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    palco_WT

    @tsunapal

    ぱるこさんだよー
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    ゆばかんエピローグ(長かったなおい

    #弓場×神田
    #ゆばかん
    hot-bulbOrSemi-driedBonito

    陽の当たる場所(完) 垂れたローションや体液を、ふたりの下でぐしゃぐしゃになったバスタオルで拭い取ると、それをベッドの脇のランドリーボックスに放り込む弓場の傍らで、やや気だるい身ながらごみ箱に口を縛ったコンドームを捨てながら神田は尋ねた。
    「弓場さんのスキン、コレでいいんですか」
    「何でェ、そいつじゃ不満か」
    「そうじゃなくて、あんまり薄くないじゃないですか。ナマに近いのはこっちのほうでしょ。試しにそっちでマスかいてみましたけど、やっぱ違うって気がして」
     銀の箔押しの入った黒いボックスのパッケージの避妊具は弓場が装着したもので、神田がつけていたものとは素材も厚さも違う。挿入することもなく、吐精で汚さないようにと神田に弓場が使わせているものは、薄さが売りのポリウレタンだが、そちらは新素材で柔らかく受け入れる側には優しいが、その代わりラテックスやポリウレタンに比べると厚みがある。
     だが、弓場は呆れたように、「何してんだ、てめェ」と顔をしかめた。
    「どうせなら、少しでもあんたにイイ気持になって欲しいんですよ」
    「何につけ勉強熱心で覚えがいいのはおまえの美点だが、そういうンは達者にならねェほうがいいぞ。遊んでると思われる」
    「弓場さんはそう思った、とか?」
     悪戯っぽく尋ねると、バカ抜かせ、と彼は打って響くように答える。承知の上での言葉遊びのようなものだ。
    「掘られてる最中に、あんだけ必死そうに堪えてたろうが」
    「あ~……俺、そんなに悲愴な感じでしたか」
     色々と下調べをして覚悟はしていたけれど、確かに挿入はいりきったかも、達したかもろくに分かりはしなかったのは思い出せる。ただ、自分の体に重なる弓場の重さだけがあの時は受け止められるリアルだった。
    「慣れてねェってくれェは分かったよ」
     弓場の手が、その時をなぞるように神田のがっしりとした腰や、肉付きの確かな腿をさすっていく。漣のように、一度は引いた快楽の波が戻ってきそうになり身をよじる神田を、弓場は存外面白そうに眺めやる。
    「それでも次があったのは、いや、最初もそうですけど、同情、とか?」
    「だったらどうする」
    「別に。それでも俺はあんたと寝れるなら、構いませんよ」
     あのなあ、と弓場は呆れたように、ベッドの上であぐらをかいた神田を見下ろした。
    「そこまでてめェを惨めにすんなよ。俺はそこまでされるような男じゃねェぞ」
    「俺にとっては、なりふり構わず手に入れるだけの価値がある人でしたよ、弓場さんは」
     光栄、と言えばいいのかね、と弓場は口にする。どこか独り言つようで。
    「こんな時に言うことでもあるめェがな。あれはおまえに惚れちゃいねェーか」
    「あれ?」
    「今日の昼間、寝くたれてたおめェーを起こしてくれた女生徒だよ」
    「ああ、笠原」
    「少なくとも憎からずってところだろう。違うか」
    「名字で分かる通り、俺の前の出席番号だからやりとりすることはなくもないけど、んーどうスかね」
    「声の調子や顔つきで分からねェーか、そういうのは」
    「考えたことはないんで分かりかねますね、正直」
    「だったら少し考てみろ」
    「なんで、そんなこと言うんスか」
    「……俺がおまえとこうなってんのは、ある意味打算だ。おまえがしてくれた提案は確かに都合が良かった。お互いにな」
    「……」
    「だからおめェも俺に操を立てるような義理堅い真似はしなくていい。もし、その気があんなら……」
    「ないですよ! 考えたこともない」
     笠原と以外だって。
    「分かった分かった。先に使わせてもらうぜ。少し休んでろ」
     皆まで言わせずとばかりに言葉を返した神田に、ぺしゃんこになった色違いの前髪を手のひらで撫でつけてやりながら、弓場は苦笑いでいなし、浴室へと向かった。
     それでもやりとりを続けたい意を汲んでか、そのドアは開けられたままだった。シャワーカーテンの向こうで湯がはじける気配と、湯音で温められた、神田のものと混ざりあったであろう男の体臭が一瞬だけこもり、しかし石鹸の香りですぐにかき消された。
    「でも弓場さんが『後釜』が出来たっていうなら、遠慮しますよ、俺は」
    「今んとこアテはねェーな。そうそうおまえほどに都合のいい奴は見繕えねェーな」
     はは、と神田はため息というほどではないけれど、にじむような息を吐いた。かすかな声を交え。
    「光栄って言っていいのかな」
     あえて、弓場が言った言葉を繰り返す。
     口が開けたままの二種類のコンドームの箱を閉じて、引き出しの奥へとローションともども戻しながら、神田は今は弓場の目がないことに皮肉な安堵を感じる。そもそもこの関係を申し出たのは自分じゃないか、と言い聞かせ。
     低く洗濯機の回る音も響き、やがてシャワーの水音が止まる。
    「ほら、交替だ」
     ジャージの下だけを履いて、濡れた頭をタオルで拭きながら、弓場は浴室から戻ってくる。引き締まった腹筋も、鎖骨が影を落とす胸回りも惜しみなく見せるようにして。
    「いい匂いだったな」
    「え?」
    「入溶剤。来る前に入ってたんだろ。俺の好きな香りだ。そのうちゆっくり肩まで浸からせて貰いてェーところだな。今日はさっさと寝ねェといけねェーからそうもいかねェが」
    「買い置きありますから、ひとつ持っていって下さいよ」
    「そうもいかねェよ。妹の気に入ったのしか家では使えねェんだ。ま、時間がゆっくり取れそうな時に浸からせてくれ」
     いいですよ、と応じようとした神田を、湯で温められた弓場の腕が引き寄せる。
    「そん時は、俺がおめェの中までキレイにしてやる」
     かっと、弓場から伝わる熱以外のものが神田を煽る。
    「……っ」
    「冗談だよ」
    「弓場さん!」
    「ほら、てめェで全部洗い流してきな。任務にまで余計なモン持っていかねェようにな」
     とん、と体を躱されてから、背中を軽く小突かれ、神田は今日二度目の浴室へと押し込まれた。



