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    sayuta38

    鍾魈短文格納庫

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    sayuta38

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    鍾魈小話 現パロ。飲み会に行く魈くんを迎えにいく鍾離先生の話。

    #鍾魈
    Zhongxiao

    飲み会「ま、また飲み会なのか……?」
    「はい。明後日に会合があると空に呼ばれました」
    「先日も飲み会に行ったばかりではないか」
    「あれはサークルの飲み会です。明後日のはクラスの集まりです」
    「……それは……どうしても行かなくてはいけないものなのか?」
    「いえ、鍾離様がなるべく色々な人と交流するよう我に言ったので、行こうと決めたまでです。行くなと仰るなら金輪際行きませんが」
    「うぅ、そうではなくてだな……」
     零か百か。魈の辞書に程々という文字はない。折角大学に行ったのだから、色々な人と交流を深め、様々な考えに触れる良い機会だ。交流の場があれば行くといい。と言ったのは確かだ。
     だがしかし、こんなにも大学生は飲み会に行くものなのか? 頻度が高すぎる。その前もバイトの集まりとやらで飲み会に行ったばかりではないか。
     そう言いたかったが、どうにかこうにかして気持ちを抑えた。魈には自由に友を作り、平穏に暮らして欲しいという願いがある。
    「心配なさらずとも、空もいるので大丈夫です」
    「心配している訳ではない。いや、心配と言えば心配だが……しかし行くなと言っている訳ではないのだ」
    「……? 鍾離様、つまり我は飲み会をどうすれば良いのでしょうか?」
    「うぅ……行ってきなさい」
    「わかりました」
    「ただ、その……あまり飲みすぎないようにな」
    「大丈夫です。具合が悪くなったことや、吐いたことはありませんので」
     なんとも涼しい顔をしているが、魈はそこまで酒に強くない。弱い訳でもないのだが、そこに付け込む輩がいないかは心配である。空が一緒というなら、少しは安心出来るのではあるが、出来ることならついて行きたい。しかし、前に別席でこっそり様子を伺っていた時に、魈に怒られてしまったことがある。ついて行けば魈が呆れた顔で鍾離を見るのを知っているだけに、帰りの時間までをヤキモキしながら待つしかないのだ。


    「空、今日の場所はどこか決まっているのか?」
     飲み会当日になった。鍾離とは一緒に住んでいるのだが、朝も子犬が捨てられた時のような、しゅんとした顔で見送られた。あれは行くなと言っているようなものだ。行かないで欲しいのならちゃんと言って欲しいのに、鍾離は結局いつも魈を送り出す。
    「うん? うん。決まってるよ。スマホに送るね。でも大学から直接皆で行くから場所を知らなくても大丈夫だけど……また鍾離先生?」
    「そうだ。いつも飲み会の場所と帰りの時間を送ることになっている」
    「過保護だねぇ。絶対二次会とか行かないもんね、魈は」
    「二次会は必要ないので行かぬ。……我には信用がないのだろうか」
    「そんなことないでしょ。ただ心配なだけだと思うなぁ」
    「空から見て、我はどこが心配に見える?」
     例え夜道で暴漢に襲われた所で、返り討ちにすることは造作もないことである。では、それ以外の所で鍾離にとって心配事があるということだ。
     空に聞いた所によると、どうやら酒が進んでくると目がとろんとしてくる上に、押しに弱いらしい。
     二次会は絶対に断るということで、押しに弱くはないと思うのだが、次の飲み会への誘いは二つ返事で引き受けているらしい。これは、鍾離がなるべく行った方が良いと言うので行っているだけなのだが……。
    「ま、結局いつも鍾離先生迎えに来るから、心配ないよね」
     そうなのだ。帰りの時間になると、いつも店の近くまで鍾離が迎えに来ている。大学の人に見つかるのは嫌なので迎えに来なくても大丈夫です。と伝えてはいるが、そこは譲れないらしい。
    「魈も色んな人と交流した方がいいなって思うのは俺も同じだし、今日も飲もー!」
    「ああ、そうだな」
     我は酒に弱くない。一人でもちゃんと帰宅できる。他人と交流もできる。その証明のために、今日も飲み会へと向かった。


