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    Satsuki

    短い話を書きます。
    @Satsuki_MDG

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    POIPOI 163

    Satsuki

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    捕虜フェリがシルヴァンと会話するだけ。

    #捕虜フェリ
    powFeri

    鎧も解かぬままフェリクスの部屋を訪れたシルヴァンは、血の匂いをぷんぷんさせながらベッドにどっかと腰掛けた。ベッドの下で様子を窺いながら、フェリクスは身を縮こまらせる。数日ぶりの来訪だった。最後に抱かれた時、大人しく留守番していろと言い含められたが、湧き上がる怒りややるせなさに任せてサイドテーブルを破壊した。まるでネズミのようにテーブルの足をかじって尖らせ、ベッドの下で隠し持っている。だが鎧を着られていてはこんなチャチな武器でシルヴァンに傷をつけることなどできはすまい。フェリクスはがっかりしながら、シルヴァンの泥だらけの脚を睨み付けていた。心臓は無理だ。首も隠されている。だとすれば、
    「あー、疲れた疲れた……フェリクス、ただいま」
    「…………」
     息を殺し、チャンスを待つ。もしもシルヴァンがベッドの下を覗き込んで来たら。そうしたら、目を突くことができるかもしれない。
    「ベルナデッタに会ったぜ」
    「!!」
     知った名前を出されて、フェリクスはギクッと表情を凍りつかせた。
    「フェリクスさんの仇です、ってさ。ブルブル震えながら弓引きしぼって。懐かしかったなあ……士官学校でも、いつもあんな感じだったよな」
    「…………」
    「だからつい、さ。教えてやっちまったよ。フェリクスはまだ生きてる、って」
     フェリクスは息が止まりそうだった。捕まっていることが仲間に知れただと?先生は自分の解放のために交換条件を出してくるだろうか。エーデルガルトが了承するとは思えないが、とうとう交渉材料に使われる日が来るのかも知れない。それは、不名誉で、味方に不利益をもたらすだろう。しかし自由が、戻ってくるかも知れない。
     待て、自由が戻ったところでどうだ。この足ではもう動けない。満足に戦えやしない。文字通りの足手まとい、お荷物のフェリクス。やめてくれ、先生。自分に価値なんてない。死んだものと思われていたなら、それでよかったのに。木片を握る手が震えた。心がぐちゃぐちゃにかき混ぜられるようだった。真っ黒いガントレットがベッドの下に伸びてきて、フェリクスの服を掴まえたのは、その時だった。
    「うっあっ……!!」
     咄嗟に攻撃しようとして、フェリクスは自分が思いの外狼狽しきっていたことに驚いた。心臓がバクバクと暴れて、息がうまく出来ない。あんなに待ち望んだ解放の時が来るかも知れないというのに、喜べない。ベッドの下から引きずり出され、フェリクスは易々とシルヴァンの腕に捕らえられた。甲冑相手に生身では太刀打ちできない。せっかく作った武器も、手首を強く握られるとすぐに取り落としてしまった。返り血を受けたままのシルヴァンは、どろっと濁った目でフェリクスを見つめる。そうしてベッドに押しつけて、重い体でのし掛かった。
    「チィッ……!どけっ!離せ!!」
    「お前、ベルナデッタと何かあったのか?」
    「……ッ!なにを、馬鹿なことを……!」
    「……ま、いいけどさ。あの子、お前が無事だって言ったら、」
    「……!」
    「笑って死んでったぜ」
     ゾッ、と、体が冷たくなるようだった。友人の死がそこにあることなぞ、分かり切っていたことなのに。自分だって誰かの家族を殺し、誰かの恋人を殺し、生きてきたはずなのに。
     なのに、シルヴァンはまるで、フェリクスのために人を殺したような言い方をした。それが自分のためであり、フェリクスのためでもあるかのように。人の体を好き勝手に掻き抱きながら、愛していると熱っぽく耳に吹き込むときのような調子で、シルヴァンは。
    「よくも、貴様……!!」
     フェリクスの怒りを、おそらくシルヴァンは正しく理解していなかっただろう。フェリクスの歪んだ顔をベッドに押しつけて、彼はにっこりと笑った。
    「あのサイドテーブル、俺が贔屓にしてる職人の作品だったのに。まったく悪い子だな〜お前は……」
     あとできっちりお仕置きしてやるから、待ってろよ。シルヴァンはフェリクスの背に膝を乗せて押さえ込むと、シーツを細く裂き、もがく両腕を後ろ手に縛り上げてしまった。なおも逃げようとする体をベッドの真ん中に放り投げ、足首同士も手早く拘束する。ついでに余ったシーツでグルグル巻きにされ、芋虫のようになったフェリクスは必死にもがいた。
    「そうそう、残念だけど助けは来ないぜ。お前が生きてることは、もう誰も知らないからな」
     部屋を出ていく刹那、振り返ったシルヴァンの顔は見たことがないほどに鋭い目をしていた。血の匂いが扉の外へと消えてゆき、フェリクスは怒りに震えながらがむしゃらに体を動かす。やがて疲れ果ててぐったりとした頃、フェリクスの目にじわりと涙が浮かんだ。
    「先生、……」
     一瞬でも、あの翡翠の青年が自分を案じる姿を想像したことが、フェリクスの心を再びズタズタに引き裂いていた。目の裏に浮かんだ少女の顔も、もう、うまく思い出せない。
     なによりも、助かるかも知れないという可能性に怯えた自分が、腹立たしかった。
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    related works

