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    hariyama_jigoku

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    hariyama_jigoku

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    伏五小説。途中&習作。元々アニメの感想文的に書き始めたのに、終わる気がしない。

    ##呪術

    3マス進んで2マス戻るような話。3*

     うつらうつらと意識が揺らいでいる。既に消灯した部屋は暗く、カーテンの隙間から微かに光が漏れるばかりだ。睡眠と覚醒の間ほどの意識を保ったまま、ぼんやりとそれを眺めている。
     あの日の任務は滞りなく終わって、半月ほど経った。あれから、五条を見かけていない。多忙な五条のことだ、方々の任務に駆けずり回って授業に出られないのはいつものことである。だが、隙を見つけては一年の様子を見に来ていた割りに、ここ最近は姿すら見せていない。出張という話は聞いていなかったが、と基本的に五条の一方通行であったラインを思い出す。
     思考だけが回るばかりで一向に眠れず、とうとうベッドサイドに置いていたスマホに手を伸ばした。スイッチに指を滑らせると、点いたバックライトに焼かれた目を細める。シーツにスマホの側面を押し付け、見慣れたアプリを指先で弾いた。
     やーい、反抗期。今日はここで泊まりまーす。悠仁から聞いたよ、最近鍛えてるんだって? 細いんだからもっと筋肉付けな! 任務忙しくてほんと嫌になる~。恵交代しない? たまには返信しろ! 見て、犬のうんこ。硝子がー、生傷減らせって。直接恵に言ってって言ったら、聞かないからってさ。今度ちょっと遠くに出張行くけど、お土産何がいい? 野薔薇と悠仁にも聞いといてよ。
     五条が気紛れに時間も関係なく投げてくるメッセージの合間に、時折伏黒の気のない返信が混ざっていた。下らないものが大半だが、いつもは任務の話とかもしていた気がする。もちろん、ここ最近任務を共にすることもないから、というのは分かっていた。ただ、会っていない時間と比例するように増えているように思える吹き出しが、妙に伏黒の心にさざ波を立てる。
     だいぶ明るさに慣れた視界の端に、これまたスマホの端に小さく映っている数字が引っかかった。もう三時を回っている。いくら明日が土曜日で、珍しく任務も何もない日だとしてもそろそろ眠った方がいい。少なくとも未練がましく、返しもしないラインをスクロールしているよりかはずっといいはずだ。
     浅く息をついて、アプリを閉じる。元の場所に戻そうと、スマホを持ち上げるとふいに手に軽い振動が伝わった。こんな時間になんだ、と画面を覗くと、さっき閉じたばかりのラインの通知が新着メッセージを伝えている。アイコンも、ついさっきまで見ていたものと一緒だ。
    慌てて、そのまま通知を横に弾いて、アプリを立ち上げる。すぐに既読をつけるのは何となく憚られて、一覧画面に視線を落とす。
    『恵、今起きてる?』
     短い一文に、思わず顔を自室のドアへと向けた。人の気配がするか、と言われると自信はない。だが五条だったら、気配も呪力も悟らせないなんて訳ないことだ。
     引きずるように起き上がって、電気をつける暇も惜しんで、ドアの前に立つ。既読は結局つけていない。恐る恐る、鍵を回してドアを押した。
    「あっ、起きてた」
     あっけらかんとした声に、どこか拍子抜けする。やっほー、と夜中だからか珍しく抑えた声で、五条がひらりと手を振った。
    「なんですか、こんな時間に」
     俺が起きてなかったら、このままあんたは帰ったんですか。聞けるはずもない問いを伏黒が飲み下すと、五条はもう片方の手に携えた紙袋を揺すって見せる。
    「これ、お土産。やっぱ買ってきちゃった。嬉しい?」
     口元を緩めて、五条が首を横に傾けた。しばらくぶりだが、特に何かあった訳ではなさそうである。少なくとも、表面上はそう見えた。
    「……ありがとうございます、でもあんたほとんど自分で食うでしょ」
     そう言いながら紙袋を覗き見ると、五条がけらけらと笑って袋の中を軽く開く。そこそこ高級そうな箱に入っているようで、和菓子か何かだろうかと推量をした。生憎緑茶の一つもないが、きっとコーヒーでもどうせ甘くするのだから五条も文句は言わないだろう。そのまま紙袋を受け取って、五条が部屋に入るよう扉を開けたまま一歩身を引いた。
    「だって僕が買ったんだから、僕が食べたっていいじゃん? でも今日はゆっくり食べられるよ、僕これだけ渡したら行こうと思ってて」
     はあ、と肩を竦めながら言った五条を、ついまじまじと見つめる。
    「寄ってかないんですか」
     飲み物くらいなら出しますよ、と伏黒が付け加えると、一瞬五条は閉口した。驚いたようにも見える仕草の真意は分からないが、すぐさま五条の口が開かれる。
    「え、何、反抗期から思春期吹っ飛ばして親孝行始まっちゃった?」
    「あんたに育てられた覚えなんかないです」
     もし親だったとしたら育児放棄もいいところだ。そんなのは実父だけで間に合っている。でも今日もう遅いし、と途端に人間みたいなことを言う五条に、呆れてため息をついた。ずっと感じていた違和感の尻尾を、ようやく掴めたような気がする。
    「連絡来る前から起きてたんです。どうせ眠れないし、あんたがいても変わんないですよ」
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    hariyama_jigoku

    DONE鋭百小説(鋭百々)。付き合ってていちゃついてる二人。互いの無意識の話。
    侵食 ちゅ、ちゅ、とリップ音が鼓膜を舐めるように繰り返される。くらくらと、その度に指先から全身に火が点っていくようだった。無意識に腰が引けるが、腰に回された腕が程よくそれを妨げている。
     眉見の肩に手を置くと、それを合図と思ったのか殊更ゆっくり唇が合わせられた後に緩慢に離された。吐息が濡れた皮膚に当たって、妙に気恥ずかしい。口と口をくっつけていただけなのに、なんて女の子みたいなことは言わないが、一体それだけのことにどれだけ没頭していただろう。腕がするりと離れ、柔らかなベッドに手を置いて体重をかける。
     勉強会という名目だった。元より学生の多い事務所では、勉強会がよく開かれている。C.FIRSTは専ら教え役だったが、S.E.Mなど加われば話は別だ。いつしか習慣と化したそれは、ユニットの中でも緩慢に続いている。事務所に行くだけの時間がない時。例えば定期テスト中―――下手に行けばつい勉強が手に付かなくなってしまう―――とかは、互いに課題を持ち寄って百々人は秀の、眉見は百々人の問題を見る。最初は二人が眉見に遠慮したものの、受験の準備になるからと押し切られる形になった。今日もそうなる予定だったが、秀が生徒会の仕事で欠席することを知ったのがつい一時間ほど前である。今日はやめておくかと聞こうとした百々人に、眉見が自分の家に来ないかと持ち掛けて今に至る。いつもは何かと都合の良い百々人の家だったのだが、一人で来るのは―――それこそ二人が付き合い始めてから来るのは初めてだった。
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