「ほら、ブレット、カメラ見て。いくよ?スリー、ツー、ワン……ハッピーバースデー!」
日付が変わった瞬間に、エッジがブレットの頬にキスをする。スマホで動画を撮りながら、だ。
ブレットの照れた顔も、エッジのリップ音も、しっかりと記録されてしまった。
「どうするんだ、そんなもの」
「思い出。あと皆に自慢する用」
「やめろ。誰にも見せるな」
ブレットはじとっとエッジを睨む。
へいへーいとエッジは特に残念そうでもなく、ふざけた返事をした。
「毎年同じ場所で……は難しいかもだけどさ。毎年同じようなキス動画撮りたいんだよね」
「毎年、ね。いつまでお前が俺の相手なんてしてるか分からないがな」
ブレットが嫌味のように言うと、エッジは
「そりゃこの先何年だって。リーダーがよぼよぼの爺ちゃんになっても、キスしてやるよ」
とちょっと頬を赤くして笑った。
「してやる、って上から目線な言い方だな」
「して欲しくないの?キス」
エッジはにまりと笑い、顔を近づけてくる。
「してくれるなら、こっちがいい」
ブレットも顔を寄せ、エッジの唇をぺろりと舐めた。
そのままキスしてもらって、ブレットはどこか他人事のように考える。
きっといつかエッジは自分に飽きる。ならば、“思い出”は形に残しておきたい。
「エッジ。さっきの動画、俺にもくれ」
「いーよ。後で送る」
ブレットの気持ちなど、エッジは知らない。
爺ちゃんになるまでなんて、無理だ。と、ブレットは思っている。
あと何回彼からバースデーを祝ってもらえるのか。
ブレットが勝手に切なくなっていると、エッジが急にブレットの頬を撫でてきた。
「また良くないこと考えてんだろ」
「……いや?」
「嘘つくなって。分かるよ。でもさ、俺と居る時は俺の事だけ考えてろよ」
言うなりエッジはまたキスを仕掛けてくる。
あたまが真っ白になるようなキスだ。
先のことは考えない。いまはエッジに溺れてもいい。
ブレットはそう自分に言い聞かせ、息を荒らげて必死にエッジのキスに応えた。