傷した左目。視力が完全に無くなったわけでは無いらしいが、弱くなった視力では戦闘の時に距離感が狂うらしく、今はずっと覆い隠されたままだった。けれどこの逢瀬の時だけはそれを外すので、きっと邪魔なんだろうな。と常々ミツヤは思っている。
    「ほら、お前もこれ忘れもん。」
     ドラケンの差し出す手を見れば、薄汚れたオレンジの布が握られている。ミツヤがそれを手に取ると、ドラケンは今まで布を握りしめていたその空いた手で、ミツヤの右の側頭部をするりと撫でてきた。
    「ちゃんと隠しとけよ。」
    「わかってんよ。」
     ため息混じりにそう言いながら受け取った布を頭に巻いていつものスタイルを作り上げれば、ドラケンはそれを見て満足そうにニヤリと笑った。そしてそのまま今度はその布の上から、さっきと同じ場所を二度三度スルスルと撫でてくる。
     
     ミツヤのここには、ドラケンと同じ龍がいる。

     海に出る大分前、その時の色んな気持ちを形に残したくて彫ったタトゥーだが、何の因果かドラケンと対となる紋様になってしまった。
     ミツヤが古びた煉瓦の壁に書いた空に登る龍の姿のデザインが元になっている。その瓦礫に描かれた元絵をドラケンも見ていたし、確かにくれとも言われた。同じような行動範囲の中で、子供でも手が出せるリーズナブルで倫理観の狂った彫り師を探せばお互い同じ彫り師にたどり着くのは何の不思議もない。そしてその倫理観の無い彫り師が、めんどくさがって同じ絵柄を反転させただけかもしれない。けれどそれにしても、そこに存在したのは、それは神の悪戯としか思えないほどに綺麗に対になった2匹の龍だった。

     ドラケンの代名詞にもなっているようなその龍の片割れを、ミツヤはこめかみに隠して飼う。このオレンジがかったターバンも、頭に巻いとけとドラケンが買ってきたものだ。ドラケンは事ある度にこの龍を「隠しとけ」と言う。きっと自分のアイデンティティと同じものが俺なんかに着いてるのが癪に触るのだろう。
     どこかのタイミングで削ろうかとも思った時もあったが、その傷が癒えるまでの間、船の戦闘員として使い物にならなくなる事を考えたら現実的じゃ無い気がした。そして何よりこれを消してしまうのは、あの時の自分を否定するようで、この背中を追い続けている男と自分だけの何かが切れてしまいそうな気がして、とても嫌だった。

     けれどドラケンは、情事の最中この片割れの龍を優しく撫でてくる。誰もいない所では2人の関係性を双龍なんて呼んだりするし、まぁ、この対の龍の存在自体が嫌なわけでは無さそうなのでミツヤは少しだけそれに安堵し、色素の薄い髪とターバンで隠すだけの日々を送っている。


     ドラケンが宝物庫から出て行きしばらく経ってから、ミツヤもその部屋から抜け出した。船の面子に二人一緒にいる所を見られたからといってどうって事はないが、この真夜中の情事に関してだけはなんとなく内緒にしておきたかった。この世界、男同士のあれこれなんて珍しいものでも無いけれど別に改まって発表するようなものでもない。それに船の仲間たちは家族同然の奴らだ。その中の2人の変な距離感を知らされても、知らされた方もリアクションに困るだろう。

     ミツヤは甲板に出て柵にもたれて目を閉じる。朝一番の冷たい海の風が、宝物庫で感じた蒸せるような空気を一掃してゆく。ミツヤはいつもこの時が1番寂しい気がした。人肌恋しいとはまた違うが、あの男が少し遠くに行ってしまうような、元々近くになんかいないような、なんとも表現しづらいそんな気持ちになるのだ。
     まぁでも、それが本来の2人の距離なのだろう。きっと元々そんなに近くに立っているわけじゃない。きっと自分達はそんなものだ。

     少し離れたキッチン部分からバジとチフユの絶叫が聞こえてくる。きっと豪快に火柱でも立ち上げたのだろう。この木造の船で火事は勘弁してほしい。しかし今日のキッチン当番はあの2人か。てことはまた変な黒いヌードルを食わされるんだな。と思いながら、ミツヤはクスクスと笑い声を上げた。


