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    kan_00

    @kan_00

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    kan_00

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    7/13 星に願いをday2
    はじめからちゃんと、君のこと(はじぐだ♂プチ!)
    無配ペーパー②
    バディコ現パロはじぐだ♂、桜を見る二人の話

    #一ぐだ
    onesOwnEffort

    続き、ようやく からあげと卵焼き、しっかりと味が染みこんだ飾り切りの入った椎茸が筑前煮のなかで存在を主張している。
     オーソドックスな弁当とともに桜を愛で、春を寿ぐ喧騒を聞きながら缶ビールで乾杯をする。そんなささやかな花見を夢見ていたのに、弁当のために準備もしていたのに、その夢は叶わなかった。
    「……いやぁ、天気ばかりはどうしようもないからねぇ」
     藤丸宅にあがりこんだ斎藤はカーテンの隙間から外を眺めると苦笑混じりにつぶやいた。
     この日なら、と斎藤のスケジュールにあわせて予定を組んでいたのに、よりによってピンポイントで桜雨となってしまったのだ。それも結構な降り方で。
     傘をさして出歩くことも考えたがそれすら躊躇うほどの雨足で、もう観念して作るはずだった弁当のメニューの一部をただ家で食べることにした。
    「でも今年は多少ながめられたんじゃない? 綺麗に咲いてたでしょ」
     ベランダから見える川沿いの並木道、そこが桜の名所であると教えてくれたのは昨年の春を少し過ぎた頃だった。
     今年は朝カーテンを開けるたびに開花状況を確認しつつ、今日という日を指折り数えて待っていた。桜を楽しめはしたけれど、それでも。
    「……それはそう、でしたけど」
     ことりと並べ終わった皿からはゆったりと湯気がのぼっている。こうしてできた料理をあたたかいうちに食べられるのはそれはそれで贅沢なのはわかっているのだが。
     納得いかない、というようにまだむくれている藤丸に斎藤はまあまあ、となだめにかかるが効果は薄そうだ。
    「今年は残念だったけどさ、来年行けばいいじゃない。あそことはちがう桜スポット探してもいいし」
    「……来年も、いいの?」
    「もちろん。一年後って期間はあいちゃうけど必ず咲いてくれるから待ちましょうや」
     ね、と念押しするとようやく藤丸の口角はあがってくれた。どうやら機嫌は直ったようで、心中でほっと胸をなでおろすと、斎藤は箸を手に取った。
     いただきます、にはいどうぞ、と言葉が続く。
     まだまだ雨は降り続きそうだが、もし止んでくれたなら、散歩に出るのもいいかもしれない。舌鼓を打ちながら、斎藤はそう思った。
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    ねこの

    PROGRESSキーボードが来るまでストップノウム・カルデアは閉鎖された空間だ。外気は通らず、日光など取り入れられる道理も無い。施設内に疑似日光を再現できる部屋は有るが、あくまで疑似だ。シミュレーターなんかもそうだが、どれだけ限り無く本物に近くとも欺瞞に過ぎない。
     漂白された地球が一体どうなっているのかを斎藤は知らなかった。聞いてもきっと分からないだろう。記憶にあるよりもずっと技術の進んだ施設は便利だが味気ない。昼も夜も同じよう室内を照らす照明も、人間に害を及ぼさぬよう常に働く空気清浄機もよくできていると思うものの、揺らめく火を眺めたくなる。或いは様々なものが混じった土のにおいを嗅ぎたくなった。思えばシミュレーターはこの辺りが足りない気がする。エネミーを斬ったとて血や臓物の臭いが鼻の奥にこびりつく感触は無い。
     レイシフトに手を上げたのもそういう理由だ。今回は多少の揺らぎが観測された土地の調査とあって緊張感が薄い。ベースキャンプを作り、ここを拠点に数日間の探索を行う。野営には慣れているのか、随分と手際が良かった。
     頭上には晴れ晴れとした晴天が広がっている。放牧地なのか草が青々と生い茂り、寝転べば心地良さそうだ。敵性生物の気配 9055