いつかの終わり「魈、帰ったぞ」
「ぁ……、あ」
「うん。ただいま」
カシャン。と音がした。魈が鎖を引きちぎろうと引っ張る音だ。初めは岩元素の拘束を手首にしていた。しかし、もはや痛みなどを認識しなくなった魈が、いくら皮膚が深く傷つこうともそれをやめなかった。なので柔らかい素材に変えて、鎖で壁に繋いである。
拘束を解けば直ぐ様鋭い爪を首に当てて自害しようとする。あの日見つけた時には、魈は既に発狂していた。いくら名前を呼び掛けても反応しなかった。今までは幾度となく既のところで間に合ってきたが……間に合わなかったのだ。目が合った瞬間、瞬時に消えようとする魈を掴んで咄嗟に洞天に連れて来てしまった。
俺は、まだ魈と離れる決断が出来ていなかった。
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