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    トミコです。まほやくのファ右

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    ネロファウ未満のネ

    2023年バレンタインのネタが少しあり

    #ネロファウ
    neroFau
    #まほや腐
    mahoyaRot

    晩酌準備は軽やかに せっかく賢者さんにもらったしな。というのはこじつけで、そもそも今宵は一緒に晩酌しようと示し合わせていたのだ。

     ふたりでの晩酌の始まりは偶然だった。
     しばらくして、言葉での問いかけになった。「今晩どう?」とか「いい酒が手に入ったんだ」とかそういう誘いの言葉。
     それから、段々と言葉がへっていった。なんとなく目線を合わせたり。例えば顎で中庭をさしたり、酒のボトルを持ち上げてみたり、グラスをもって飲むジェスチャーをしてみたり。
     いいよ、という言葉だったり、小さくうなずくだけだったり、いつもかぶっている帽子のつばを少し上げるだけだったりと、表現は様々だけれど、不思議と言いたいことは伝わってくる。
     ネロのほうといえば、いいね、という言葉だったり、同じく小さくうなずくだけだったり、人差し指と親指で丸をつくってみたりするが、言いたいことは伝わっていると思っていた。
     断られる日もあるし、断る日もあるが、そのことに多少の寂しさは抱けど、大きく傷つくことはない。ふたりで飲みかわす晩酌というものが、彼と自分の日常の中にあって、次があることを知っているから。
     というのはもしかしたらネロだけの願望なのかもしれないと、思ったりもする。そうやって己の認識と相手の認識が異なったときに大きく傷つかないための予防線を張っておくのはもはや思考癖にほかならないので、ドツボにはまるまえに、まあいいさ、と端に置いておくことにしていた。
     白黒つけなければならないことではない。曖昧ななにかのままでだって、認識が異なっていたとしたって、彼との晩酌の時間がなくなるわけではないのだから。
     そんなわけで、昼過ぎにひょっこりキッチンに顔を出した彼が、中庭を指したので、それに対して頷いた今夜も今夜で夕食の片付けの後、晩酌の準備に取り掛かっていた。
     つまみは何にしようか、もちろん一品は賢者からもらったチョコレート。色と香りからしてダークかミルクだと思われるそれを、一口味見してみることもできるのだけれど、なんとなく格好がつかない気がしてしまう。自分が作るものを味見するのはかまわないのに、綺麗に収められたものを欠けさせるのは気が引けて、皿に盛ってしまえばわからないだろうに、けれどもやはり、もらったものをそのままだしたい。賢者さんがくれたやつ、と彼と話をしたかった。そのくらい、賢者がくれたこのチョコレートが、そこに込められた想いが嬉しかったから。
     酒は向こうが持ってきて、肴はネロが用意する。晩酌を重ねるうちに何となく出来上がった役割分担は、ときには入れ替わる時もあるけれど、酒へのこだわりは彼の方が強いから、基本はそうだ。ネロが作るささやかな料理を、当たり前とは思わずにいて、けれど小さな期待は抱かれているのがわかるから、喜んでくれるものを作っていきたい。
     それに、酒が進んでボトルが空いた時にすぐに取り出せるようにストックから目星をつけておきたいし、相手持参の酒に合う肴を先読みして用意したい。自分が何気なく出した肴が、彼が何気なく持ってきた酒に合ったとき、少し驚いたように見開いたあとに、まじまじと肴を見て、それからネロに向けられる、菫色。口の中にあるものをしっかり味わって飲み込んで、それから言葉を放つから、まずものをいうその目と表情が好きだった。
     そういう小さな好ましいことが重なって、誰にも見せない胸の奥、つまみを作る指先に熱を帯びるものがある。考え方や在り方はぜんぜん違うといっていいのに、むしろ、あういう向こう見ずなまっすぐさにはついていけないと思っていたのに。
     結局惹かれるのはそういひとなのか。逃げた壁はまた目の前にやってくるのか。逃げだしたそのものが目の前に現れてはいるけれど、それはそれとして。思考のドツボにはまろうとしているのを感じとって、ネロは自分のそれをまた端に置いた。そんなことを考えているよりもっと、考えるべきことがあった。
     今夜はおそらく気候や気分や入手したから、とかそういう理由ではなく、彼ももらっているであろうチョコレートに合いそうなものを選んでくるだろう。匂いを嗅いで、もしかしたらちょっと味見してみているかもしれない。真剣に酒のことを考えている姿を想像すると、口元が緩んだ。無難なのは赤ワインかな。酒と肴のおいしい方程式にあてはまる、甘いものはあるからしょっぱい系は何がいいだろう。
     キッチンで残り物を見やってから、自室に保管しているものを思い浮かべる。いくつか候補をあげてから、気候や夕食、ここ最近作ったものと照らし合わせた。そうだ、外側が溶けにくいチーズのアヒージョなんてどうだろうか。バケットもつけて、まえにつくったパテが自室にまだ残っていたはずだから、少し手を加えたら。小さな口がバケットに残す齧り跡を思い出して、ネロはまた、小さく笑った。
     夕食の片付けを終え、明日の朝食の下ごしらえも済んでいる。このあと待っている晩酌について想いを馳せながら、最後にシンクを磨き上げ、使用した布巾を洗って干した。
     肴にさせてもらう食材を少しばかりいただいて、ネロは自室へと脚を向ける。
     その足取りは、浮足立つ心と同じく軽やかだった。
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    t0mic0x0shi

