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    moon_tkhal

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    moon_tkhal

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    MintCandyアイドル軸のrockが事務所に入るときの話
    これ↓の続き
    https://poipiku.com/383647/6896970.html
    顔合わせと結成まで行きたかった気もするけど一旦ここまでで

    #MintCandytrio

    「わざわざこちらに足を運んでくださり感謝します、PicoさんにBoyFriendさん」

    Picoに言われるがままに着いていった先はでっかい芸能事務所だとかなんとかで、受付に通してもらった部屋で出迎えてくれた女の人がそうぺこりと頭を下げた。
    未だにいまいち話が見えず、つられて思わず姿勢を正すも落ち着かなくてムズムズしてしまう。
    「そういう堅苦しいのはいい、俺もコイツもそういうの慣れてないんだ」
    「形式上のものよ、あまり気にしないで。BFさん、初めまして。私はここ、C space芸能プロダクションでプロデューサーをしているFortranと申します」
    スッと名刺を差し出され思わず上ずった返事でそれを受け取る。
    名刺交換のマナーなんてなんてわかんないし、受け取った名刺をどうすればいいのかと手に持ったまま口を開く。
    「あの、俺Picoに言われてここに来たんで…スカウトがどうとかっていまいち話が見えないんですけど…」
    「急に呼びつけてしまってごめんなさい。本当はBFさんのどこかのライブでスカウトに声をかけようと思っていたのだけれどタイミングが合わなくて。それで彼に紹介してもらったのよ」
    なるほど、それでPico経由でか。
    Picoもそういうことならメッセージの一つくらい送ってくれてもいいのに、とも思うが別れを切り出した側にそれを求めるのも酷だなと思い直す。むしろまた直接話すきっかけができてラッキーってもんだ、うん。
    「スカウトといっても返事はすぐに、なんて言わないから。あまり緊張しないで、軽い見学と思って気楽にしてちょうだい」
    案内しながら説明するわ、と先導する彼女にPicoと一緒に着いていく。
    対面で長々と難しい話をされるわけじゃなくてほっとした。正直緊張するし、かといって顔をよけて目線を下に落とすとでっかいおっぱいをまじまじ見てるみたいになるし……間違いなく目が泳ぐ。
    それにしても案内ってどこにだ?芸能事務所って言っても、もっと地味なイメージがあったけど…ここはやたら大きな建物で、彼女が言うには事務室や会議室の他にも色々と設備があるんだとか。
    「うちは音楽系に力を入れているからその辺りの設備は一通り揃ってるわ。ダンスのレッスン室や、練習用と収録用のスタジオもね」
    運良く空いてるからと通されたスタジオ室は、機材のあまりの充実っぷりにキラキラとエフェクトがかかっているようにも見えるくらいだった。
    「すっご…アンプもスピーカーもめっちゃいいやつ…防音もしっかりしてる…」
    「うちのスタジオは使用申請さえしてくれれば自由に使っていいわよ。もちろん他の人も使うから無制限にとはいかないけれど」
    「自由!?スタジオ代は!?」
    「その辺りの使用料も契約に入れてるから心配しないでいいわ。個人で借りるよりも費用が浮くわよ」
    このスタジオを使い放題…それだけでもう契約しようという気持ちにとてつもなく傾いてる。
    横にいるPicoもかなりぐらついているようで難しい顔で考え込んでいた。
    「見学のためにここを借りるようには申請しておいたから、せっかくだから二人で試しに使ってみて。私は契約内容の書類を用意してくるから、一時間後にまた迎えに来るわ」
    黙り込んだ俺たちが悩んでいるのを察してか彼女がそう話を切り上げた。
    パタン、と退出のドアが閉まる音を最後にシン…と沈黙が流れる。防音もしっかりしてるな、なんてことを考えていたらPicoが口を開いた。
    「話がうますぎて怖いな…」
    「ちょっとわかる…実はめちゃくちゃ安い賃金でこき使われる…とか?」
    「それかフリーランスとしての個人契約でいつでも尻尾切りできるように…とかか?まあ内容見てみないことには、だけどな」
    フゥと一つため息をついたPicoに、顔にこそ出ないけどそれなりに緊張はしていたのだとわかる。きっと先にスカウトされていたPicoとしても想定外の規模だったんだろう。
    「それよりもさ、せっかくだしちょっと合わせようぜ!一時間しかないんだから使わないともったいないだろ!」
    自由に使っていいと言われたんだから使わないと損だ。それに使用感も確かめたら判断材料にできるし、といそいそと準備を始める。
    「…それもそうだな」
    「へへっ、Picoと演奏すんのは久しぶりだし楽しみだな」
    「そういうところは変わんないな、前ほどうまく合わせられる保証はないぞ?」
    「大丈夫!むしろPicoの今のベースがどんなのか俺は聞いてみたいし」
    準備をしながらのPicoとの会話はやはり楽しく、別れたからと言ってギクシャクするようなものでもなくて安心した。俺としてはまだ好きな気持ちはあるけど…今はそれよりも目の前のギターの音をPicoのベースと掛け合わせられることが嬉しかった。


