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    M2uzi

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    万紬です。
    大学生×お花屋兼カフェの店員さんのパロディとなっています。

    学生さんと店員のお兄さん 大学の先輩である一成が、万里の趣味がカフェ巡りと知ってか、とある花屋に併設しているカフェを勧めてきた。花屋自体にはあまり興味は湧かないが、まだ開拓をしたことがないカフェ自体には興味が湧いた。一成曰く常連さんが多く、店内は落ち着いた雰囲気で、コーヒーの味もかなり良いと前評判がありタイミングを見計らって行ってみるか、と心の底で期待を膨らませていた。
     とある日の昼下がり、その日の万里は午後から講義が始まる予定だった。講義室に着くなり同級生から声を掛けられた。
    「万里ー今日のコマ休講になったらしいわ」
    「…は?マジ?」
     耳を疑ったが事実らしく、同じコマの学生らが帰宅やら資料室で自習をする為の準備やらをしているのが見えた。折角かったるい授業を真面目に受ける為に家を出てきたのに、と脱力しかけてしまったがふと思いついたことがあった。
    「この後カラオケでも行かね?」
    と同級生に誘われたが「行きたいとこあっから今回はやめとく」と断り、荷物を台に下ろす間も無く大学を出た。
     天美大学から徒歩10分弱、商店街の端にある花屋に併設しているカフェ。外に出たのにそのまま蜻蛉返りする気にはなれず、一成に勧められたカフェに行ってコーヒーでも飲んでから帰ろうとそう思いついた。店の前まで着くと、ドアプレートに"open"という文字と共に、緩くてお世辞にも上手いとは言い難い胴の長い犬の絵が描いてあった。キィと音を立て、少し重たいドアを開けると目の前の花屋の匂いと奥からほのかに漂うコーヒーの匂いに包まれた。花屋の方には誰も居ない様子だったので奥のカフェスペースへと足を運んだ。そちらにも花屋らしく植物が多く飾られていた。椅子やテーブルなどはもちろん、ソファやクッションなども緑とマッチしていて居心地が良さそうな空間を作り出していた。客席にはカウンター席に1人しかおらず空いているのが目に見えてわかった。とりあえず店員を探そうと辺りを見回すとキッチンに店員がいるのが見えた。そこに向かって万里は声を掛けた。
    「すんません。1人なんすけど大丈夫ですか?」
    そうすると「はぁい」とキッチンから声が返ってきて、数秒してから店員の男が客席へと出てきた。
    「こんにちは。お好きなお席へどうぞ」
    と言いメニュー表とおしぼりとお冷やを手際良く用意をし、万里が座った窓際の席へと持ってきた。
    「ご注文がお決まりになりましたらお声かけください」
    店員のお兄さんはそう微笑んで、誰も座っていないテーブルをダスターとアルコールで拭き始めた。その店員は、見た目からすると自分と同じくらいか1〜2歳ほど歳上ぐらいかと見積もっていたが、なんとも落ち着いた雰囲気を纏っていた。黒髪で素朴な雰囲気で自分とは真逆のタイプだなと分析などしてみた。
    そんな事を考えつつ、早足で大学を出た為か喉が渇いてしまっていた為、水の入ったグラスに口を付け、早く注文を決めようとメニュー表に目を通した。
     万里は初めて来るカフェでは決まってブレンドのコーヒーを頼むと決めている。理由は単純で味の良し悪しやその店の好みを見る為だ。ついでに小腹が空いていたので店長のオススメと太鼓判を押してあるロコモコ丼を頼むことに決めた。早速店員のお兄さんに声を掛けた。
    「注文いいっすか?」
    「はい。お伺い致します」
    「ブレンド一つとロコモコ丼お願いします」
    「かしこまりました。待ち時間、良ければ今人も少ないですし、花屋の方にいていただいても大丈夫ですからね。」
    そう言ってオーダー表にペンを走らせてキッチンへと進んでいった。万里は、花屋の方に一度目を向けそのままスマホを取り出そうと思ったが、折角勧められたので少しだけ見に行こうかと腰を上げ足を運んだ。
     花屋なんて中々入らないのでどう見て良いか分からずにいたが、取り敢えず並んでいる花と値札に書いてある名前を見比べていく事にした。なんとなく見たことがあるけど名前は初めて知る"センセーショナルファンタジー"に"ピンポンマム"に"パンパスグラス"、名前は知ってるが見た目はよく知らなかった"ダリア"に"リンドウ"。流石に名前を見なくてもわかる花"コスモス"に"薔薇"。まだ半袖で過ごせそうな気候ではあるが、今は秋なんだなと季節の花で実感させられた。値札を見てふと思ったが、メニュー表も値札もデザイン性が高いのに対して、ドアプレートのイラストだけ謎のセンスだったなと思い出す。デザイナーが違うのだろうと結論付けた。
     その後、元いた席に戻り、スマホを取り出しSNSの更新を確認していると、良い香りが足音と共に近づいて来た。
    「お待たせ致しました。ブレンドとロコモコ丼です。コーヒーのミルクやシュガーはこちらをご利用ください」
