「……っていうことがあったんです」
なんであんなことを海はしてきたのか、どうしても理解できなくて、樫尾は数日の煩悶の末、経験豊富な先達の叡智に頼るしかなかった。
なるほどね、と言いながら、空気を読んで蔵内も橘高も席を外したふたりきりの作戦室に、王子はとっときだよとほほ笑みながら、彼の瞳のような鮮やかなブルーの花の混じった茶葉の紅茶の香りをくゆらせてくれた。
交際が始まってから、自由気ままで奔放な南沢だったけれど、恋人として自分が嫌がることは絶対にしなかったのに。
「そう、それはびっくりしちゃったね」
そんな相談を受けて、果たして麗しの隊長は、まっすぐに向けてくる樫尾の視線を、上等なシルクのようにふんわりと受け止めて、少しだけ思案顔にはなったものの、慈愛のまなざしを返してきた。
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