【よだつか】13の続き 司はオリンピックへの出場が決まり、ユニフォームの採寸や、説明会に参加したりなど忙しい日が続いていた。
全日本で優勝したため、三月末の世界フィギュアスケート選手権にも出場が決定している。
東京に練習拠点があるのはとてもありがたい。都心へのアクセスもいいし、毎日好きな時間に氷に乗れる環境の貴重さを噛み締めながら練習する。
「夜鷹さんはすごいですね……」
氷の上での小休憩時、リンクサイドで水を飲んでいた夜鷹さんに後ろから抱きついて、肩に顎を載せた。
「何が?」
夜鷹さんの返事は、口調だけ聞くと短くてそっけない。人によっては、ばっさりと切り捨てられているように感じるかもしれない。
本人もその自覚があり気にしているみたいで、俺に何か話す時はくっついたり触ったりしながらのことが多いから、俺も話す時は抱きついたり手を握ったりしながらのことが多くなった。どんなものより、夜鷹さんに触れている時の方が落ち着くし、安心できる。
634