電車にまつわる都市伝説ごった煮目が、覚めた。
ゆらゆらと冴えきらぬ頭が心地よい揺れと全てを置き去ってく走行音を認識し、一護はここが電車の中だと理解する。
「…………は?電車???」
一気に意識が覚醒し、顔を上げれば確かに己は電車に乗っているようだ。
──そんなはずはない。
有り得ない出来事に眉間の皺が更に深くなる。なにせ、自分に電車に乗った記憶はないのだ。
そう確信しているのに目の前の光景が現実を突きつけてくる。
真っ暗な外。──トンネルの中だろうか?
点滅している掲示板。──故障でもしてるのか?
自分以外誰も乗客がない車両。──もしかして回送中かもな。
文字化けした広告。──印刷ミス印刷ミス。
……………………。
「はぁーーっ……マジかよ」
努めて良いように良いように考え、目を逸らし続けたが、諦めて受け入れる。
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