     その時、ミツヤの目に白い物体が近付いてくるのが見えた。その物体は翼をパタパタとさせながらミツヤの右の肩にスッと止まる。
     いつもバジの肩に止まっている白い鳥。おおかた、バジとチフユの絶叫に驚いて飛んできたのだろう。
     「逃げてきたのか?」
     そう言って頭を撫でてやれば、その鳥はクルクルと喉を鳴らしながらミツヤの手に擦り寄ってきた。
     「かわいいなぁオマエ。」
     自分もこのくらい相手に素直に擦り寄れれば、何かが変わってくるのだろうか?色んな事を俯瞰でみる性質の自分にそんな事ができるはずもないし、まず関係性を変えたいとは思ってもいないけれど。
     白い鳥は何も言わず、静かにミツヤに寄り添ってくる。
     「あいつさー、カッコいいよな。」
     水平線に目を向けたまま、誰に聞かせるでも無くポロっと出たミツヤの言葉に、白い鳥がケーッと返事を返した。偶然だろうが、その綺麗な流れにミツヤは少し楽しくなる。
     「あいつってドラケンの事ね。オマエも知ってるだろ?」
     「ケーッ」
     「ほんとさー、色々カッコいいんだよ。見た目もそうなんだけど、言う事とかやる事とか全部カッケーの。俺の憧れ。デカくてさ、豪快でさ、馬鹿みたいにに強くて、男らしくて。でもちょいちょい繊細で、色々器用でさ。そんでそばに居ると俺の心臓の奥がギューってなんかに掴まれた感じになるわけよ。嬉しいとか楽しいとか苦しいとか悲しいとか全部ぐっちゃぐちゃになっちまうの。よくわかんねぇけど。とにかく本当カッケーんだ。セックスもなんだかんだで優しいしな。」
     「ケーッ」
     「あーぁ。でもそれが逆にキツイ時ってあんだよな。」
     「ケッケッケーッ」
     「ふふっ。オマエにもわかる?なんか逃げ出したくなるんだよ。でもそれでも一緒にいてぇしセックスもしてぇの。でもその反対側でもうほんと全部やめたいって思ってる自分もいんの。優しくされるの苦しぃんだよ。勘違いしそうになるし。んー、勘違いってなんだよなって話だね。本当はさ、もうただ背中追ってるだけで満足なんだよ。隣に居れるだけでいいし、あいつの姿が見えてるだけでいいんだよ。本当はね。でも手に入れてぇなって思っちゃう時もあんの。あー意味わかんねぇよな。だよなー。俺もわかんねぇ。なんつーかさ…どうしようもないくらい好きなんだよなぁ。」
     「ケーッ」
     「あ、でも大丈夫。ドラケンに迷惑はかけねぇし、この気持ちはちゃんと墓場まで持ってくよ。これでいいんだよ。あいつはさ、いつか陸でかわいい女の子と結婚すんの。ちゃんと顔見ながらセックスできるような子と結婚して、そんでかわいい子供に囲まれて幸せに暮らすの。俺さ、昔から気持ち隠すのとか痛み耐えんのは病的に上手いんだよ。だから大丈夫。」
     鳥しか聞いてないのをいい事に、今まで一度たりとも口に出した事のない気持ちを吐き出せば、ミツヤは己の心の中が少しだけ整理された気がした。
     白い鳥は嘴でミツヤのこめかみをすりすりと擦る。ドラケンに対の龍を撫でられてるよな、そんなリズム。
     「慰めてくれんの?オマエいい奴だね。」
     「ケーッ」
     「今の話、ご主人には内緒だぞ?」
     ミツヤが唇に人差し指を当てて小さく笑えば、それと同時に食事を知らせる鐘が船中に響いた。
     ミツヤの想いを抱えた鳥が、少し骨張ったミツヤの肩から大空に向かって羽ばたいてゆく。ミツヤは青く広い空に目を向け、高く高く舞い上がりどんどんと小さくなっていく白い鳥を黙って見送る。
     一生言わないと固く決めたこの想いが浄化されるような気がして、ミツヤの心は少しだけ軽くなった。


     それから数日後、ミツヤは初めてドラケンの誘いを断った。 
     「ワリィ、腹の調子良くねーんだ。」
     ミツヤがそう言えば、ドラケンは少し心配そうな顔で、あっためろ。だとか、薬は持ってるか?バジの飯のせいか?などと甲斐甲斐しく口を出してきて、ミツヤは少し苦笑いを溢した。
     本当に腹が痛いわけじゃ無い。ただの断り文句だ。もう浅ましい自分をやめようと思っただけの事だ。痛いのは腹なんかじゃなく胸の奥だ。でもそれももう終わる。この痛みも時間が解決してくれるだろう。これからはあの頃の純粋な憧れに戻るのだ。青い空に舞い上がる白い鳥と共に色んな想いは浄化されたのだ。

     「俺は…大丈夫だから。本当、色々一杯ありがとな、ドラケン。」
     ミツヤの色んな想いを含んだそんな言葉。ドラケンは「大袈裟なんだよ」と笑いながらミツヤのこめかみをするりと撫ぜた。
     
     

     それから数日後の真夜中、ミツヤは今、甲板の端に追い詰められていた。
     初めて断った日のその次も、そのまた次も、ミツヤは何度もドラケンの誘いを断り続けた。 
     けれど胸の痛みは無くなるどころか増幅する一方で、あの頃の純粋な憧れなんてものにはなかなか辿り着けなかった。
     何度も何度も適当な理由で宝物庫の逢瀬を断り続け、終いにはここ数日、ドラケンを無理矢理避けるような態度をとってしまうようになった。そして今こうやって、ミツヤはその男にジリジリと甲板の隅へと追い詰められている。

     我慢も隠蔽も得意なはずなのに、この男の前では何一つ上手くできなかった自分が情けない。
     
     「避けてるよな?」
     「避けてねぇよ。」
     「完全に避けてんだろ。」
     「は?避けてねぇって。」
     そんな押し問答を繰り広げながら、ミツヤの背中がトンと壁にぶつかった。壁に背をつけたミツヤの頭のすぐ横にドラケンが肘を付き、ミツヤの顔を覗き込むようにググッと顔を寄せてくる。
     
