とーあらハロウィン小ネタ携帯のライトを頼りに真っ暗な廊下を歩く。
10月31日午前4時半。
眠いし寒いし、今すぐ布団に舞い戻りたい誘惑に何とか抗いながらも、荒北はひたりひたりと廊下を歩く。
しん…と静まり返った廊下は不気味ではあるが、今の荒北にとってはむしろ雰囲気があって都合が良い。
頭から伸びた黒く尖った耳、ツメの鋭い大きな獣の手、口は大きく裂け、その口元には乾いた紅がこびり付いていた。
目的の部屋に辿り着くと、荒北はドアノブの鍵にヘアピンを差し込む。
音を立てないよう慎重にヘアピンを扱う荒北は、それはもう悪い顔をしていた。暗闇に浮かぶ特殊メイクも相俟って、狼男役としてB級映画に抜擢されそうな程には。
荒北自身、ハロウィンとかいうイベント自体にさして興味はなかったが、興味はなくとも強制的に巻き込まれるのだからタチが悪い。
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