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    dps94kakuriyo

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    クラノス、サテヨモ、フククワのネタ帳からSS化したものをここにあげたり、文庫の作業場だったり。他にもいろいろ。

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    御真祖とミナさんの馴れ初め2。
    捏造多しです。続きます。

    #真ミナ

    昼の娘と夜の王2「うん。じゃあ手首出して」
    「これでいい?」
    「そう」
     吸血鬼は頸を噛むと聞いたけれど、吸血する時はどこでもいいのか。またひとつ面白いことが学べて嬉しい。
     彼——『D』の二つの牙が、僕の手首にプツリと突き刺さる様をじっと見ていた。ああ、立派な牙。痛みなんて、見惚れているうちに過ぎ去ってしまった。まるで肉食動物のようだけど血の匂いなんかしなくて、寧ろ芳しい。何の香りだろう? 後で聴いてみようか。
    「美味しいかい?」
     Dは小さく頷いた。まるで乳を吸う子供のようだ。手首にずっと湿った生温かさを感じて、僕は少し落ち着かなかった。そうして、Dの喉元が三回ほど上下した後、牙はゆっくりと手首から離れた。牙の先は、僕の血で少しだけ赤く染まっていた。
    「ふぅ、ごちそうさま。すごく美味しかった」
     Dの瞳がキラキラと輝いているように見えたのは気のせいだろうか? 顔は怖いけれど、何だか仕草が好奇心旺盛な少年みたいだ。
    「こんな美味しい血、初めてかも」
    「よかった。こんな僕でも、役に立てたなら嬉しい」
     この家の血統を残すだけの存在の僕。
     女らしくない頭でっかちで、家族から愛されない僕。
     ……愛そうとしない僕。
    「……ミナ?」
    「ん?」
     おっといけない。お客人を前に考え事だなんて。
    「ミナは私を空腹から救ってくれた。お陰ですごく元気になった。お礼に、何か私にできることはない?」
     Dの顔がずい、と僕の目の前に近づく。
    「え、お、お礼なんて——」

     ——ここから、出たい。
     いや、でも。でも、ここから、この家から出られたら。
     行きたいところがある。海の向こう。山の向こう。深い地下洞窟。氷だけの島。夜空に掛かる虹色のヴェール。砂漠のオアシス。石で作られた王墓。空の上。
     今しかないかもしれない。でも、そうすれば僕は、この家を。

    「うん。わかった」
    「えっ?」
     僕の目を見ながら、Dはコクリと、はっきりと頷いた。
    「明後日の夜、同じ時間にここで待ってて。迎えに来るから」
    「ええっ⁉︎」
     Dの口髭と唇が僕の手の甲に触れた。まるで神聖な誓いのように見えた。彼は、吸血鬼なのに。
     どうしよう、胸がドキドキする。
    「では、良い夜を」
     Dは窓辺からフワリと身を投げた。アッと思わず叫びそうになった瞬間、その体は無数の蝙蝠に変化して、僕が呆気に取られている間に、夜の闇の向こうに消えてしまった。

    「……え? まさか僕、あいつに心の中を読まれた……?」

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