. 俺は俺がおかしくなっていることに気が付いていたし、それは場地さんも同じだった。
場地さんが誕生日のその日に死の淵から生還したこと、そのあと当然のように彼が東京卍會から抜けたこと、俺の脱退は誰にも認められなかったこと。原因を探ればキリがなく、おそらくそれらすべてだった。けれど、別に原因がなんだったかなんて大して重要ではない。何でもない場地さんであっても俺が場地さんを好きでいることができた、それだけわかっていれば十分じゃないだろうか。
献身
場地さん、と名を呼ぶと、いつもの通り気だるげな返事が返ってくる。薄い襖を少しだけ開けて中の様子を覗き見た。部屋の中に場地さんの姿はない。
するりと戸を開けて、押し入れに近づく。押し入れの中で横になっている場地さんは俺をちら、と見上げた。
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