     「俺、オマエになんかしちまった?」
     全身に染み渡るような低い声が、耳のすぐ隣から聞こえてくる。
     そんなんじゃねぇ。悪いのは全部俺で、ドラケンは何も悪くねぇ。
     そう言いたいのに、カラカラの口からはなかなか声が出てこない。ミツヤは困ったようにターバンの上からこめかみを掻いた。
     この想いがバレないようにドラケンを納得させなければいけない。ミツヤは何をどう伝えればいいのかわからず、下唇をギュッと噛む。
     お互い何も発せず、それなりの時間が流れた。
     ミツヤの横からドラケンの手が離れ、顔も少し高いところへと遠ざかった。ミツヤはドラケンの顔を見るのが怖くなり、自分の足元に目線を落とす。黒いシンプルなドラケンのブーツが、自分から一歩離れるのが見えた。
     そしてそれとほぼ同時に、頭上から小さなため息が聞こえてくる。

     「ほんとに、墓場まで持ってくのか?」
     ため息のすぐ後に聞こえてきたドラケンのその声に、ミツヤが「えっ?」と顔をあげる。
     「姿見えてるだけでいいってなんだそれ。」
     「え?ちょ…何言って…」
     「本当隠すのうめーよな。ミツヤ。」
     「いや、ちょっと待って待って待って…」
     「俺は…許されんなら、オマエの顔見ながらセックスしてぇよ?」
     ドラケンがミツヤの頬に手を伸ばしそう言ったすぐ後、どこからともなく飛んできたバジの白い鳥が、ドラケンの左の肩にピタリと止まった。

     「ホントカッケーンダ!ドウシヨウモナイクライスキナンダヨナー!オマエモシッテルダロ!ドラケン!」
     ドラケンの肩の上で、白い鳥が片言でピーピーと話し始める。
     ミツヤの顔が一瞬にして青ざめる。
     ミツヤは少しだけ体勢を低くしてドラケンの脇を擦り抜け、瞬間的にそこを逃げ出した。
     腕力や持久力は目の前の男の足元にも及ばないがだが、瞬発力ではこの船の奴らの誰にも負けない自信があった。
     「ミツヤッ!」
     背中の向こうからドラケンが追いかけてくる気配がするが、そこに立ち止まる勇気は無かった。
     
     海に出てすぐ、補給の為に寄った異国の地で
    場地がどこかから連れてきた白い鳥。ミツヤは全力で走りながら、その時のニコニコしたバジを思い出す。
    「これ、オウムっていうんだわ。人間の言葉覚えるらしーぜ。」
     ここ何年も一緒にいて人間の言葉を話すところなんて見たことが無かったからすっかり忘れていた。人間の言葉を聞いて覚えるというその鳥。
     ただの鳥だと思って打ち明けた拗らせた想いが全部、ドラケンに伝わってしまったようだ。
     
     ミツヤはがむしゃらにマストを登り始める。ドラケンもミツヤの名を呼びながらそれを追いかける。身軽さを武器にスルスルと登っていくミツヤに対して、ドラケンは腕力の力技で重い身体を引き上げるように登ってくる。
     メインマストの1番てっぺんまで登り、横に張った帆用の木の棒を縄を掴んで数歩ほど進む。そして足場が何もなくなった所でミツヤはやっと己の足を止めた。一歩先の足元にはもう何もなく、遥か下に真っ黒な海面が見えるだけ。
    後ろからはドラケンが登って来ていて、ミツヤは退路を経たれてしまう。もうこうなったら命懸けで海に飛び込むか、ドラケンと向き合うか、二つに一つだ。

     ドラケンの足で3歩分ほどの間を空けて、2人は距離を測り合う。
     今にも海に飛び込んでしまいそうなミツヤを刺激しないように、ドラケンは小さく名前を呼びかけた。

     「なぁ、ミツヤ。危ねぇからこっち来いって。」
     「いやぁ。無理だわ。」
     「何が無理なのか言ってみろよ。」
     「もうドラケンの顔見れねぇし、ドラケンのそばにもいれねーよ!」
     「なんで?俺の事好きなんだろ?手に入れてぇんだろ?バジの鳥に全部聞いた。」
     「はぁ?聞いた。じゃねーんだよ。つーかじゃ、俺が墓場まで持ってくっつったのも鳥に聞いただろ?だったら言うなよ!空気読めやボケ!」
     「空気なんか読んでられっかよ!ずっと落としてぇって思ってたオマエが俺のとこまで落ちて来そうになってんのに!」

     マストのてっぺん。風の音が轟々とする中で、ミツヤとドラケンの応戦が続く。

     「落とすってなんだよ!どっからも落ちねぇよ。そーゆう事言うなよ!縁起でもねぇ!」
     「ふざけてんのはどっちだテメー!意味わかんねーな。いいから、危ねぇからこっち戻ってこいっつってんだろ!」
     