    「魈、二次会行かないでしょ? 俺は行くから、鍾離先生のところまで送っていくね」
    「いらぬ~! 我は一人でも帰れる!」
    「ああ……また始まった……あ、先生。ちょっと、魈をお願い」
    「ああ、いつもすまないな空」
     魈からだいたいの帰宅時間を教えて貰ってはいるのだが、ラストオーダーの時間くらいになったあたりで、いつも空にも連絡を貰うようにしている。これは決して魈を信用していないとかそういう訳ではない。ただ、飲んだ後の魈が心配なだけである。
     他の学友の姿は既に見当たらず、顔を真っ赤にして、壁にもたれ空に介抱されるまま手をジタバタしている魈を見つけた。今日も勧められるままたくさん飲み、楽しんだ様子が伺える。
    「鍾離様が! またいらしている! 我の事は放っておいてください!」
     頭からプンスコ! と茹で上がった蒸気が出そうな勢いで、魈は手をブンブンと回し、鍾離を拒否している。それは大変可愛いものだが、その姿を他の者にも晒していると思うと、それはいただけない。
    「魈。うちへ帰ろう。ほら、俺に掴まるといい」
    「嫌です! 我は一人で歩いて帰れます!」
     フン! と鼻を鳴らして魈は顔を背けた。しかし、立ち上がる様子は微塵もない。自覚もないまま、もう立つこともままならないのだろう。
    「空は次の会があるのだろう? 魈の事は俺に任せて行くと良い」
    「うん……魈、また明日学校でね」
     数回空が出口に向かいながらこちらの様子を伺っていたが、ごめん! とでも言うように手を合わせ店を後にしてしまった。
    「魈。随分と楽しかったようだな。水でも飲みなさい」
    「嫌です! 鍾離様の手は煩わせません」
    「魈……」
     何が嫌なんだ。俺の手を煩わせないで一体どうやって帰るつもりなんだ? と尋ねたいところではあるが、これはいつもの事であり、明確な返答は得られないことはわかっている。
     テーブルに目をやれば、おそらく魈の飲みかけであろうお酒が置いてあった。一見牛乳にでも見えるそれは、香りからして彼の好きな杏仁豆腐にも似た味の、アマレット・ミルクだろう。
    「水を飲まないのなら無理矢理飲ませるが、良いか?」
    「そうやっていつも! 鍾離様は我の答えを聞くつもりで、選択肢を与えませんよね!」
     駄目だ。話が通じん。水の入ったグラスを魈の口元に持っていくが、飲む素振りを見せないばかりか顔を背けるばかりだ。仕方ない。
    「だいたい鍾離様は我のことを心配しすぎで……ひゃ、んっ」
     こんな時でないとつらつら文句も言えないのなら、しばらく聞いてやっても良いのだが、それは家に帰ってからでも良い。
     飲まないのなら飲ませるまで。水を口に含み、魈の口内へと流し込んだ。首の後ろに手をやり後頭部を支えたが、とても熱を持っている。
    「しょうり、さまぁ……」
    「さぁ、うちへ帰ろう」
     途端に金色の瞳がとろりと潤んで、今にも溢れ落ちそうになっている。魈は眉を下げ、頬を紅潮させ、情事の時に見せるような色っぽい顔をしていた。全く、自分に隙がないと言っているが、酔っているお前はほんとに隙だらけで心配になってしまう。
     口を閉じたことで魈は気分が落ち着いたのか、鍾離の衣服を握り締め、胸元に首を埋めて小さく頷いていた。
    「しょうりさま……あったかいです」
    「そうか」
     横抱きにすると、鍾離の胸元に埋まるように身を寄せてきた。助手席まで運んで車を発進させると、すぐに頭は船を漕ぎ出し、既に半分くらい目を閉じかけている。
    「しょうりさま」
    「なんだ」
    「ありがとうございます、しょうりさま」
     あと何か言いたかったのだろうが、鍾離様、と何回か名前を呼ばれた後の音がよく聞き取れなかった。しばらくして横を見ると、シートに身を預け、完全に眠りに入っている魈が目に入る。
     あと何回飲み会に行くのだろうか。まぁ、最後は必ず俺の所に帰ってくるのだから、多少の交流には何も言わずに送り出してあげられるようにならなくてはな。と思いつつ、今日も車を走らせるのであった。
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    SPOILERこの文書は『ブラックチャンネル』の、主にエピソード0について語ります。漫画版・アニメ版両方について触れます。
    コミックス最新刊の話までガッツリあるのでまだ読んでないよこれから読むよって方はご注意ください。
    あくまで個人の考察です、自己満足のため読了後の苦情は一切受け付けておりません。
    タイトルの通り宗教的な話題に触れます。苦手な方はブラウザバックで閉じる事を推奨致します。
    ブラチャン エピソード0について実際の神話学と比較した考察備忘録目次:
    【はじめに】
    【天使Bとは何者なのか】
    【堕天】
    【そもそも"アレ"は本当に神なのか】
    【ホワイト(天使A)とは何者なのか】
    【おまけ エピソード0以外の描写について】


    【はじめに】
    最近、ブラックチャンネルという月刊コロコロコミック連載の漫画にどハマりして単行本最新5巻までまとめて電子購入しました。
    もともと月刊コロコロ/コロコロアニキの漫画はよく読んでいたのですが(特にデデププ、コロッケ!etc)、アニキの系譜であるwebサイト『週刊コロコロコミック』において次々と新しい漫画の連載が始まり色々読みあさっていたところに、ブラックチャンネルもweb掲載がスタートし、試しに読んでみたらこのザマです。
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