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    mamenaka_fgo

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    フォロワーさんの幻覚を受動喫煙して書いた、現パロで難病にかかるぐだ♀の伊ぐだ♀
    ⚠死ネタ
    閲覧は自己責任でお願いします

    ある夏の日の事「もういい。もういいよ伊織。あるかどうかも分からない治療法なんて要らないから、何処にも行かないで傍に居て」
    白いシーツが敷かれたベッドの上で横たわる彼女が、俺に向かって以前よりも細くなった手を伸ばす。
    俺はその手を取ろうとして、けれどやっぱり躊躇ってしまった。





    彼女とは───立香と俺は夫婦の間柄だ。
    妹から貰った、大事な梅の水引飾りを気付かず落とした俺に立香が声を掛けてくれたのが切っ掛けで話すようになり、連絡先を交換し、いつの間にか付き合うようになって、数年間の同棲を経てトントン拍子で結婚までした。
    同棲を始めた時、たまたま家に俺の様子を見に来た妹に「に……兄ちゃんが……女の人を連れ込んでる〜!?」と叫ばれたのは今となってはいい思い出だ。
    立香との結婚生活は、決して裕福という訳ではないが穏やかに満ち足りていて、このままずっとこんな日々が続くのだろうと俺は思っていたし、そうであって欲しかった。
    だが……
    「───立香!?おい、しっかりしろ!きゅ、救急車を……!!」
    ある日突然立香は倒れた。
    そして運ばれた先の病院で色々と検査をされ、数週間後、俺だけが医師に呼ばれた。
    「───結論から言います。奥さんは難病に掛かっています」
    「難、病……?」
    「しかも極めて特殊なものでして……世界でも全くと言っていい程症例がありません。原因も良く分かっていません。その為根本的な治療法なども無く……現在の医療では、様子を見るしか手の施しようが───」
    その後も医師が何やら長ったらしい説明を続けていたが、俺は碌に聞いていなかった。
    俺の中ではこれからどうすれば良いのかという不安と、この結果を彼女に伝えるべきか否か、ただそれだけが頭を回っていた。
    話が終わり、ふらふらと覚束ない足取りで立香が待つ病室に帰ると、彼女は上半身を起き上がらせた状態で備え付けのTVを見ていて、俺に気付くと「お帰り」と声を掛けてきた。
    「どうだった?先生に何か言われた?」
    「…………特には。『日頃の疲れが出たんだろう』と。家に帰ってゆっくり休めば大丈夫だそうだ」
    「そっかぁ。病気じゃなくて良かった」
    「…………あぁ、そうだな」
    俺は何も言えなかった。
    結果を伝えず、尚且つ表面上は何事も無く済ませるにはこの方法が一番だと思えたから。
    そして俺自身も、まだ実感の湧かない難病の事を話す事で彼女が不安になってしまう事が怖かったのだ。
    ───医師によれば、立香の病は『命が削れていくようなもの』らしい。身体の成長が突然止まり、衰弱しながらゆっくりゆっくりと身体の機能が低下していき、最終的には動く事もままならず死に至る。
    症状はある。だが幾ら検査しても立香の身体のどこにも特に異常は見受けられないので、そうとしか言いようがないと言われた。要するに匙を投げられたのだ。
    癌のようにどこが悪いという訳でもないので、苦痛を知覚する事なく死ねるのは唯一の救いだろうか。
    「……ねえ、伊織。ちょっとこっち来て」
    「?あぁ、別に構わないが……」
    手招きされたのでベッドに近付き、そのまま立香の隣に腰掛ける。
    すると彼女は俺に擦り寄ると、細い腕でぎゅうっと抱きついてきた。
    「な……!?」
    「えへへ……久しぶりに甘えたくなっちゃって。ごめんね?」
    「い、いや別に良いが……」
    そんなやり取りを数分程続けていると、徐に彼女は顔を上げた。その表情は何とも言い難い微妙なものだ。
    「……無理しないでいいよ伊織。本当は病気なんでしょ?私。それもお医者さんから匙を投げられるレベルの」
    「────っ!」
    「もう……嘘が下手だなぁ。まあ、昔から隠し事は下手だったからしょうがないか」
    俺が返答に窮していると、彼女はおかしそうにくすりと笑った。それからゆっくりと俺を抱き締めていた腕を解くと、その細い指で俺の頰に触れてきた。
    「それで、何の病気なの?やっぱり末期癌とか?それとも心臓病?」
    「……………」
    「そんなに言い辛いんだね。無理しないで。言える範囲で良いよ」
    「……あぁ、そうだな……」
    俺は意を決した。これ以上、彼女に噓を吐き続ける事は出来ないと分かったからだ。