     真夜中、マストのてっぺんで大声で叫び合う2人に、船の面々がなんだなんだと起きてくる。
     
     「なんかドラケンくんとミツヤくんが喧嘩してるみたいっす!あんな高い所で危なくないですか?」
     「ふーん。ケンチンとミツヤなら大丈夫だろ。つーかこんな夜中に迷惑な話だなぁ。ほっといてもう寝よーぜ。タケミッチ。」
     「いや、なんかいつもと様子違いますって。なんか危ないですって!」
     大きな欠伸を隠そうともせず雑魚寝部屋に戻ろうとする船長をタケミッチが必死に引き留める。
     「ちょっと、バジさん!何言ってるかは分かんないですけど、なんか形相やばいっすよあの二人。あの二人のあんな顔初めて見ました。」
     チフユがバジの隣で古ぼけた双眼鏡を覗きながら上を見上げている。その隣ではカズトラがその双眼鏡に手を伸ばし「俺にも貸せよ」と喚いている。
     白いオウムがバジの頭上を数回周り、いつもの定位置へと戻ってきた。バジがオウムの頭をこしょこしょと撫でてやると、オウムは気持ち良さそうに目を閉じる。
     「お前、もしかしてあいつらになんか余計な事したん?」
     「ゴシュジンニハナイショー!ゴシュジンニハナイショー!」
     バジの問い掛けにオウムは甲高い声を上げた。


     
     相変わらずマストの上では、ドラケンとミツヤが微妙な距離感で怒鳴り合いを続けている。
     後ろには道はない。けれどドラケンの方に進むなんて事はできない。この想いは絶対に告げる事なく墓まで持っていくと決めていた。決めていたというよりそんなもんだと思っていた。
     思いがけず思いがけない所から伝わってしまった事をどう処理していいかわからず、ミツヤは揺れるマストの上で途方に暮れる。
     
     「わかった。ちゃんと降りっからさ。ドラケン先降りてよ。」
     「ヤダ。」
     「ヤダじゃねーんだよ!ガキみてぇな事言ってんじゃねーよ。」
     「どっちがガキだよ。どうせまた逃げんだろ?俺はミツヤ引っ掴んで降りる。つか、ガキじゃねーんならちゃんと言いてぇ事言って俺と向き合えやコラ。喋んなら鳥じゃなくて俺だろうがよ。」
     2人の足元で、木製の古いマストがギギーギギーと嫌な音を立てている。

     「なぁ、ミツヤ。どうやったら俺んとこまで落ちてきてくれんの?」
     「は?同じ高さまで登ってきてんじゃん…」
     お互いにギリギリで届くか届かないかのような声を絞り出し、ミツヤがドラケンから目を逸らしたその瞬間、びゅうっと大きな風が吹いた。
     マストが大きくぐらりと揺れる。
     「あ…」
     ミツヤの体が大きく傾いて、心許ない足場からスローモーションのようにするりと落ちた。
     「ミツヤッ!クソッ!」
     ドラケンが間髪入れずに足場の棒を蹴り、ミツヤのその体を追いかける。
     甲板では「あぁっ!」と5人分の大声が重なった。
      
     ミツヤの身体がぐんぐんと暗闇に落ちる。
    ミツヤの目に追いかけて飛び降りてきたドラケンの姿が映る。

     あぁ。バカだなドラケン。海に叩きつけられたら助かるかどうかわかんねぇのに。俺なんかのために考えもせずに飛び降りてくるなんて、本物のバカだ。
     あぁそれでも。やっぱりほんの少しだけ嬉しく思ってしまう自分がいる。そんな自分が大嫌いだ。
     ミツヤは身体中の力を抜いて静かに目を閉じた。
     

     暗闇の風の中。ドラケンは長い腕を目一杯に伸ばた。そしてミツヤの服の端を掴むとそれをとりあえず力の限りに引き寄せる。それから無意識にミツヤの頭を抱え込むと、そのまま2人一緒に真っ黒な海へと吸い込まれた。
     たった数秒間の出来事だった。
     
     シーンと静まり返る真っ黒な水面。

     そこに2人の顔がプハッと出ると甲板からは5人分の歓声が上がり、すぐに大きな網縄が海に向かって投げられた。



     シャワーを浴びて着替えをして、火の焚かれたキッチンのカマドの前に座らせられる。なんだかんだ1番まともに地に足がついてるタケミッチに海の危なさと真水の大切さをギャンギャンと半泣きで説教されて、ミツヤとドラケンはさっきやっと解放された。
     そして2人は今、宝物庫の床に座り込んでいる。
     海から上がるその時からミツヤの手はドラケンの一回り大きな手に絡め取られ、そこを逃げ出す事を許されない。
     
     「なんでドラケンまで一緒に飛び込んでんだよ。死ぬかもしんねーのに。バカかよ。」
     ミツヤの声に、ドラケンはフーと息を吐き出した。
     「うっせ。オマエ追いかけて体が勝手に動いたんだよ。」
     「ハハッ。ホントそーゆうとこな。やめた方がいいよそれ。」
     「何が。」
     「思わせぶりな言動。」
     「ミツヤさ、さっき上でやったやりとり覚えてっか?」
     ミツヤはそう言われ、何も言い返すことができなかった。
     もちろん覚えている。気が動転してたとはいえ、つい数時間前のやりとりだ。覚えてない訳がない。ただ、こうして落ち着いて考えてみると、あまりにも酷い会話すぎて、ミツヤは全てを無かったことにしたかった。

