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    Satsuki

    短い話を書きます。
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    Satsuki

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    猫フェリクスは可愛いというだけの話。捕虜設定はざじさん(@zazi_333)の素敵な捕虜フェリ創作からお借りしております。そろそろお借りしすぎなので自重します。

    #捕虜フェリ
    powFeri

    フェリクスは猫だった。耳から尻尾にかけては月夜の森の中のような柔らかい黒色で、喉やふわふわの腹側は雪のように真っ白い猫だった。いつだっていかにも猫らしくぴんと尻尾を立てて、キッと周りを睨みつけて歩いた。天気の良い日は池のほとりで魚を眺めたり、木箱の上で日に当たったりして過ごす。気が向くと青獅子の学級でディミトリと授業を聞き、訓練場で生徒たちが剣や槍を振るったり、弓を引いたりする様を眺めていた。
     孤高で、気難しい猫なのに、生徒たちはフェリクスのことを可愛がる。アッシュはフェリクスのために魚の骨と肉とを分けてやり、メルセデスは柔らかな膝をフェリクスに貸したがった。アネットは温室でこっそり歌を聞かせてやり、ドゥドゥーはフェリクスが歌を聞いたまま、柔らかく盛った土の上で眠っているのをそっとしておいてやる。イングリットは食堂の机の下で、そっと自分の肉をフェリクスに分けてやった。ディミトリが真似をして肉を分けてやろうとすると、フェリクスはつんとして絶対に手を付けない。彼はディミトリが自分の食事を無感情に飲み下すのを、いつも気に入らな気に見つめていた。
    「フェリクス、フェリクス」
     シルヴァンはうさぎや鳥の肉を仕入れては、フェリクスを呼んだ。フェリクスがしばらく気付かないふりをしていても、チッチッと舌を鳴らして、根気よくフェリクスに呼びかける。
    「フェリクス、ほら、うまいぞ」
     フェリクス用の小皿は水色で、シルヴァンのベッドの下にいつも隠されていた。今日もフェリクスのためだけに調理された肉を片手に、シルヴァンが呼んでいる。フェリクスは仕方なく、耳をピクピク動かして、尻尾を一振りしてやった。
    「来いよフェリクス」
     フェリクスは行かなくてはならなかった。別な学級の教室で、ベレトの授業を聞きたかったのだ。ベレトの声は低く優しい。剣を振る姿は興味深い。もっとベレトの近くで、学びたいことがあった。だからシルヴァンを無視するようにヒゲを上向かせ、別な場所を見ているふりをしている。しかし、肉の香りはかなり魅力的だ。
    「フェリクス」
     ニャ、と小さく返事をして、とうとうフェリクスはシルヴァンに招かれるまま彼の部屋へと入ってしまった。嬉しそうに笑う赤毛の青年の顔は、自分にはまるで子供の頃から変わらないように見えるのだが、中身はどんどんけしからん方向へと成長していってしまっている。そこが気に喰わない。彼はもっと、彼らしさをもって生きるべきなのに。フェリクスは行儀よく床に座って、水色の皿から肉を頂いた。ダスターベアだ。細かく刻まれた肉は食べやすい。すぐに食べつくしてぺろぺろと身繕いを始めたフェリクスを、シルヴァンは待ちわびたように抱き上げた。ベッドに座って、フェリクスを膝の上に乗せる。そんな無礼を、せめて肉の分は許容して、フェリクスはシルヴァンの膝で身繕いをつづけた。大きな手が背中を撫でる。尻尾をなぞり、首をマッサージしてくれる。フェリクスはなかなか良い気分で、シルヴァンの顔を見上げた。なんだか寂しそうな顔をして、シルヴァンはフェリクスを撫でる。
    フェリクスは美しい猫だった。艶やかな毛は触れるものを喜ばせ、にゃあ、と面倒くさそうに鳴く声も好まれた。
    「フェリクス、お前が好きだよ」
     シルヴァンは膝に抱いたフェリクスを両手で包み、低い声で囁いた。こんな風に人間の雌のことも口説いているのだろう。シルヴァンは温かい。フェリクスは仕方なく、グルグルとほんの少しだけ喉を鳴らしてやった。けれども、フェリクスは行かなくてはならなかった。トン、と軽やかに床へと降りて、フェリクスはシルヴァンを振り返った。扉を開けてくれ。目でそう訴えると、シルヴァンは残念そうに腰を上げた。にゃあ、と鳴いて催促すると、シルヴァンはノブに手をかけた。誰かが向こう側からノックしている。
     コン、コン。
    「シルヴァン」
     ディミトリだ。フェリクスはなんだか妙な気分になって、もう一度にゃあと鳴いた。どうしてか、不安だったのだ。シルヴァンはどこか思いつめた顔で扉を見つめている。フェリクスはシルヴァンの足に顔を擦りつけて、彼を見上げた。
     フェリクスは猫だった。シルヴァンは肉を片手に彼を呼んだ。
    「フェリクス……ここにいてくれ……」