    「集中しているところで悪いけど、そろそろ時間よ。片付けたら応接室に案内するわ」
    いつの間にか部屋に入ってきていた彼女に声をかけられてハッとする。夢中になってたら一時間なんてあっという間で、あわててギターを片付けてケースにしまう。
    「すみません、ギリギリまで使わせてもらっちゃって…」
    「いいのよ、お気に召したならなにより。じゃあ行きましょうか」
    案内された広い応接室のふかふかのソファーに座って再びかしこまった雰囲気に縮こまる。
    「これが契約内容の書類よ。Picoさんにも渡しておくわね、今日は付き添いって聞いていたけれどこれのためにもう一度来てもらうのも面倒でしょう?」
    自分はただの付き添いだと言わんばかりの態度をずっととっていたPicoにも書類を渡し、彼女は向かいのソファーに座った。
    わからないところがあったら説明すると言われ、それでも黙々と確認するPicoに続いて俺も内容を読み進める。
    (雇用……賃金…基本給…はちょっと低め?でもこれくらいならなんとか…スタジオ代が浮くなら全然あり…んで家賃と食費とガス水道代がだいたい……だから、えーっと……)
    うん、イケる。個人事業主との業務委託じゃなくて雇用契約ってことらしいからある程度事務所の方針には従うって縛りはあるみたいだけど……
    「あのさ、この方針ってやつですけど…仮に契約したとして俺はギターをちゃんと弾かせてもらえるんですよね?」
    「もちろんよ、そもそも貴方のギターの腕を見込んでスカウトしたんだもの。それを取り上げるなんて真似はしないわ」
    「よかった…」
    「ただ、場合によっては他の仕事もしてもらうことにはなるわよ?当然貴方の同意はとるけど、私のプロデュースの方針としてはメディア露出もかなり想定しているから…その辺りの了承はして欲しいわね」
    なるほど……つまりテレビとか雑誌にも多く出る可能性があるってことらしい。もともと雑誌のインタビュー受けることはあったし、人前に出ることで緊張するなんてこともそうない方だ。カメラの前ではまた違うってこともあるかもしれないけど、そっちも多分平気だ。
    内容に目を通していたPicoからも特に気になる部分はないみたいで黙っている。もしかしてこれって結構好条件なのでは…?
    「俺……やります!」
    「おい、BF…」
    「あら、一度持ち帰ってから検討してもいいのよ?」
    「大丈夫す!それに俺、ギターが弾けるとこなら大歓迎なんで!!」
    Picoが諦めたようにため息をつく。ギターが弾けるなら、というのはPicoが一番よく知ってるからだろう。
    「なら、契約成立ね。貴方はどうする?」
    「俺はパス、もう少し吟味したいしな」
    「もちろんよ、急がないからたっぷり考えて」
    くすりと笑う彼女が差し出した契約書に普段滅多に書かない本名のサインをして、印鑑のかわりに拇印を押す。
    「うん…ありがとうBFさん。貴方が活躍できるよう全力でサポートするわ」
    彼女は確認した契約書をファイルにしまうと、玄関まで見送ると立ち上がった。
    玄関のドアをくぐると外はすっかり暗くなっていて、少しだけ肌寒い。
    「じゃあね二人とも、BFさんのお仕事の話はまた今度予定を伝えるからそのときに……帰りのタクシーは必要かしら?」
    「電車もあるし大丈夫です!な、Pico!」
    「ああ、男二人だしそこまで気使うもんでもないだろ」
    「わかったわ、それじゃあ気をつけて」
    ひらひらと手を振って見送ってくれる彼女に手を振り返して駅に向かう。
    大通りまではまだ少し距離があり歩いているのは俺たちだけだった。
    「なんかすごかったな、建物もでっかかったし」
    「だな、ただお前がほぼ即決なのには驚いたが…まあ俺としては安心だよ。お前が変なのに捕まる前に保護施設に預けられて」
    「なにその犬猫みたいな扱い……別に俺だってあの路上ライブでスカウトしてきた奴とか本気にしてねーし!」
    「嬉しそうに名刺を見せてきたくせによく言うな」
    「話のネタにしたかっただけだって!」
    「はいはい、わかってるよ」
    そんな他愛もない話をしていたらすぐに駅に着き、人通りも増え雑踏音がひしめく。
    少しの間、前の頃に戻ったようで別れるのは名残惜しかった。
    「じゃあな、頑張れよBF」
    「ん、またなPico」
    改札をくぐったところで手を振り、別れる。ホームに続く階段を上るPicoの姿が見えなくなったところでひとつ伸びをした。
    「ん~~っ、うっし!頑張るか!!」
    どのみちギターを弾きつづけているならPicoとは関わる機会はいくらでもある。だったら今は目の前に現れた新しい挑戦を楽しみにしていよう。
    肩からずれたギターを背負い直して俺はホームへの階段を駆け上がった。



    「…もしもし?Byte、今時間大丈夫?……ええ、貴方の企画でちょっと加えたい人がいるの。ええ、ええ、………きっと貴方も気に入るわ。近いうちに顔合わせする時間を作りましょう。……ふふ、そうよ、本格的にプロデュース出来るのがとても楽しみだわ。それじゃあね」


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