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    hariyama_jigoku

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    hariyama_jigoku

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    伏五小説。途中&習作。伏五っぽくなってきた気がする

    ##呪術

    3マス進んで2マス戻るような話。2人の気も知らないで、と脳内で毒づいても、言うつもりなんてないくせに、と嘲笑うのも自分自身である。
    「じゃあ俺、行きますね」
     それだけ告げて、五条の顔も見ずに背を向けた。少しの沈黙の後、背後から投げ掛けられる不満は、子供の我が儘みたいなものだ。聞いてはいけないと思いつつ、その一つ一つを耳は勝手に拾い上げていく。冷たい酷いという言葉は聞き飽きていて、やれ今度奢ってやらないだの、やれ他の二人にあることないこと吹き込むだのと、連ねられるのはろくでもないことばかりだ。それでも無心で寮に向かって足を動かしていれば、やがて五条は諦めたのか声は途切れる。ぷつりと切れた音は、いやに伏黒の胸中を心許なくさせた。それも全部、伏黒の中に巣食っている病床のせいである。忌々しいことこの上なくて、つい舌打ちをこぼした。

     本人としては大変認められないが、伏黒は五条が好きである。現在進行形、もちろん恋愛対象として。
     小学生の頃に、五条は突然伏黒の人生に頭を突っ込んできた。その距離感は形容し難く、頻繁に津美紀と自分の元を訪れる様子はただの後見人というには近く、けれど家族というには違和感がある。呪術師として強くなる、という名目の元散々に連れ回され鍛えられ、実の親よりも長い時間を過ごした結果、何を間違ったのか伏黒の脳みそはあの男に向ける感情を性欲を伴った好意であると弾き出してしまったのだ。最悪も最悪である。

     はたと顔を上げた。気付けば寮の自室の前で、思考に没頭しすぎたかと息をつく。扉に手をかけて、のろのろとした足取りで部屋に入った。疲れはそう溜まっていないはずだが、余計なことに頭を使い過ぎたようだ。
     不毛だ、捨てようと何度思ったことか。それすらも諦めて久しい。伏黒がいくら葛藤し悩もうとも、五条がへらへらと伏黒に近寄ってくることは変わらないのだ。いつかこの想いが枯れ果てるように、と見咎められぬようにやり過ごすしかない。それがあの災害じみた男を十年以上見つめていた伏黒の対処法だった。
     スマホを適当にセットして、ベッドの傍らに放り投げる。多少眠れれば上等、そうでなくても構わなかった。ぞんざいに横になって目を閉じる。じわり、と五条の触れた場所から再現性に乏しい感触を思い出した。手前勝手に振り回されるから嫌なんだ、と振り払うように寝返りを打った。
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    hariyama_jigoku

    DONE鋭百小説(鋭百々)。付き合ってていちゃついてる二人。互いの無意識の話。
    侵食 ちゅ、ちゅ、とリップ音が鼓膜を舐めるように繰り返される。くらくらと、その度に指先から全身に火が点っていくようだった。無意識に腰が引けるが、腰に回された腕が程よくそれを妨げている。
     眉見の肩に手を置くと、それを合図と思ったのか殊更ゆっくり唇が合わせられた後に緩慢に離された。吐息が濡れた皮膚に当たって、妙に気恥ずかしい。口と口をくっつけていただけなのに、なんて女の子みたいなことは言わないが、一体それだけのことにどれだけ没頭していただろう。腕がするりと離れ、柔らかなベッドに手を置いて体重をかける。
     勉強会という名目だった。元より学生の多い事務所では、勉強会がよく開かれている。C.FIRSTは専ら教え役だったが、S.E.Mなど加われば話は別だ。いつしか習慣と化したそれは、ユニットの中でも緩慢に続いている。事務所に行くだけの時間がない時。例えば定期テスト中―――下手に行けばつい勉強が手に付かなくなってしまう―――とかは、互いに課題を持ち寄って百々人は秀の、眉見は百々人の問題を見る。最初は二人が眉見に遠慮したものの、受験の準備になるからと押し切られる形になった。今日もそうなる予定だったが、秀が生徒会の仕事で欠席することを知ったのがつい一時間ほど前である。今日はやめておくかと聞こうとした百々人に、眉見が自分の家に来ないかと持ち掛けて今に至る。いつもは何かと都合の良い百々人の家だったのだが、一人で来るのは―――それこそ二人が付き合い始めてから来るのは初めてだった。
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