    「……難病だそうだ。原因は未だ不明で治療法は見つかっていない……らしい」
    「そっかぁ……余命とかは言われた?」
    「……保って2年。長くても3年が良いところだろう、と……」
    「…………そっかぁ」
    俺の言葉を聞くと、立香は悲しそうに目を伏せてぽつりと呟いた。
    「すまない……」
    「何で伊織が謝るの?寧ろ謝らなきゃいけないのは私でしょ。伊織の事を遺して死んじゃうなんて……。……う、ひっく……」
    「ッ、立香……」
    嗚咽が聞こえてくる。
    俺は何も言えなかった。ただ黙って、彼女の身体を抱き締めてやる事しか出来なかった。
    「ごめんね……一緒に歳を取れないなんて……ごめんね……」
    「俺の方こそ……何もしてやれなくてすまない……」
    ─────本当に?
    ふと、俺の頭にそんな疑問が浮かんでくる。本当に何も打つ手は無いのだろうか。
    このまま彼女が弱っていくのを、指を咥えて見ているだけしか出来ないのか?
    俺は……俺に何か出来る事はないのだろうか。
    世界は広い。単に見つかってないだけで、何処かに立香を治せる方法が有るのではないのか?
    「───そうだ」
    「……?」
    俺がそう呟くと、立香は不思議そうに首を傾げた。俺はそんな彼女を抱き締めたまま、その耳に囁くように告げる。
    「……旅に出ようと思う」
    「…………旅?」
    「あぁ。世界中を駆けずり回ってでも、お前の治療法を見つけ出す。だから諦めないでくれ」
    「────」
    俺の提案に、しかし彼女は首を横に振った。そして悲しげな瞳で俺を見つめ返してきた。
    「……無理だよ伊織」
    「どうしてだ?やってみなければ分からないだろう?」
    「あるかどうかすら分からないのに?伊織が言ってる事は、広〜い砂漠の中から一掴みの砂金を探し当てるくらい難しい事なんだよ?無茶だし無謀だよ」
    「それでも、俺はやる」
    俺がそう返すと、彼女は呆れたように溜息を吐いた。
    「……本当に……伊織は一度決めたら頑固だよね……」
    「すまない」
    「……でも、そういう所が好きなんだけどね」
    そう言って彼女は微笑むと、俺の胸に顔を埋めてきた。そしてそのまま小さく呟く。
    「……分かったよ伊織。行ってらっしゃい。私は家で待ってるから」
    「ああ……行ってくる」
    こうして俺は、偶にで良いので立香の様子を見てくれるよう妹に頼むと、支度を調えて旅に出た。
    しかし、そう上手く行く筈もなく。
    医療の先進国と言われるスイスやアイルランドに行ったり、大国であるアメリカなら何か分かるんじゃないかと行ってみたり。
    血迷ってアマゾンの奥地にある先住民の村で怪し気な儀式を受けた事もあったが、結局立香の治療になるような手掛かりは見つけられなかった。
    その頃には既に1年程が経っていて、俺は特に大した成果を得られていない事に肩を落としながらも、立香の様子を見る為に一度日本へ帰国した。
    「……ただいま」
    玄関を開けそう呟く。声は返ってこない。
    1年振りの我が家を酷く懐かしく感じながら居間に荷物を置くと、寝室へ向かう。
    彼女は眠っているようで、俺は起こさないようにそっとベッドの端に腰掛けた。
    「……」
    安らかな寝顔だ。
    見た目は全く変わっていない。でも確かに、以前よりも痩せたように見えるし、肌色も白くなっている。
    「すまない……まだ治す方法は見つかっていないんだ……」
    そう溜息を吐きながら呟くと、立香の頭を優しく撫でてから俺は立ち上がり音を立てないよう部屋を出た。
    階段を降りて居間に戻り、今までに集めた医療についての資料や立香の為に買って来た土産を整理する。
    「………いおり?」
    「!」
    不意に背後から声を掛けられ、慌てて振り返る。そこには眠そうに目を擦る立香の姿があった。
    「立香……悪い、起こしてしまったか?」
    「ううん……。……帰って来るなら、連絡の一つくらいしても良いのに……」
    立香はそう言うと、少し覚束ない足取りで俺の傍までやって来た。そしてちょこんと隣に座る。
    「1年振りだね……ちょっと、日に焼けた?」
    「あぁ……まあ、世界中を飛び回っていたからな」
    「……そっか。でも良かったぁ。元気そうで」
    彼女はそう言って微笑むと、そのまま俺の胸に顔を埋めてきた。俺はそんな彼女を優しく抱き締める。
    「えへへ……」
    嬉しそうに笑う彼女を見ていると、俺も嬉しくなってくる。だが同時に罪悪感も込み上げてくるのだ。
    俺がしている事は本当に正しいのか?彼女の為になれているのだろうか?