    「弓場さんこそ、もしかして後悔してるんですか」
     俺とのことを。
     弓場との行為の残滓を、それを身から払うことを惜しむ気持ちごと洗い流してきた神田は、ベッドに立膝で座って、少し前まで目を通していた二年のテキストを懐かしそうにめくっていた弓場へと尋ねた。
    「多少はな」
    「……」
    「そんな表情ツラすんな」
    「あン時おまえが言ったように、俺はおまえの永遠の男にはなってやれねェ。おまえの夢に付き合って、支えてやろうっていう心づもりにはなれん時点でな。その背を押して送り出すくらいが精々、だ」
     第一、と弓場はどこか所在なさそうに、つい、とカーテンに隔てられた窓の外を眺めるように横顔を見せた。
    「そんならしくもねェ俺じゃ、おめェーだって愛想を尽かすだろう。つまりはどん詰まりなんだよ、この関係はな」
     高くすっと通った鼻梁から続く、凛としたラインを描く唇が尚も言葉を紡ぐ。
    「けど、それ以外の部分でなら、おめェーとはずっと繋がってやれる。おめェーがいつかボーダーを退役しても、生涯、神田忠臣って男は俺の大事な部下で、後輩なのは変わらない。おめェーが万が一記憶を『取り上げられ』ても、俺は覚えてやる」
    「弓場さん」
    「俺は、嵐山や迅……ボーダーに殉じるつもりのバカたちを監視ててやらなきゃならねェーからな。その心づもりでトリガーを握った。少しでもあいつらの負担を減らす為に、若い連中を育てて偽物とはいえ死地に送り出す。蔵内も王子も、俺がそう踏んだから下につけて未熟なりに育ててやったつもりだし、応えてくれた。おめェより少し早く、あいつらは俺のところから経つことになる。聞いてんだろ」
    「……はい」
    「隊長冥利だ。俺はいい部下に恵まれたよ」
    「俺も、あんたのおメガネにかなってましたか」
    「分かりきってることを言わせんな。でなけりゃ声かえてねェよ」
    「だったら裏切っちゃったっスね。結局、俺は三門市防衛の盾にも武器にも、なれなかった」
    「違う。おまえはおまえの生き方を、これから続く奴らに教えてやるんだよ。そういう生きも、ありだと。現在だけ精一杯防衛り続けることに何ひとつ臆すことなんざァねェってな。選択肢はいくらでもある。そう、な」
     ここから離れることを選ぶのを臆して欲しくはねェんだ。誰にでもな、とごろりとベッドに寝ころび、神田のスペースを作るように壁際に寄る。そうしても、長身の彼らふたりではセミダブル程度では狭苦しいのではあるが。
    「どうにもならない事情ごと背負い込みたがる奴は、あいつら以外にだって出てくる」
    「三輪、みたいにですか」
     神田が思い浮かべたのは、東隊にいる弧月使いの少年だった。言いふらしているものではないが、彼の事情は神田とて聞き及んでいる。
    「他のありかたが見つからねェで、狭い道に入り込む奴だっている。そこでしか生きられないと思い込んで、な。けど、どう俺らが体張ったって、これからだって被害は出る。ゼロにはなるめェ。少なくとも俺たちがまだ前線まえ張ってるうちはな。俺や、おめェーのガキがでかくなった頃には、少しは落ち着いてりゃいいとは思ってるが、さて、迅もそこまで視えてるのかどうか」