    Satsuki

    DOODLE猫フェリクスは可愛いというだけの話。捕虜設定はざじさん(@zazi_333)の素敵な捕虜フェリ創作からお借りしております。そろそろお借りしすぎなので自重します。
    フェリクスは猫だった。耳から尻尾にかけては月夜の森の中のような柔らかい黒色で、喉やふわふわの腹側は雪のように真っ白い猫だった。いつだっていかにも猫らしくぴんと尻尾を立てて、キッと周りを睨みつけて歩いた。天気の良い日は池のほとりで魚を眺めたり、木箱の上で日に当たったりして過ごす。気が向くと青獅子の学級でディミトリと授業を聞き、訓練場で生徒たちが剣や槍を振るったり、弓を引いたりする様を眺めていた。
     孤高で、気難しい猫なのに、生徒たちはフェリクスのことを可愛がる。アッシュはフェリクスのために魚の骨と肉とを分けてやり、メルセデスは柔らかな膝をフェリクスに貸したがった。アネットは温室でこっそり歌を聞かせてやり、ドゥドゥーはフェリクスが歌を聞いたまま、柔らかく盛った土の上で眠っているのをそっとしておいてやる。イングリットは食堂の机の下で、そっと自分の肉をフェリクスに分けてやった。ディミトリが真似をして肉を分けてやろうとすると、フェリクスはつんとして絶対に手を付けない。彼はディミトリが自分の食事を無感情に飲み下すのを、いつも気に入らな気に見つめていた。
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    Satsuki

    CAN’T MAKEだいぶ冗長的な文章になってしまいうーんな出来になってしまった。脱走フェリの続きです。ひとまずぶち切って終わりにした感。
    捕虜設定はざじさん(@zazi_333)の素敵な捕虜フェリ創作からお借りしております。いつもありがとうございます。
    シルヴァンはしゃがみ込み、床に倒れ伏したまだ歳若い男の首に手をやった。まだ温かなその体は、昼までは食堂で勤勉に動き回っていたものだ。
    「どうだ?」
     ディミトリが静かにそう聞くと、シルヴァン首を横に振った。
    「だめですね。首を折られてます」
    「あいつ、やるな」
    「腕の力は、弱ってなかったですもんね」
    「ああ……さて、それじゃあ追いかけるか」
     どこか楽しそうに言うディミトリに、シルヴァンは立ち上がって暗い廊下を見つめた。所々に燭台があるが、この冷たく寂しい道を、フェリクスはどこまで進んでいったのだろう。