    「……伊織?どうしたの?」
    「え?」
    「何か、悩んでるみたいだったから……」
    どうやら顔に出ていたらしい。俺は慌てて首を横に振ると、笑顔を作って見せた。
    「何でもないさ」
    「……本当に?」
    「ああ……それよりほら、お前に土産があるんだ」
    「……外国のお菓子?」
    俺が話題を変えた事に少し不満そうにしながらも、彼女はテーブルの上に置いてあった菓子の箱や缶や袋に目を向ける。
    バウムクーヘンにクッキーやチョコレート、ショートブレッドにスナック類。
    立香は甘いものが好きだし、少しでも彼女の気が紛れればと思って買ったものだ。
    しかし喜んでくれるだろうと思った俺に反して、立香は困ったように眉を下げるだけで手を付けようとはしなかった。
    「……どうした?」
    「……最近……ご飯が食べられなくなって来てて……今はまだお米とかの固形物も食べれるけど、それだけで凄く疲れちゃって……」
    「……!」
    「ごめんね伊織。折角買ってきてくれたのに……」
    「……気にするな」
    申し訳なさそうに謝る彼女を見て、俺は胸が締め付けられるような思いだった。
    立香はどんどん弱って来ている。早く治療法を探し出さないとと思うと同時に、もし見つからなかったら?という不安も浮かんで来る。
    「けほ、けほっ……」
    「大丈夫か?」
    「……うん……大丈夫。少し咳き込んだだけだから」
    そう言いながらも彼女は辛そうにしている。俺はそんな彼女の背中を優しく摩ってやった。
    「無理しないで、ベッドで寝た方が良い。俺が部屋まで連れて行くから。な?」
    「うん……」
    俺は彼女を抱き上げると、そのまま寝室へ連れて行った。そしてベッドに寝かせて布団を掛けてやる。
    「……ねぇ伊織」
    「何だ?」
    「まだ……続けるの?」
    「!」
    彼女の言葉に、俺は思わず息を吞んだ。
    「もういい。もういいよ伊織。あるかどうかも分からない治療法なんて要らないから、何処にも行かないで傍に居て」
    白いシーツが敷かれたベッドの上で横たわる彼女が、俺に向かって以前よりも細くなった手を伸ばす。
    俺はその手を取ろうとして、けれどやっぱり躊躇ってしまった。
    「……俺の事は気にするな。俺は大丈夫だ」
    「嘘だ。伊織だって辛いんでしょ?」
    「違う!俺はお前の為を思って……!」
    思わず声を荒げてしまうが、すぐにハッとなって口を噤む。しかし彼女はそんな俺を見て悲しそうに微笑んだ。
    「ありがとう……私ね?嬉しいよ。伊織が私の為に必死になってくれて。でももう良いの。例え助からなくても良いから、私は最期まで伊織と一緒に居たい」
    「………」
    「お願い。……いつ死ぬかも分からない状態で1人で居るのは、怖いよ……」
    「……」
    俺は無言で彼女の手を握ってやると、自分の頬へと寄せた。そして優しく囁いてやる。
    「分かった……もう何処にも行かないよ」
    「本当……?」
    「あぁ。約束する」
    「……良かったぁ……」
    彼女は安心したように笑うと、そのまま静かに目を閉じた。程なくして規則正しい寝息が聞こえてくる。
    俺は彼女の寝顔を見つめながら、知らず知らずの内に涙を流していた。


















    その日は丁度親の命日だった。
    俺はいつも重い腰をやっとの事で上げると、事前に用意していた仏花や線香にライター、それから供え物の饅頭を持って墓のある最寄りの寺へと足を運んだ。
