Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    palco_WT

    @tsunapal

    ぱるこさんだよー
    Pixiv https://www.pixiv.net/users/3373730/novels
    お題箱 https://odaibako.net/u/palco87

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🎵 🍆 🍇 💘
    POIPOI 76

    palco_WT

    ☆quiet follow

    樫尾総受アンソロの海×樫、えちおね感ある王子とショタかわいい海のやりとりが割と楽しかったけど、冗長になるので手直しした結果まるっと削ったパートになります❤

    #ワートリ
    wartimeStory
    #海樫
    hashimashi

    「……っていうことがあったんです」
     なんであんなことを海はしてきたのか、どうしても理解できなくて、樫尾は数日の煩悶の末、経験豊富な先達の叡智に頼るしかなかった。
     なるほどね、と言いながら、空気を読んで蔵内も橘高も席を外したふたりきりの作戦室に、王子はとっときだよとほほ笑みながら、彼の瞳のような鮮やかなブルーの花の混じった茶葉の紅茶の香りをくゆらせてくれた。
     交際が始まってから、自由気ままで奔放な南沢だったけれど、恋人として自分が嫌がることは絶対にしなかったのに。
    「そう、それはびっくりしちゃったね」
     そんな相談を受けて、果たして麗しの隊長は、まっすぐに向けてくる樫尾の視線を、上等なシルクのようにふんわりと受け止めて、少しだけ思案顔にはなったものの、慈愛のまなざしを返してきた。
    「ところで、カシオはそんな海くんを嫌いになった?」
    「ま、まさか! でも」
    「でも?」
    「あの日から連絡が来ないんです、南沢先輩から」
    「きみからは? したのに返事がないのかい?」
    「いえ……おれからはとても、できるもんじゃない気がして。せっかく補習が終わったところを駆けつけていただいたのに、ちゃんと話もせずに逃げてしまって……」
     合わせる顔がありません、と膝を見つめるように俯いてしまう。
    「やれやれ、どっちもどっちだ」
    「……むしろ、おれが先輩に呆れられたりしたんでしょうか。おれが、あんまり子供だから」
     あんなキス知らなかった。キャンディめいた甘い幸福を分け合う優しい接吻ではなく、無理強いに押し入って樫尾を蹂躙しようとしながらも、どこか焦れるようなもどかしさがそこにはあって。
     あのまま応えてしまったら、何かが変わってしまいそうだった。
    「ううん……そうだね。ぼくから答えらしきものを与えることはできなくもないけど、本当の正解はきみの中にしかないからね。自分で導かないと」
    「おれの、中に」
    「そう。正確には、きみと海くんの間に、かな」
     おれと先輩の間、と樫尾は、彼のことを想うと逸る胸にそっと掌を置いた。
     そのいとけなさすら漂わせた仕草に、王子は微笑みながら、されど容赦ない一言を付け加えた。
    「それから、カシオ、明日の昼にあるランク戦――対戦相手は弓場隊と生駒隊だから」
    「……!」
     自分がブレードトリガーの扱いにおいては王子に、弾トリガーの運用においては蔵内にまだまだ及ばない自覚はある。1DAYトーナメントに参加したのだって、少しでも実戦を積み重ねたい。彼らの足は引っ張りたくないという気持もあったのだ。
     そして、マスタークラスにすら届いたことがある、あの人にも互したい、とも。
     だけど、こんな気持のまま、彼と「敵」として向き合った時ちゃんと働けるのだろうか。
    「あの、王子先輩、おれ……」
    「そろそろ生駒隊は任務から戻るんじゃないかな」
    「!」
    「ぼくは隊長だもの、よその部隊のスケジュールくらいおおよそ把握してるよ」
     さて、と王子は樫尾の額に指先を押し当てた。
    「賢くて果敢な、ぼくらの自慢のカシオには孫氏の言葉のひとつを思い出してもらえるかな。『兵は拙速を聞くも』はい、続き」
    「……『未だ功の久しきをみざる』ですか」
    「さすが、生徒会長。つまりは?」
     優美な微笑は、だが、B級上位部隊を率いる長の自覚と矜持で樫尾を鼓舞するものだった。
    「兵は拙速を尊ぶ、です」
    「よろしい。正解のご褒美に」
     と王子は携帯端末を手に取って、そのままなめらかに通話をつないだようだった。
    「ああ、もしもし、みずかみんぐ。今どこ? 本部に戻る途中? そこに海くんはいる? そう、だったらそのまま連行して」
    「……王子先輩?」
    「みずかみんぐと海くん、もうすぐ連絡通路でこっちに来るって。東通用口に五分もすれば来るんじゃないかな。さ、きみの心を奪ったままの不埒者を成敗してきたまえ!」
    「樫尾、了解です」
     嫣然と笑みを深めて高らかに告げる隊長の声に従って、海は作戦室を駆け出した。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    palco_WT

    PROGRESS冬コミ新刊の水王の、水上の過去の捏造設定こんな感じ。
    まあそれでも入会金十万円+月一万余出してくれるんだからありがてえよな……(ワが2013年設定だとたぶんんぐが小学生で奨励会にあがったとしてギリギリこの制度になってるはず。その前はまとめて払ってダメだったら返金されるシステム)
    実際、活躍してるプロ棋士のご両親、弁護士だったり両親ともに大学教授だったり老舗の板前だったりするもんね……
    「ん、これ、天然モンやで」
     黄昏を溶かしこんだような色合いの、ふさふさした髪の毛の先を引っ張りながら告げる。
     A5サイズのその雑誌の、カラーページには長机に並べられた将棋盤を前に、誇らしげに、或いは照れくさそうに賞状を掲げた小学生らしき年頃の少年少女が何人か映っていた。第〇〇回ブルースター杯小学生名人戦、とアオリの文字も晴れやかな特集の、最後の写真には丸めた賞状らしき紙とトロフィーを抱えた三白眼気味の、ひょろりと背の高い男の子と、優勝:みずかみさとしくん(大阪府代表/唐綿小学校・五年生)との注釈があった。
    「でも黒いやん、こん時」と生駒が指摘する。
     彼の言葉通り、もっさりとボリュームたっぷりの髪の毛は今のような赤毛ではなく、この国にあってはまずまずありがちな黒い色をしていた。
    1983