     ハァハァと荒い呼吸を吐きながら、フェリクスは床に爪を立てる。辺りの様子を確かめるために首を大きく動かさなければならなくて、体中の筋肉が悲鳴をあげていた。簡素な服はまくれ上がり、硬い石造りの床に擦れた膝や腕には無数の細かな傷ができ血を滲ませ始めている。ここはどこだ?目線の高さが変わってしまったせいで、距離感が全く掴めない。おまけに、さっきから同じような場所を延々と巡っているような錯覚に陥っている。いや、それが錯覚なのか、本当に同じ場所から動くことができていないのか、それすら分からない。
    8490

    Satsuki

    BLANK全然明記していなかったのですが当方が書いている捕虜フェリは全てざじさん(@zazi_333)の素敵な捕虜フェリのファンフィクです。
    また書きたいところだけ書きました。シルヴァンにおいたをする悪い捕虜フェリです。全裸だけどえっちではないです。多分この後えっちなお仕置きをされる。されてほしい。
    ぼんやりと、冬の朝日が雪の上を照らし出すように意識を取り戻したのは幸運だった。フェリクスはその身を包んでいる温もりが、毛布ではなく湯によるものだと知覚したあとも、寝息を装い瞼を閉じたままでいる。ちゃぷ、と水面を揺らして、背後にいる誰かがフェリクスの肩に湯をかけている。その誰かの裸の胸板がフェリクスのぐったりと力の抜けた背を受け止めて、首を肩に凭れ掛からせている。小さく聞こえる機嫌のよさそうな鼻歌。フェリクスはまだぼんやりとする頭で薄っすらと目を開き、蝋燭の炎にちらちらと揺れる湯船を見た。
     そこから先は、ほぼ脊髄反射で体が動いたと言って良かった。
     まず最初に、背後の人間以外、周囲に人の気配が感じられなかったことがフェリクスをそうさせたと言える。それに、狭い浴槽の中に大の男が二人詰め込まれていたことで、足が不自由なフェリクスでも相手の足の間で体を支えることができた。なにより相手が油断しきっていたことが勝因だったが、彼も数時間にわたっての性交に疲労していたのだろう。だからフェリクスは、瞬時に身を翻して彼の濡れた赤い髪を掴み、渾身の力を込めて浴槽の縁に頭を叩きつけてやることができた。
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    Satsuki

    PROGRESS脱走フェリをお散歩させる。フリートしてた話の進捗です。そのうち続きを書くと思います。
    シルヴァンはしゃがみ込み、床に倒れ伏したまだ歳若い男の首に手をやった。まだ温かなその体は、昼までは食堂で勤勉に動き回っていたものだ。
    「どうだ?」
    ディミトリが静かにそう聞くと、シルヴァン首を横に振った。
    「だめですね。首を折られてます」
    「あいつ、やるな」
    「腕の力は、弱ってなかったですもんね」
    「ああ……さて、それじゃあ追いかけるか」
     どこか楽しそうに言うディミトリに、シルヴァンは立ち上がって暗い廊下を見つめた。所々に燭台があるが、この冷たく寂しい道を、フェリクスはどこまで進んでいったのだろう。

     ハァハァと荒い呼吸を吐きながら、フェリクスは床に爪を立てる。辺りの様子を確かめるために首を大きく動かさなければならなくて、体中の筋肉が悲鳴をあげていた。簡素な服はまくれ上がり、硬い石造りの床に擦れた膝や腕には無数の細かな傷ができ血を滲ませ始めている。ここはどこだ?目線の高さが変わってしまったせいで、距離感が全く掴めない。おまけに、さっきから同じような場所を延々と巡っているような錯覚に陥っている。いや、それが錯覚なのか、本当に同じ場所から動くことができていないのか、それすら分からない。
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