「ここ、良いな。雰囲気が良いし、料理の味も良かった」
シュミットが微笑みながら、コーヒーカップを静かに置いた。
「そうですね。また来たいですね」
エーリッヒは、自分が選んだレストランをシュミットが気に入ってくれたことが嬉しく、ほっとして笑い返す。
「………この後、どうするんだ」
シュミットは目を伏せて頬を少し赤くして、そう訊ねてきた。
まだ、帰りたくない。
そう言われているようで、エーリッヒはどきりとする。
「……イルミネーションが綺麗ですよ。遠回りして、歩いて帰りましょう」
エーリッヒの言葉に、シュミットはこくんと頷いた。
コーヒーを飲み干し、名残惜しくふたりはレストランを後にする。
外に出た途端、冷たい風が吹き付けてきて指先が一気にかじかんだ。
「寒っ……」
シュミットが呟く。
「やっぱり、タクシーで真っ直ぐ帰りますか?」
エーリッヒは彼を気遣って訊ねた。
シュミットはふるふる首を横に振り、やや低い位置からエーリッヒを見つめてきた。
「……まだ、ふたりでいたい」
にっこり、エーリッヒは笑う。
「ええ、僕もです。……皆で過ごす賑やかなクリスマスも悪くないですが、あなたが他の人と楽しそうにしているのを見ていると、妬いてしまいます」
「昼間のことか?」
「はい。パーティー、楽しそうでしたね、シュミット?」
「楽しかったよ。だが………夜のことを考えると、ドキドキして、そわそわして、落ち着けなかった」
「…………可愛い」
エーリッヒは、思わずシュミットの手を握る。
シュミットは一瞬ぴくんとして、それからエーリッヒの手を握り返してくれた。
「帰ったら、まだパーティー続いてますかね?」
歩き出しながら、エーリッヒは白い息と共に話す。
「続いてたら、また参加するか?」
「……シュミットが参加したいなら」
「私は………今夜はお前とふたりで過ごすって、決めている」
「じゃあ、ふたりで部屋でゆっくりしましょう」
エーリッヒは幸せいっぱいに、シュミットに笑いかけた。