    DOODLE書きたいとこだけ!
    ハウルパロです。
    【フィファ】フィガロの動く城(書きたいとこだけ)フィガロの動く城(書きたいとこだけ)

    「ああ、いたいた。探したよ」
     どこからか、この場ににつかわしくない滑らかで穏やかな声が聞こえると同時に、死角から伸びてきた腕がファウストの眼前で揺れる。鮮やかな緑の上等そうな服の袖、金の繊細な装飾品で飾られた手首、その先にある節ばった手がゆらり。人差し指の根元にはめられたこれまた金の指輪の石の赤さが印象的だった。
    「さあ、行こうか」
     いまにもこちらの腕を掴まんとしていた衛兵もどきとファウストの間に身を滑り込ませてきた存在が、不思議な力か、それともただ突然現れることで与えた驚愕からかで彼らの動きを止める。
     風もないのに柔らかく揺れる薄群青の髪。身長はファウストよりも高く、すこしだけ見上げる格好になる。踊るように男がファウストに向かって振り返ると、服の裾が緩やかに広がった。曇り空のような無彩色の中に若葉色の煌めきを持った不思議な色合いの目を細め、これまた場に似つかわしくない笑みを浮かべた彼は、衛兵のことなどどうでもいいことのように、ファウストだけを見て、手を差し伸べてくる。
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    t0mic0x0shi

    DOODLEアレクはなぜファを火刑にした?ということに悶々として得たひとつの妄想。カプ要素ない。
    アレクはもっと賢いよー!と思いつつ…なんかなんとか無理やり辻褄合わせる方法ないかな!?

    あとこの世界では、ファとレの不在時にフィは離脱してて、その時に軍にいた者たちから自分の記憶を奪ってる設定です
    ファは一年、特定の人ではなく、修行の旅に出て強くなって帰ってきた!と思われてるような感じ
    【アレクの話】碧落に願う碧落に願う

     この戦いの日々が、いつの間にやら革命と言われたこれが終わったら、お前は何がしたい?

     ”大いなる厄災”と呼ばれる大きな月が闇を連れて太陽の代わりに空を飾る頃、焚き火ゆらめくいつかの夜。親友とそんな話をした。
     それは一度だけではない。これから戦いに向かう夜、あるいは命からがら一つの戦いを終えた後。しょっちゅう、というほどではなかったけれど、時折、思い出したように。
     人間と魔法使いと、同じ軍にいても部隊や役割が違っていて、規模が大きくなるにつれいつも仲間の誰かが周りにいた。宴や軍議が終わればそれぞれ個々に別の仕事が待っている。そんな中で不意に、時にはどちらかが意図を持って二人きりになった時。
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