     お前の顔見ながらセックスしてぇって、なんだよそれ。意味わかんねぇ。後ろから入れんのいつもドラケンの方だろうが!クソッ。
     頭が痛え。
     
     もう、何がなんだかよくわからなくて、ミツヤは黙ったまま下を向いた。乾かすために外されたターバン。いつもは隠されているドラケンと対の部分をミツヤはガシガシと掻き上げる。
     「傷になっちまうぞ。」
     ドラケンの落ち着いた声が狭い部屋に響く。
     「関係ねぇだろ。どうせいつも隠してんだし。」
     「隠してくれてんのはありがてぇけど…傷が付くのはダメだ。」
     ドラケンのアイデンティティの龍と同じものに傷が付くのは嫌なのか。ミツヤはふと思い立って、ずっと前に思いついた事を口に出す。   
     「なぁ、俺、この龍削ってもいいよ。傷が治るまでまともに戦えなくなるかもしんねーけど…」
     ドラケンの眉間に急激に力が入った。
     「は?何言ってんだ?」
     「だから。この模様ってドラケンの専売特許みたいなもんだろ?それが他の人間にも付いてんのは面白くねぇんだろうなって。だから俺が削るのがいいんじゃねぇかなって。まぁ、俺にも色々思い入れはあるんだけどさ。」
     
     ドラケンが大きなため息を吐き出した。

     「ミツヤさ、お前、どんな思考回路してんの?普段俺らん中じゃ1番まともだよな?」
     「は?」
     「俺はお前を落としてぇんだよ。」
     「見事に2人いっぺんに落ちたな。」
     「お前ふざけてんの?物理的にじゃねぇよ。」
     「じゃ何?意味わかんねーよドラケン。」
     「俺は、お前を、俺のものにしてぇの。わかるか?俺だけのもんにして、俺のとこに引き留めて、俺とだけキスして、セックスして、俺の事だけ見てるようにしてぇんだよ。」
      
     そんなの、とっくにそうだって鳥に聞いて知ってるくせに。意地悪な奴だな。

     「そんで、俺もお前のもんになりてぇの。早い話が好きなんだよ。ミツヤが。」
     ミツヤは一瞬真顔になり、ドラケンの言った言葉を反芻する。今聞いたばかりのたった二文字が、頭の中をドラケンの声でぐるぐる回る。
     「…いやいや。…うん。…ないない。」
     「お前たまに語彙力消えるよな。」
     「いやだって、ドラケンは全員のもんだし。」
     「全員って誰だよ。」
     「この船の連中とか、陸の女の子とかさ。みんなぜってードラケンの事好きになる。」
     「は?つかそれはテメーだろうが!陸の女がどれだけお前に色目使ってるかわかってねえのか?」
     「色目?」
     「これだから困んだよ。やたらスマートな男がセンスのいい服着て歩ってりゃ女も男も食らいつくだろ。だから俺が陸に上がったお前に付いて回ってんだろーが。」
     ミツヤはふと思い当たる。船長の子守りをする時は仕方ないとして、ドラケンはいつもミツヤの後ろをついて回り、特に興味のない香辛料や生地屋にも付いてくる。
     あれはそういう事だったのか?ただ単に暇なわけじゃなかったのか。


     「いやいや…でも…キスもねぇし、セックスだっていっつも後ろからばっかだろ。」
     「あれはお前が…悲しそうな顔すっから…」
     「えっ?俺、悲しそうだった?」
     「それも気づいてねぇの?すげー悲しそうな顔すっから、顔見るとこっちが辛くなんだよ。やっぱ男に付き合わせんのワリィなって。そっちの役目押し付けちまってるし。でもお前のこと抱くのはやめらんねーし。もう後ろからするしかねぇなって。」
     そりゃ確かに悲しかった。
     色んな思いを押し込んで蓋をして、ドラケンの処理に付き合ってやってるふりをしながら抱かれて喜ぶ自分の浅ましい行為が、本当に嫌で仕方なかった。
     全部隠せているたつもりだった。なのに。

     ランプのオレンジ色の光が、あの日のようにゆらゆらと揺れて、ミツヤの紫がかった目も一緒にゆらゆらと揺れる。
     「でも…ドラケンが俺を好きになる理由なんかねぇだろ。俺、別にお前にとっていい所なんかなんもねぇよ?」
     「理由…ねぇ。」
     ドラケンの口から呆れたようなため息が出て、ミツヤは静かに床を見つめた。
     「理由なんか山程ありすぎて自分でもよくわかんねーんだけど。なんかやたらすげー落ち着くんだよな。ミツヤの隣。ずっとここにいてぇなって思うんだよ。そんで後はお前見てるとなんかめちゃくちゃ興奮する。これじゃ理由になんねぇか?」
     他にも理由が必要なら事細かく言ってやる。何年かかっかわかんねぇけど。と鼻息を鳴らすドラケンにミツヤは泣き笑いの表情を浮かべ、小さく左右に首を振った。
     落ち着きながら興奮するなんてなんて忙しい奴だ。けれど自分という何でもない存在がこの男をそうさせているのかと思うと、なんだかどうしようもない驚きと喜びに心が支配される。
     
