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    あい🐎

    🐎×トレ♀の短いお話置き場

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    あい🐎

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    ちょっと大人なトレーナー♀の姿にドキドキするオグリの話

    「トレーナー、今度の休みのことなんだが」

    先日のレースについてのミーティングのあと、オグリはそわそわと落ち着かない様子で鞄から一冊の雑誌を取り出した。雑誌の表紙には綺麗にデコレーションされたパンケーキ。オグリの言わんとすることに察しがついたトレーナーは、ニコリと笑った。

    「また行こっか、カフェ巡り」

    その言葉にオグリの表情がパッと明るくなる。たくさんのドッグイアがついたその雑誌をすぐさまテーブルの上に広げると、オグリは行きたいお店を一つずつトレーナーに指差してみせた。

    「ん?ここは?」

    パラパラとめくられる雑誌のページの中に、一際大きな赤丸でグリグリと何度も囲まれたお店の記事がトレーナーの目に止まった。一目でわかるふわふわとした卵がとても美味しいそうなオムライスは、何故か大きくバッテンが書き加えられていた。トレーナーがオグリの手を止め理由を尋ねると、途端にオグリの耳がしゅんと垂れた。

    「美味しそうなオムライスだから行きたいと思ったんだ。だがタマに止められた。ここは車じゃないと行けない場所だからだと」

    その言葉にトレーナーが紙面の端を確認すると、確かにそこには最寄駅の代わりに最寄インターが示された地図が載っていて、公共の交通機関を駆使してたどり着くには少々ハードルが高そうだった。

    「車出そうか?」

    その言葉を聞いた瞬間、ペタリと髪に引っ付いていたオグリの耳がピンと立って、左右にひょこひょこと数度揺れた。

    「あ、あるのか、車」
    「あるよ、家族のだけど」

    ちょっと待ってね、とトレーナーはスマホを取り出した。トレーナー寮に所属しているものの実家はそう遠くないからとオグリに説明しつつ、トレーナーは画面を操作する。すぐに通知音が鳴り響いて、トレーナーは

    「いいよって」

    とオグリに笑ってみせた。あまりのフットワークの軽さに驚きつつも、オグリは深々と頭を下げた。

    「ありがとう、トレーナー。よろしく頼む」

    その姿に固いなぁとトレーナーは思わず吹き出した。


    そうしてやってきた約束の休日。オグリはトレセン学園の門前で待ち合わせたトレーナーを今か今かと待っていた。車で動けるからたくさんカフェ巡りができるよとトレーナーに促され、あれから行きたいお店をたくさんピックアップした。前の日は楽しみでなかなか寝付けなかったし、今日の朝は嬉しくてつい朝ご飯を食べすぎてしまった。

    「オグリ、お待たせ」

    やがてオグリの前に一台の車が止まった。パワーウィンドウが下がって顔を覗かせたトレーナーが、おはようとオグリに微笑んだ。オグリもぺこりと頭を下げると、そそくさと助手席に乗り込んだ。

    車内は芳香剤の匂いだろうか、微かに甘い香りが漂っていた。オグリがシートベルトを締めたのを確認して、トレーナーはゆっくりと車を走らせる。

    「行きたいお店決めた?最初はあのオムライスのお店でいいかな?」
    「ああ、問題ない」

    久しぶりののんびりとした休日に、トレーナーは上機嫌だった。車内ではオグリがピックアップしたお店を確認したり、かと思えば次のレースの話をしてみたり、それから自分の家族の話を聞かせてみたり。普段オグリの聞き役に回ることが多いトレーナーが自分の話をするのは珍しいことで、オグリはそんなトレーナーの横顔を無意識に見つめた。なんとなく、胸の内がソワソワとして落ち着かない。その視線に気づいたトレーナーがチラリとオグリの方を見やった。

    「あ、ごめん、喋りすぎ?」
    「いや、そうじゃない」
    「オグリ、緊張してる?人の車に乗るの苦手?」

    オグリは黙って首を横に振った。せわしなく動く尻尾が座面シートにパタパタと音を立てる。

    「これは緊張なのか?少しドキドキしている」
    「ドキドキ?」

    オグリは胸の前のシートベルトを両手でキュッと握りしめた。

    「トレーナーが、知らない大人の人みたいだから…」

    楽しそうに笑いながらハンドルを握るトレーナーの横顔は、オグリが知らないトレーナーの横顔だった。もう一度トレーナーを見ると、オグリを見ていたトレーナーと視線と視線がぶつかって、オグリは気まずそうに目を逸らした。その様子にトレーナーはうーんと何かを考える素振りを見せる。

    「それは…緊張じゃないかもね」
    「そ、そうなのか?トレーナーにはわかるのか?」

    少し赤い頬に気づきもしないでいるオグリの様子に、トレーナーはふふっと笑みをこぼした。

    「オグリももう少し大人になればわかるよ」

    トレーナーはそれきり何も言わなかった。オグリもそれ以上は何故だか恥ずかしくて聞けなかった。ただ、あんなに楽しみにしていたはずのオムライスなのに、今はもう少しこのままトレーナーの隣にいたいと、揺れる車内でオグリはそんなことをぼんやりと考えていた。
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