     そう言って、店員のお兄さんは湯気がふわふわと出ているコーヒーと、花屋らしく可愛いエディブルフラワーが丁寧に盛り付けられているロコモコ丼を優しく万里の前に置いた。
    「ロコモコ丼の上のお花は食べられるお花です。ごゆっくりどうぞ」
    と言いながら会釈をして、丁寧な文字で書かれた伝票を机に置いて花屋の方に向かっていった。自分より以前に入っていたサラリーマンのような客が丁度帰る所だったらしく、談笑を交えつつ店員のお兄さんが花束を手際よく作っているのが見えた。常連が多いと言う前情報は確かなのだなと万里は思った。
     コーヒーは初めての店ではまず、一口目はブラックで飲んで、それから調味するというルールを万里は自分の中で決めており、出されたままのコーヒーに口を付けた。酸味が少なくどちらかというと苦味が強めであるが、さっぱりとしたコクがあり、万人受けしそうな良い味わいであった。シュガーはグラニュー糖とコーヒーシュガーの粒が入った瓶が一つずつ置かれていて、好みで調整できるようになっていた。ミルクも植物性のものではなく動物性のものを提供してる点もポイントが高いなと思いつつ、スプーン一杯のコーヒーシュガーとミルクを入れた。コーヒーは白い渦を巻いて優しい色に変化していき、そのまま一口飲むと先ほどとはまた別の優しく舌を包み込むような味わいに変化した。
     コーヒーは合格点だなと思いながら、ロコモコ丼に手を付けることにした。ロコモコ丼は木製のボウルとスプーンで用意されており、柔らかさを感じられた。店内のライトのお陰でキラキラと輝くデミグラスソースと綺麗なオレンジ色の目玉焼きは勿論だが、そこに添えられている水菜とアボカド、トマトがイキイキとした色をしていて食欲を唆る。早速スプーンで黄身を破ると、つぷっと良い音がしたように感じた。それと同時にトロリと中身が流れ出し、デミグラスソースに混ざり合う。ソースがたっぷり乗ったハンバーグを少しスプーンで取り、下のライスと共に口に運ぶ。その後、すぐにもう一匙を口に運んでしまう程にソースの味と黄身の相性が良かった。ハンバーグは肉肉しいがくどくなく、目玉焼きは焼き加減が絶妙であった。サラダも鮮度が良く、水々しい。これもまたデミグラスソースとの相性がすごく良かった。
     久しぶりに大当たりの店だと思い心の中で小さくガッツポーズをしていると、小さなプリンがコトっとテーブルに置かれた。驚いていると店員のお兄さんがこう話を切り出した。
    「実はこれ、開発中の新メニューでして、サービスなので甘いの苦手とかじゃなければ、召し上がってください。」
    「もらって良いんすか?」
    「ロコモコ丼、すごく美味しそうに召し上がってくれてて、なんだか俺も嬉しくなっちゃって」
     と若干照れが入っているような笑顔で勧めてくれた。そんなにがっついて食べてたのかと思い知らされ、気持ちを落ち着けようと咳払いをした。プリンは店員のお兄さんが好意でくれた物なので、ロコモコ丼を食べた後にありがたく頂くことにした。
     プリンは濃厚な黄金色をしていた。スプーンで掬ってみると硬めのプリンであることがすぐにわかった。カラメルソースと共に口に運ぶと、ほろ苦い香りがふわっと口いっぱいに広がった。どうやらソースにコーヒーを少し混ぜているらしい。プリン生地も卵の味が濃厚でありソースと合わさると大人な味わいであった。すぐにでも商品化出来そうな完成度で驚いた。
     食事を終えて、少し冷えたコーヒーを啜っていると、
    「お皿お下げしますね」
     とボウルとプリンカップを片付けにお兄さんがテーブル付近に来た。
    「あの、プリンは勿論美味かったっすけど、ここのブレンドもロコモコ丼もめっちゃ良かったです」
     万里はそう店員に伝えると一瞬驚いた様子ではいたが、すぐに嬉しそうに
    「召し上がっていただいてありがとうございます」
     と受け応えてくれた。
     残ったコーヒーをゆっくりと味わいながらスマホのゲームを叩いていたら、外の影が店に来た頃より長くなっているのが見え、そろそろ店を出ようと思い荷物をまとめ、伝票を片手にレジへと向かった。それに店員のお兄さんがすぐさま気づいてこちらに向かって来た。
    「お会計ですね。」
     とカタカタと電卓を叩いて金額を提示してくれたので、カードで会計を済ませた。そうするとお兄さんがレシートと共に手書きのポイントカードに犬の顔のスタンプをポンポンポンと3つ押して渡してくれた。
    「お兄さん、ここに来るの初めてですよね?うちのお店はポイントカードを作ってて、スタンプが貯まると、ちょっとした景品や割引チケットと交換できるので良ければ使ってください」
     と言い、カードを渡してくれた。渡された次の瞬間、脊髄反射のように
    「また来ます」
     と答えてしまった。言った後に柄にもない事何言ってんだ、今のはちょっとダセェなどと思ってしまったが、お兄さんはニッコリと笑って
    「また来てくださるの待ってますね」
     と優しく答えてくれた。
     その笑顔を見て万里は、また近いうちにここに来ようかと思ってしまった。
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