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    kouki_nzd

    @kouki_nzd

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    kouki_nzd

    MOURNING書きかけ没になった律楽(この人のことが好きだ)
     世間ではよく『恋は落ちるものだ』というが、俺の場合は落ちるというよりその感情がストンと胸の中に納まるような感じで自覚したのを覚えている。
     恋を自覚することになった日。
    「律瑠くんの嫌いなもの最近嫌いなものはなんだ?」
     その日は別に何か特別なことがあったわけでもなく、閉店作業が終わってコーヒーを淹れてくれた楽さんが時々聞いてくる質問にいつもと同じように正直に答えていた。
     楽さんはいつだって俺の嫌いなものを聞くと笑う。
     子供扱いされているようでいつも癪に思うわけだが、そんな俺の様子を知ってか知らずか楽さんがふいに「こうやって律瑠くんの嫌いなもの話を聞けるのも、今年で終わりかと思うとなんだか寂しいものだなぁ」と言った。
    「そういやそうッスね……」
    「就職先決まったのにギリギリまでバイト続けてもらって申し訳なかったなぁ」
    「いや、俺の方も就活中にシフトとか休み融通してもらいましたし」
     「あと面接のこととか自己PRに書くこととか、色々参考になったし……」と俺が言うと楽さんは「少しでも参考になったならよかったよ」そう笑って答える。
     楽さんが言った通り、憂鬱で 1065

    kouki_nzd

    MOURNING菊芥 現パロ(多分没)「ついに龍が指輪を受け取ってくれたんだ」
     そう言いながら、強くもない酒を飲み締まりのない顔をしていたのが一週間ほど前。めでたい話に、おまけに機嫌がいいもんだから俺の飯代まで払ってくれたので実にいい夜だった。
    「もう俺たちはダメかもしれん……」
     そして、浮かれ切っていた男が現在これである。
     マリッジブルーにしても早すぎる。


    「ヒロシ、その辛気臭い顔は何とかならねぇのか? 折角のタダ飯が不味くなるぜ」
    「誰が奢ると言った……」
     俺の言葉に言い返す声も、いつもに比べりゃ覇気も何もありゃしねぇ。「こりゃ相当重症だな」と眺めていいれば、ヒロシはまた「俺たちはダメかもしれん……」と先ほどと同じ言葉を零した。
    「おいおい、この前まであのだらしのない鼻の下伸ばしまくった面はどうしたぁ?」
    「そんな顔はしとらんぞ……」
    「いや、してたね。というか、オマエは芥川といるときは大体そんな面してるからな」
     現在こうして力なく項垂れているヒロシとその『婚約者』とやらになった芥川との付き合いってのは結構長いもんになる。出会いの経緯やらは面倒なので割愛しとくが、友人関係であった二人がいつの間にやら恋人に 3734

    kouki_nzd

    MOURNINGしがむしゃ
    冒頭だけのやつ
    (未来の世界とは言え、変わるもんもありゃ変わらねぇもんもあるもんだな)
    一度目の人生を終え、アルケミストなる者の手により新たな生を得た文豪の一人である志賀直哉はふと思った。
     彼らにとって、二度目の人生を過ごすこの時代は一度目の生の記憶からすれば『遠い未来の世界』のようなものだ。記憶の中にある形から変化したものもあれば、逆に今彼が持つ傘のように昔から大して変わらぬものもある。
    「どうしたのさ、志賀。傘なんてジッと見つめちゃって」
    「いや、傘ってのは昔から形が変わらねぇもんだな。と、思って」
    「あぁ、言われてみれば確かに」
     武者小路も、自身が差す傘を見上げ「これに関しては僕らの時代どころか、その前から形が変わらないものだね」と志賀に同意した。
    「変わらないものといえば、志賀の好きな自転車もそうじゃない?」
    「まぁ、形自体は確かにあんまり変わってねぇけど。最近の自転車は軽量化だの折り畳み式だのが合ってだな」
    「志賀の話が長くなるから、自転車はともかく」
    「ともかくってなんだ! お前から振ったのに!」
    「形で言えば、それこそ僕ら自身が一番変わったんじゃないかな」
     確かに、武者小路が言った 767