     目を開けると、遠くにぼんやりとした明かりが見えた。狭くて圧迫感のある暗い場所で、フェリクスは小さく体を丸めて眠っていた。ぐっと伸びをしても、体の中の不快感は消えなかった。昨日の夜に通常よりひどい目にあわされて、やっとやっとベッドの下へと潜り込んで今まで眠っていたのだ。
     遠くの明かりはろうそくの炎だ。ゆらゆらと揺れている。部屋の片隅にある三人掛けのティーテーブルに、誰かが座っている。脚が見えるのだ。黒いブーツを履いた、両脚が。
     フェリクスはサッと警戒し、自分を包むようにしていた毛布を手繰り寄せた。なにしろここへ連れてこられてからというもの、裸同然の格好で生活させられているのだ。羞恥よりも無防備さが不安を煽る。素早く周囲を見回して、部屋の中にいるのが黒いブーツの一人だけだということを確認した。ついでに、何かが床に置かれていることにも気が付いた。
     白い皿に乗せられているのは、紛れもなく、肉だった。こんがりと焼かれた、分厚いステーキ。ダスカーベアだ!フェリクスの鼻がひくひく動き、急に強い空腹を感じた。香ばしいガーリックと香草、肉汁の匂い。フェリクスは迷ったが、ずるずると床を這って移動する。脚の鎖が音をたてないように布で包んだが、微かに擦れる音はきっとシルヴァンに聞こえているだろう。ティーテーブルにほど近い場所に置かれた皿に、手を伸ばすのは勇気がいった。けれども、ああ、空腹には勝てない。
     散々逡巡した後に伸ばされたフェリクスの腕がベッドの下からそろりそろりと姿を現したのを見て、シルヴァンは耐えきれずに吹き出した。
    「ウウゥ……!!」
     まるで飢えた獣そのものだ。唸り声を上げて牽制しながら皿の上から一切れをかっさらって行ったフェリクスは、ベッドの下で肉汁たっぷりのそれを頬張った。素手で引っ張って食いちぎり、奥歯で噛み締めた。香草が臭みを消し、筋は切られている。うまい。体に力がみなぎるようだった。すぐに食べ終わり、次の一切れに手を伸ばす。
    「フェリクス、よく噛めよ」
     やかましい。黙れ気狂いの色情魔が。吐き捨てる代わりに肉を噛んだ。とにかく腹が立って、そして腹が減っていた。シルヴァンはティーテーブルで何をするでもなく、暗いろうそくの炎に照らされながらフェリクスのいるであろう場所を見つめていた。出撃前の、少し肌寒さを感じるようになった夜のことだった。
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    Satsuki

    BLANK全然明記していなかったのですが当方が書いている捕虜フェリは全てざじさん(@zazi_333)の素敵な捕虜フェリのファンフィクです。
    また書きたいところだけ書きました。シルヴァンにおいたをする悪い捕虜フェリです。全裸だけどえっちではないです。多分この後えっちなお仕置きをされる。されてほしい。
    ぼんやりと、冬の朝日が雪の上を照らし出すように意識を取り戻したのは幸運だった。フェリクスはその身を包んでいる温もりが、毛布ではなく湯によるものだと知覚したあとも、寝息を装い瞼を閉じたままでいる。ちゃぷ、と水面を揺らして、背後にいる誰かがフェリクスの肩に湯をかけている。その誰かの裸の胸板がフェリクスのぐったりと力の抜けた背を受け止めて、首を肩に凭れ掛からせている。小さく聞こえる機嫌のよさそうな鼻歌。フェリクスはまだぼんやりとする頭で薄っすらと目を開き、蝋燭の炎にちらちらと揺れる湯船を見た。
     そこから先は、ほぼ脊髄反射で体が動いたと言って良かった。
     まず最初に、背後の人間以外、周囲に人の気配が感じられなかったことがフェリクスをそうさせたと言える。それに、狭い浴槽の中に大の男が二人詰め込まれていたことで、足が不自由なフェリクスでも相手の足の間で体を支えることができた。なにより相手が油断しきっていたことが勝因だったが、彼も数時間にわたっての性交に疲労していたのだろう。だからフェリクスは、瞬時に身を翻して彼の濡れた赤い髪を掴み、渾身の力を込めて浴槽の縁に頭を叩きつけてやることができた。
    1988

