ハートはあなただけ「真経津さん、大丈夫ですか?」
扉を開けて開口一番、御手洗の動揺した声が獅子神邸に響く。
「あ、御手洗くん、わざわざ来てくれたんだ?」
呼ばれた当人はリビングの方からヒョイと顔を出して軽やかに手を振る。
真経津のスマートフォンに慌てた様子の御手洗から連絡が着たのはつい先程、獅子神が昏倒したのを受けて村雨が意識を確認している時だった。
「梅野の代理で薬をお持ちしました、出来れば皆さん服薬して頂けると良いのですが」
「うーん、ボクらもう大丈夫だと思うけど」
「そうですか、もう効果が切れてお体に問題なければ服薬しなくても良いとは聞いていますが」
にこにこと愛想良く御手洗を手で招き、さっさと客間の方へと向かう真経津を追いながら御手洗は手にした茶封筒を確認する。その中にはいまいち得体のしれない粉薬が入っている。
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