いつまでも痛くてうるさくて火を灯すのと、アルミサッシが開けられたのはほとんど同時だった。
キン、と軽い音を立ててライターの蓋を閉めるのと、背にやわらかな髪が触れるのも。
「起こしちゃった?」
「ううん、起きた……」
たばこどうぞ、とまだ眠そうな声がちいさく聞こえてくる。
煙いよと返すも、いい、とそれだけ。
じゃあ遠慮なく、とあらためて火をつけると、すぐに細くたなびいてゆく煙。
無言で背中にはりついたまま、藤丸は動こうとはしなかった。
目覚めてすぐにその寝顔は堪能させてもらったものだが、開いた瞳はまだ見られていない。
振り向いてしまってもよかったが、藤丸がしたいようにさせておく方がいいだろう。
もしかしたら顔を見られたくはないのかも知れないし、と考えていたところに、ぽつりと声が届く。
1922