     ま、ガキが出来る予定は今んとこねェがな、と弓場は低く笑う。
    「……優衣の腹の中の仔は俺にツケても良かったんだがな」
    「は?」
    「ま、籍もまだ入れられる年でもねェーし、将来でかくなった時にバレたらいたたまれねェ思いをこまけェのにさせたくはないから、ねェけどな」
    「あの、弓場さん、それはどういう」
    「そういう意味では誠実な女ではあったよ。なのに寂しくさせちまった。甲斐がねェよ、正直。まあ、相手の男はぶっとばしてはやりたかったが、優衣に免じて許してやらァ。セックスする以上、一〇〇%孕ませねェようにするってのは無理にしてもな」
    「……あんたが本気で殴ったら死にますよ」
    「だからしてねェーだろうが」
     晴れやかに彼は笑った。まだ高校生の、十分に若く、柔らかな笑顔だった。
    「だからな、神田、おまえはおまえでちゃんと幸せになれ。ボーダーで生きて、そこを出ても生きていくことに何もはばかるものはねェ。男でも女でも惚れてみたい奴にあったら」
     まだベッドに腰かけたままの神田を、弓場の夜色の双眸がじっと見据える。
    「俺のことなんざ忘れちまえ」
    「無茶言うなあ……」
     神田は覆いかぶさって、その唇にたまらず自らの唇を重ねた。
    「俺は、あんた以外の男に抱かれやしませんよ。こんなのあんたきりだ」
    「ほんの一時だけでもか」
     おまえが言ったことだろう、と弓場は囁く。
    「なりふり構わず、みっともない俺にあんたは応えてくれた。残りの人生、情とか恋とか使い果たしたって構わなかったんだ、俺は」
    「重てェ―こと、さらりと言いやがって」
     チ、と弓場は軽く舌打ちした。
    「てめェ―だけと思うなよ」
     パジャマ代わりのスエットの胸倉を掴んで、弓場は唇を荒々しく貪る。
    「できたら忘れろ。それがおめェのこれからの為だ。俺はてめェの足かせになるつもりはねェんだ」
    「忘れませんよ。もし記憶処理されたって俺の体は弓場さんのことを覚えてる。きっと」
    「神田……」
    「弓場さんの人生の一年と少し。そこの一部に俺をいさせてくれただけで、十分です。俺はあんたより夢を選ぶんですから」
     だったらしくじるんじゃねェぞ、と弓場は脅しつけるように告げ、はい、と神田は頷いて、その隣に身を落ち着け。
    すると。
    「……待ってると言ったらどうする」
    「え」
    「ただのたとえ話さ」
     そう言って、弓場は自らの肩口に預けさせた神田の顔に手をかぶせた。まるで、自らを横顔すら見せぬようにとばかりに。静かな闇が神田の視界を覆う。
    「眠れ、明日は早ェんだからな」
    「……はい」
     目の辺りに置かれた手のひらは湿って暖かく、だからもし自分が閉じた瞼からにじませた何かがあっても悟られないと、そう祈りながら神田は眠りについた。あと何度、この人の体温を感じながら寝られるのか、考えぬようにしながら。
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