お互い酒が飲める年齢になったから、初めてエーリッヒと二人で飲んだ。
次々と空くビアグラス、ワインボトル。
どのくらい飲んだやらもう分からない。
そう、俺は酔っている。
だから少し人恋しい気分になっても仕方がない。
「エーリッヒ」
向かいのエーリッヒの手にそっと手を重ね、上目遣いに甘えた声を出す。
「部屋で飲み直さないか」
エーリッヒは一瞬目をぱちくりとして、それからふにゃんと顔を崩した。
「良いですよ」
そうして俺たちは、俺の屋敷の私室にひきあげた。
我が家のワインセラーから適当なワインを数本、メイドに持って来させる。
エーリッヒはビール派なようだが、ワインも嫌いでは無いらしく、俺に付き合って良く飲んでくれた。
「あぁ…………流石に酔ったな。歩けない、ベッドに連れて行ってくれ、エーリッヒ」
ふぅ、と吐いた息はきっとワインの匂いがしたことだろう。
「仕方のないひとですね」
エーリッヒは笑って、しっかりした足取りで立ち上がって俺に肩を貸して立たせようとする。
「立てない、エーリッヒ」
こどものようにぐずってみせると、エーリッヒはまた笑って、俺の背中と膝裏に手を入れ、所謂姫抱きをしてくれた。
「落とさないでくれよ」
俺はエーリッヒの首に腕を巻き付け、エーリッヒの胸に頭を預ける。
「落としませんよ。あなたが怪我でもしたら大変だ」
そう言ってエーリッヒは俺を寝室の真ん中のベッドまで連れて行って、ふんわりと下ろしてくれた。
酔っ払いの俺は、ここで「おやすみなさい」とエーリッヒに去って欲しくなかった。
何せ人恋しい。口寂しい。
「エーリッヒ、お前は酔っていないのか?」
「まさか。辛うじて立っていますが、もう理性が今にも飛びそうですよ」
「…………じゃあお前も少し休んだ方がいいな」
「ええ。そうですよね。でも僕、楽しく飲んだ後だからひとりになるのは寂しくて。良かったら一緒に寝ても?」
「ああ。一緒に寝よう」
俺の言葉にエーリッヒは一瞬視線を泳がせ、それから深呼吸をして、ベッドに乗り上げて来た。
「おやすみのキスをしてくれ」
普段ならそんなこと、絶対言わない。
だって、俺たちは恋人じゃない、ただの幼なじみの親友だ。俺の気持ちがどうであれ。
だけど、酔っているから誰かに甘えたい気分なんだ。
エーリッヒは何も言わず、唇を合わせてきた。
それだけでは物足りなく、俺は口を薄く開く。
エーリッヒの舌が望み通りに入ってくる。
両肩に添えられたエーリッヒの手に力が込められ、ゆっくりとベッドに沈む俺。
降ってくるエーリッヒの視線と声。
「すみません………キスをしたら、なんだか興奮してしまいました。何せ、僕、酔ってますから」
「…………私も酔っているんだ。人肌が恋しくてならない」
「では、あなたが望むものを差し上げますよ」
エーリッヒはゆっくりと、見せつけるように着ているシャツを脱いでいく。
心臓が破裂しそうなほどばくばくしている。
酔っているんだ。まともな思考など出来ない。
エーリッヒがシャツをはらりと脱ぎ落としたのを見届け、俺はエーリッヒの手を掴み引き寄せ、舌足らずにねだる。
「私も脱がせてくれ」
「甘えん坊さん」
エーリッヒは丁寧な手つきで、ひとつずつ慎重に俺のシャツのボタンを外していく。
肌蹴た胸や腹にエーリッヒの視線を感じ、身体が熱くなる。
「シルクのような肌だ」
エーリッヒは俺の肌を撫でて、胸や腹にキスをして、それから俺の目を覗き込む。
「酔った勢い、では許されないことを、僕は今からあなたにしようとしています」
俺はにまりと笑ってみせる。
「好きにしていい。どうせ私は酔っている、明日にはすべて忘れているさ」
それからの事は………分かるだろう?
いやぁ、酒は恐ろしいものだな。