     
     また静かな時が流れる。船の軋む小さな音だけが、2人の耳に流れ込んでくる。

     「そんでさっきの話だけど。」
     急に上がったドラケンの声に、黙ったままのミツヤの肩がピクリと揺れた。
     「なんでコイツ消すなんて言い出した?」
     ドラケンの手が、情事中のような柔らかさでミツヤのこめかみを撫で付ける。
     「だから…」
     「俺がどんな思いでさっきお前の頭守ったと思ってんだ。」
     あの高い高いマストの先端から落ちたあの時、ドラケンの逞しい腕に胸に、この頭がギュッと包まれたのを思い出す。
     「ミツヤのこれは、俺の龍の片割れだ。ゼッテ無くさねぇ。」
     「でも隠せって言うだろ。」
     「当たり前だろ。誰にも見せねぇよ。俺のもんだ。」
     ドラケンは切れ長の目を細め片方の口角だけをグイッと持ち上げ、ミツヤの頭をまたぎゅっと抱き寄せた。

     「なぁ、鳥が言ってた事、全部本当か?」
     頭を胸に包まれたまま、そう聞かれた。ドラケンの声がドラケンの胸に伝わって心音と共に不思議な反響で聞こえてくる。耳に震えで伝わるそれが、ミツヤはどうしようもなく心地いい。
     今更聞くのか?とも思ったが、急に不安げな声になっているドラケンが少しだけ可笑しくなった。
     ドラケンの口から出た、墓場とか隠すとかの単語を思えばほぼ合ってるだろう。バジの説明を思い返せば、オウムは人間の言葉を喋る生き物ではなく模写する生き物だった気がするから、きっと俺の言葉がそのまま伝わったはずだ。
     けれどミツヤは少しだけ意地悪をしてやる。
     「鳥に何聞いたか知らねぇし。」

     「ミツヤは俺の事が好きって事。」
     そんなの今までのやり取りで全部わかるだろ。と悪態をついてやりたくなったが、ミツヤは黙ったまま小さく頷いた。

     
     「なぁミツヤ。キスしていいか?」
     「そーゆうのって聞くもんなの?」
     「また突き飛ばされたらヤダし。」
     この前の宝物庫の逢瀬の時の事を言っているのか。情事後、ドレスのレースと戯れていた時の急にきたあのキス。ミツヤはふとあの時の事を思い出す。
     ドラケンの口がパクパクと動いて、急に唇を塞がれた。あの時、ドラケンの口は確かにミツヤと形どっていた。それなのにそれをミツヤが「誰と間違ってんだ」と突き放した。
     その後のドラケンの固まった顔が、今も脳裏に焼き付いている。
     
     あの時もドラケンはちゃんと俺を見てたのか。

     「あん時は聞かずにやっちまったからビックリさせちまったかなって思って。悪かったな。でもあん時のミツヤ、花嫁みてぇでテンションあがっちまって…」
     育ち柄花嫁なんて遠目でしか見た事ねーんだけど。
     なんて言いながら、ドラケンははにかんだ笑みを零す。
    「なんかさ、結婚する時ってレースのベールかぶった花嫁に誓いのキスすんだって。だから、なんかこれに今キスしたら、俺のもんにできんのかなぁ、なんて思っちまったんだよな、あの時。」
     驚かせて悪かったな。
     もう一度ミツヤにそう謝りながら、ドラケンはミツヤの顔をしっかりと見てきた。

     もうずっとお前のもんだと思ってるくせに。
    ずるい男だ。クソッ。でもそんなところも好きだなぁと思ってしまうのはもうちょっとした病気に近いのだろう。それはもう自分じゃコントロールできないものだ。


     「なぁ、キスしていいか?」
     「…っす。」
     「なんだよその返事。」
     「いや、なんとなく…」
     そんなやり取りをしながら、お互いに顔を近づける。
     「あ、待って。」
     急に止められてミツヤが眉間に皺を寄せれば、ドラケンがおもむろに眼帯を外し投げ捨てた。
     「あぁ、邪魔なんだっけ?それ。」
     「いや別に生活には邪魔じゃねぇけど。」
     「でもいっつも外すよな。」
     「お前といる時だけな。まだ視力は少し残ってっから、その間は両目でお前の事見ねぇと勿体ねぇだろ?」
     「なんだそれ…」
     「今日はちゃんと顔見せろよ。」
     胡座をかいた腿の上にミツヤをヒョイと跨らせて、ドラケンはミツヤの顔を笑って見上げる。
     「なぁ、今日はこの体勢でやろうぜ。」
     ニコニコしたままのドラケンが向かいあったままでミツヤの尻を引っ掴んだ。
     「は?ふざけんな!」
     面白いほどに肩をこわばらせ顔を真っ赤に染め、ミツヤはドラケンの肩に爪を立てる。
     
     「あー。なんか緊張すんな。初めてじゃねぇのに初めてみてぇ。」
     ミツヤの首筋に顔を埋め、ドラケンがそんな事を言い出した。首筋にかかるドラケンの息が、熱い。
     
     うん。俺も。初めてみたいな感じがする。だって、『俺の事を好きなドラケン』って奴に抱かれるのはこれが初めてだ。処理にお付き合いぶらなくていいし、もうこれは浅はかな行為でもない。
     