    Satsuki

    CAN’T MAKEだいぶ冗長的な文章になってしまいうーんな出来になってしまった。脱走フェリの続きです。ひとまずぶち切って終わりにした感。
    捕虜設定はざじさん(@zazi_333)の素敵な捕虜フェリ創作からお借りしております。いつもありがとうございます。
    シルヴァンはしゃがみ込み、床に倒れ伏したまだ歳若い男の首に手をやった。まだ温かなその体は、昼までは食堂で勤勉に動き回っていたものだ。
    「どうだ?」
     ディミトリが静かにそう聞くと、シルヴァン首を横に振った。
    「だめですね。首を折られてます」
    「あいつ、やるな」
    「腕の力は、弱ってなかったですもんね」
    「ああ……さて、それじゃあ追いかけるか」
     どこか楽しそうに言うディミトリに、シルヴァンは立ち上がって暗い廊下を見つめた。所々に燭台があるが、この冷たく寂しい道を、フェリクスはどこまで進んでいったのだろう。

     ハァハァと荒い呼吸を吐きながら、フェリクスは床に爪を立てる。辺りの様子を確かめるために首を大きく動かさなければならなくて、体中の筋肉が悲鳴をあげていた。簡素な服はまくれ上がり、硬い石造りの床に擦れた膝や腕には無数の細かな傷ができ血を滲ませ始めている。ここはどこだ?目線の高さが変わってしまったせいで、距離感が全く掴めない。おまけに、さっきから同じような場所を延々と巡っているような錯覚に陥っている。いや、それが錯覚なのか、本当に同じ場所から動くことができていないのか、それすら分からない。
    8490

    Satsuki

    DOODLE猫フェリクスは可愛いというだけの話。捕虜設定はざじさん(@zazi_333)の素敵な捕虜フェリ創作からお借りしております。そろそろお借りしすぎなので自重します。
    フェリクスは猫だった。耳から尻尾にかけては月夜の森の中のような柔らかい黒色で、喉やふわふわの腹側は雪のように真っ白い猫だった。いつだっていかにも猫らしくぴんと尻尾を立てて、キッと周りを睨みつけて歩いた。天気の良い日は池のほとりで魚を眺めたり、木箱の上で日に当たったりして過ごす。気が向くと青獅子の学級でディミトリと授業を聞き、訓練場で生徒たちが剣や槍を振るったり、弓を引いたりする様を眺めていた。
     孤高で、気難しい猫なのに、生徒たちはフェリクスのことを可愛がる。アッシュはフェリクスのために魚の骨と肉とを分けてやり、メルセデスは柔らかな膝をフェリクスに貸したがった。アネットは温室でこっそり歌を聞かせてやり、ドゥドゥーはフェリクスが歌を聞いたまま、柔らかく盛った土の上で眠っているのをそっとしておいてやる。イングリットは食堂の机の下で、そっと自分の肉をフェリクスに分けてやった。ディミトリが真似をして肉を分けてやろうとすると、フェリクスはつんとして絶対に手を付けない。彼はディミトリが自分の食事を無感情に飲み下すのを、いつも気に入らな気に見つめていた。
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    Satsuki

    PROGRESS脱走フェリをお散歩させる。フリートしてた話の進捗です。そのうち続きを書くと思います。
    シルヴァンはしゃがみ込み、床に倒れ伏したまだ歳若い男の首に手をやった。まだ温かなその体は、昼までは食堂で勤勉に動き回っていたものだ。
    「どうだ?」
    ディミトリが静かにそう聞くと、シルヴァン首を横に振った。
    「だめですね。首を折られてます」
    「あいつ、やるな」
    「腕の力は、弱ってなかったですもんね」
    「ああ……さて、それじゃあ追いかけるか」
     どこか楽しそうに言うディミトリに、シルヴァンは立ち上がって暗い廊下を見つめた。所々に燭台があるが、この冷たく寂しい道を、フェリクスはどこまで進んでいったのだろう。

     ハァハァと荒い呼吸を吐きながら、フェリクスは床に爪を立てる。辺りの様子を確かめるために首を大きく動かさなければならなくて、体中の筋肉が悲鳴をあげていた。簡素な服はまくれ上がり、硬い石造りの床に擦れた膝や腕には無数の細かな傷ができ血を滲ませ始めている。ここはどこだ?目線の高さが変わってしまったせいで、距離感が全く掴めない。おまけに、さっきから同じような場所を延々と巡っているような錯覚に陥っている。いや、それが錯覚なのか、本当に同じ場所から動くことができていないのか、それすら分からない。
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