【本日担当しますロロノア・ゾロです】
「お前これ、半分死体だぞ」
「言うに事欠いて死体はねェだろ」
マッサージ用のベッドに仰向けになったローの首の後ろを指で押しながら、客に対して失礼な事を言うゾロに、思わずローは突っ込んだ。
「だって凝りすぎて筋肉はガチガチだし、あちこち歪んでる。よく動けてんな」
「いや、肩まわりと首の痛みは慢性的に感じてる。いい加減キツくなったんで此処に来た」
「あァ、じゃあ肩と首を念入りに、全身コースで良いな?任しとけ」
ニヤリと口の端を上げるゾロの顔は凶悪で、とても整体院のスタッフには見えないのだが本当に大丈夫だろうか。一抹の不安を覚えつつも、目元にタオルを掛けられたローは大人しく目を閉じた。
▽▼▽
大雑把そうな見た目に反して、ゾロの施術は丁寧で的確だった。固まった筋肉をほぐし、少しずつ可動域を広げていく。滞っていた血流が促進され、手足の先まで血が巡り身体がポカポカと温まるのがわかる。「痛くねェか?」というゾロの問いにも、ローはすっかりリラックスして「大丈夫だ」と答えた。
仰向けから横向きの体勢に変わり、肩から腰、臀部を念入りにほぐされたローは、上側にしていた脚を軽く折り曲げてゾロに抱えられる。
「ちょっと調整入れるぞ」
調整?と思ったローだが、軽く微睡んでいたこともあり適当に頷いた。それを受け、ゾロはローの身体を折り畳むように力を込めて上から押し込んだ。
パキパキパキッ
「⁈」
「ぶはっ」
自分の身体から発した音にローは驚いた。腰と背骨のあたりに軽い衝撃を感じたものの痛みは全くない。それよりも。
「テメェ今笑ったな?」
「いや、悪ィ……くくっ。どんだけ歪んでんだよお前」
笑いを噛み殺すゾロには軽く腹が立つが、確実に身体は楽になっている。何とも言えない気分でされるがままになっていたローだが、反対向きでの″調整″で先程以上の音が鳴った際には思わず二人で笑ってしまった。
▽▼▽
「よし、今日のところは以上だ。どうだ?」
「すげェ……格段に身体が軽くなった。礼を言う」
施術を終え、出された茶を飲みながらローが言う。肩や首が楽に回せるし、身体はすっかり弛緩して張っていた腰やふくらはぎも柔らかくなった。
ローの礼に対し、ゾロは「そりゃあ良かった」と嬉しそうに笑う。破顔すると存外幼いその笑顔に、ローはトゥンク……と胸をときめかせた。
「まァ忙しいんだろうから無理にとは言わねェが。辛くなる前にまた来いよ」
「次回分予約する。お前が空いてる日はいつだ」
そうしてローはこの整体院の常連となった。
了