     「バジの鳥に感謝しねーとな。あいついなかったらお前マジで墓場まで持ってくつもりだっただろ。」
     「まぁね。言うつもりなんて無かったし、別に近くに居れるだけでよかったんだよ。本当に。それに、ドラケンは陸でちゃんとした嫁さん貰うもんだと思ってたし。」
     「俺は…この前誓いのキスした俺だけの花嫁さんで満足してる。」
     古びたドレスのレース部分をかぶって布と戯れていただけの俺の話か。
     「花嫁なんつーガラかよ。」
     ミツヤがそう噴き出せば、ドラケンも一緒に笑い出す。
     「そうだな。普通の花嫁はマストのてっぺんなんか登んねぇからな。」
     「やんちゃ過ぎてドン引きだろ?」
     「いや、マジ最高。」

     ニヤリと笑ったドラケンが異国のカーペットの上にミツヤの体を押し倒す。
     顔を見合ってオデコをくっ付けて笑い合って、それから2人はもう一度唇を重ね合わせた。



     
     ミツヤは船に響く食事の鐘で目を覚ました。
    オイルランプの灯りはとっくに消えていて、宝物庫の天窓から真っ白い日の光が差し込んでいる。身体の下には、昨夜ドラケンと体温を分けあった毛足の長い異国のカーペット。隣ではまだドラケンがスースーと寝息を立てていて、二人の上にはいつのまにかドラケンのレザーの大きなコートが掛けられている。この部屋でドラケンと共にこの時間を迎えるのは初めての事だった。ミツヤはなんだか急に恥ずかしくなってドラケンに背を向ける。セックスなんて今まで何度もしてきた事なのに。けれど、昨夜のそれは今までのそれとは段違いだった。心を通わせたセックスとはこんなに凄いものだったのか。
     
     初めて、ちゃんとしっかり向かい合って繋がった。

     顔を見合って笑い合ってキスをして抱きしめ合った。胸と胸がピタリとくっついて、相手の心臓の音まで感じた。ドラケンは驚くくらいに優しく頬に触れてきて、驚くくらい幸せそうに笑う男だった。照れたような恥ずかしそうな真っ赤に染まったツンとした表情と、興奮で切迫詰まったような苦しそうな表情を見せる男だった。
     今までも、この男はいつもこんな顔をしながら俺を後ろから貫いていたのだろうか。

     情事の最中、そんなドラケンの顔を見上げながらそんな事を思い始めたら、ミツヤはなんだか急激に恥ずかしくなった。恥ずかしそうな苦しそうな、それでも今まで見た事も無い程に幸せそうなドラケンの顔をもう直視することができなくなって、ミツヤは両腕で自分の顔を覆い隠した。
     けれどそしてその腕はドラケンに無理矢理引き剥がされた。ギラギラした目で「もっと見して」などと呟かれて、そしてそれから、かわいいかわいいと可笑しな譫言と共に何度も何度も顔中にキスをされた。
     きっとあの時の自分は、見上げた男と同じ顔をしていたと思う。
     恥ずかしくて照れ臭くて、興奮で息が苦しくて、それでも驚くほどに幸せそうな顔。
     
     少し思い返しただけでも、羞恥や興奮や歓喜
    が押し寄せてくる。

     ミツヤは大声で叫び出したくなる気持ちを抑え、横たわったカーペットからゆっくりと身を起こした。
     再度、食事ができた事を伝える鐘がしつこい程に鳴り響く。
     その音でドラケンがゆっくりと目を開けた。
     「おはよ。朝飯できてるみてぇだよ。」
     のそりと起き上がるドラケンにそう声を掛ければ、おはようの挨拶の代わりにチュッと軽いキスをされた。
     何度も何度もなる食堂の鐘。
     「この感じ、今日の当番はマイキーだな。早く行かねーと船の外まで蹴り倒されんぞ。」
     ゲラゲラ笑いながらそう言うドラケンに、ミツヤもクスクスと笑い返す。
     「ヤベェじゃん。もう当分海には落ちたくねぇよ」
     そんなどうでもいい会話をしながら2人で笑い合い、急いで服を整えた。

     2人連れ立って食堂へ行き何となく決まったいつもの席に座ると、マイキーがブスくれた表情でドラケンとミツヤにだるそうに人差し指を向ける。
     「遅ぇ!!ケンチンとミツヤ何やってんだよ。こっちは朝っぱらから飯作ってんのに!」
     「マイキーくん何もやってないじゃ無いですか!作ったの俺ですよ」
     マイキーの言葉にタケミッチが反論するが、マイキーは完全に無視を決め込みドラケンとミツヤを指差したままでニヤリと笑う。
     「つーわけで、罰として今日の夕飯当番はケンチンとミツヤな!これ船長命令だから」
     「はっ?遅くなったのとそれは関係ねぇだろ」
     「関係あんだよ。団体行動できねぇ奴等は罰を受けねぇと。なぁケンチン!」
     「お前が1番できてねぇけどな。てかマイキーがやりたくねぇだけだろーが。な?ミツヤもなんか言ってやれよ」
     「いや、俺は別にいいけど」
     ヤッターと両手をブンブン振り上げて叫ぶ船長と、マイキーくん危ないですよ!と叫ぶタケミッチと、ミツヤ!俺オムライス食いたい!と乗り出すカズトラ。バジとチフユはこの前見たという鯨の話で盛り上がっていて、食堂の中は毎日と同じうるささで溢れていた。
     
