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    kouki_nzd

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    しがむしゃ
    冒頭だけのやつ

    (未来の世界とは言え、変わるもんもありゃ変わらねぇもんもあるもんだな)
    一度目の人生を終え、アルケミストなる者の手により新たな生を得た文豪の一人である志賀直哉はふと思った。
     彼らにとって、二度目の人生を過ごすこの時代は一度目の生の記憶からすれば『遠い未来の世界』のようなものだ。記憶の中にある形から変化したものもあれば、逆に今彼が持つ傘のように昔から大して変わらぬものもある。
    「どうしたのさ、志賀。傘なんてジッと見つめちゃって」
    「いや、傘ってのは昔から形が変わらねぇもんだな。と、思って」
    「あぁ、言われてみれば確かに」
     武者小路も、自身が差す傘を見上げ「これに関しては僕らの時代どころか、その前から形が変わらないものだね」と志賀に同意した。
    「変わらないものといえば、志賀の好きな自転車もそうじゃない?」
    「まぁ、形自体は確かにあんまり変わってねぇけど。最近の自転車は軽量化だの折り畳み式だのが合ってだな」
    「志賀の話が長くなるから、自転車はともかく」
    「ともかくってなんだ! お前から振ったのに!」
    「形で言えば、それこそ僕ら自身が一番変わったんじゃないかな」
     確かに、武者小路が言ったように文豪達の容姿は一度目の生とは違う姿である。アルケミスト達曰く『生前の姿というより、文学に触れた人々の中で生まれた文豪たちに対するイメージや彼らの作品の文体から生まれた概念。そして、アルケミストの力により召喚された魂を有魂書と呼ばれる特別な本に注ぎ込み転生した』のが彼らであるため、その姿が以前のものと違うものであるというのも当然といえば当然だ。
    「不思議なものだよね。作品を作ったはずの僕らが作品や本で形作られて今こうして生きているのって」
    「そうだな、俺は俺だって自覚はあんのに他の誰かの手で作られてるって考えると妙な感じだ」
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