    若干傾斜の険しい階段を登り、汗を拭いながらも寺の脇にある棚から水桶を取り出し蛇口で水を注いでから墓場へと向かう。
    少しの距離を歩いて親の墓のある列へ行くと、そこには先客が居た。
    この暑い中、身動きすらせずにとある墓に向かってじっと手を合わせている。
    「あの〜……?」
    「!」
    心配になって思わず声を掛けると、その人物は驚いたように俺の方を見た。
    まだ20代後半にも行かないくらいだろうか。焦げ茶の髪に黒っぽい青緑の目をした歳若い青年で、顔立ちは整っている。
    彼は俺の姿を認めると、申し訳なさそうに眉を下げた。
    「すみません……邪魔でしたか」
    「あ、いえ。そういう訳じゃないんですけど……こちらこそ驚かせてしまって……」
    声を掛けたのはこちらだと言うのに、謎の人見知りを発揮してモゴモゴと言い訳のような言葉を並べ立てていると青年はさっさと荷物を纏め、俺にペコリと会釈をするとそのまま去っていく。
    すれ違う前、彼が首元に下げていたネックレスの先にある指輪がチカリと光を反射した光景がやけに印象に残った。
    墓参りの邪魔をしてしまっただろうか、と若干申し訳なくなりつつも、気を取り直して親が眠っている墓石に水を掛けてやり線香と饅頭を供える。
    そして手を合わせていると、途中で聞き馴染みのある声が聞こえた。
    「佐藤くん。墓参りかい?」
    「あ、住職」
    俺は顔を上げると、声の主である住職に向き直る。仲が良いとまでは言わないにしろ小さな頃からの顔馴染みである彼は、以前は少し厳ついと思っていた顔に好々爺らしい柔和な笑みを浮かべていた。
    「はい……まあ」
    「そうかい。きっと親御さんも喜んでるよ」
    「ははは、そうっすかねぇ」
    それから少しの間近況報告をしていると、住職はふと横を見てから「おや」と声を上げた。
    「また花が変わっている……今日も彼は来たのか」
    何だと思って住職の視線の先を辿る。するとそこには先程俺がすれ違った青年が熱心に手を合わせていた墓があった。
    『彼』と言うのは、もしかしなくてもあの青年の事だろうか。
    「彼って、もしかして何かこう、物静かでクールな印象で、焦げ茶の髪に青緑色っぽい目をした若い男の人?」
    「おや、彼と話したのかい?」
    「いや……さっき少しすれ違って……熱心に手を合わせてたから今時の人にしては珍しいなー?って思って……」
    俺が素直に思った事を言うと、住職は「ああ……それねぇ」と呟いて彼が供えたであろう仏花の菊の花びらを撫でるように触れた。まだ青々としたその花を見つめるその顔には、哀れみと同情の念が滲み出ている。
    「何でも彼、結婚してたけど奥さんを病気で亡くしてしまったみたいでね……随分仲が良かったみたいで、それこそよっぽど天気が悪くない限りは毎日墓に来て花を供えてるみたいなんだよ。……まだ若いのに、可哀想にねぇ……」
    「へぇ……それは……気の毒に……」
    俺は何とも言えない気持ちになりながら彼が去って行った方向を見遣る。
    もう姿は見えないが、あの青年はそれこそこれまでも、これからもああして墓へ来るのだろうか。
    そこまで愛し合った人が居たなんて羨ましいと思った反面、その人にずっと囚われているなんてまるで枷でも嵌められて身動きが取れなくなった人みたいだな。
    ───と、俺は不謹慎ながらも、ジリジリと太陽が照り付ける中、そう考えていた。
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