     こうやって繰り広げられる日常を、ミツヤはいつも以上に愛おしく思う。そしてその中で急に変化した一つの関係性にこっそり照れ臭くなる。
     ミツヤはニヤケそうになるのを抑え無理矢理に平常心を保った顔で、出された温かいスープを一口啜った。

     「ケェェェーー」
    バサバサと羽音を立てて急に現れたバジのオウムにみんなが目線を向けた。オウムは食卓の上を一周回ってバジの肩に静かに止まる。
     「おぉ。お前昨夜どこ行ってたん?」
    バジがパンの欠片を与えながらそう聞けば、オウムはもう一度「ケェェ」と鳴声を上げる。そしてそのまま続く甲高い声。
     「ケェケェェ!アッンッアッ!モウムリ!ハランナカオカシイ!ンアッ!デル!」
     そこにいる皆んなが手を止めてその甲高い声を聞く中、ミツヤの顔がボンっと音を立てたように赤くなった。
     オウムの発するその言葉に、ミツヤは何となく覚えがある。朦朧としていたから定かでは無いが、多分間違いなくこれは昨夜の情事中に己が発した言葉のような気がする。ミツヤが赤い顔のままフリーズしていると白いオウムは流れるように次々に言葉を滑らせ始めた。
     「ケェッケッ!ミツヤ!ミツヤカワイイカワイイ!スキスキ!ピピ!アーモウダメドラケンソレダメモウイクッ!ホントダメカミツヤキモチヨサソウナカオシテル!キモチィキモチィ!ケェェピピ!」
     ちょっとした時間が空いて、ゆっくりとドラケンとミツヤに向けられる5人の目線。
     
     それは間違いなく昨夜の自分とドラケンの喘ぎ声だった。この鳥があの宝物庫にいたのを知らずに、自分達は一晩中お互いの身体を貪り合っていたらしい。
     ミツヤはビックリするくらい熱くなった顔を下に向け、ドラケンはうわぁと小さな声をこぼして両手で顔を覆った。
     そして次の瞬間、ミツヤはもう居た堪れなくなって椅子を倒して立ち上がる。真っ赤な顔のまま机に足を掛けてビュンと飛び上がり、白い鳥へと手を伸ばす。
     「テメェ!クソ鳥!悪趣味なんだよ!」
     恩人だが恩鳥だが知らないが、仲間の目の前で喘ぎ声をバラされ、ドラケンとの情事をバラされ、ミツヤは恥ずかしさのあまり大人しく座って流す事ができなかった。
     けれどオウムは涼しい顔でバジの肩からフワリと舞い上がり、勢いよく伸ばしたミツヤの手はその白い鳥に届く事なく空を掴んだ。
     「ドラケンそっち行った!捕まえて!」
     急にミツヤに名を呼ばれ、両手で顔を覆ったまま固まっていたドラケンはふと現実に引き戻されたように「おぅ」と声を出して立ち上がり、それからオウムに向かって手を伸ばす。しかしオウムはそんな2人をあざ笑うかのようにケッケッと鳴きながら天井付近を一回りして、小さな扉から広い外の世界へと飛び立って行った。
     その鳥を追い真っ赤な顔のままのミツヤが凄いスピードで飛び出していく。その後をドラケンがミツヤの名前を呼びながらドタドタと追っていく。
     耳まで赤く染めたミツヤが外に飛び出す間際「夕飯は焼き鳥だこのヤロー!」と言ったのを聞いて、バジは「鳥ぃぃ!!頑張って逃げろよー!」と外に向かって声を掛けた。

     「てか何であんな焦ってんだろな。ケンチンとミツヤ」
     何事も無かったかのように再度朝飯を食べ始める面々がマイキーの言葉に大きく頷く。
     「あっ…もしかしたらなんですけど…バレて無いとでも思ってたんですかね?」
     チフユが少し驚いたような声でそう言えば、「え?夜な夜なセックスに勤しんでんのが?それともお互い好き好き向け合ってんのが?嘘だろ?どっちもあんなにバレバレなのに?」とカズトラが目を見開いてこれまた心底驚いたように声を張り上げた。
     「あれだろ。お互いにずーっと俺ばっか好きっての拗らせててそれが高い所から落ちて頭打って2人でガチって噛み合ったんじゃねーんか?なんか前にそーゆう動物の番の話聞いた事あるわ」
     頭がいいのか悪いのかわからないが何となく腑に落ちるバジの言葉に、そこいた誰もがなるほどなという顔をする。


     外からはオウムを追いかける2人のやり取りが聞こえてくる。いつもはしっかり者で冷静沈着なミツヤと体力と腕っぷしなら負け知らずの服船長はどうやらオウムに翻弄されているようだ。
     羽ばたくオウムに対して怒鳴ったり冷静に話し合おうとか言ってみたりしながら、結局なんだかんだと楽しそうな2人の声。
    確かに今までとはちょっと違う空気感がこそにはあった。

    「あー…まぁ…とりあえず、見守りましょ?」
     苦笑いするタケミッチにそこにいた全員が笑いながら頷き、パンを齧りスープを飲む。
     そしてバジの口からは「今夜焼き鳥じゃありませんよーに」と、珍しく淑やかな神への祈りの声が漏れた。

     
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