ある「元」光の戦士の6.02その3 必要な資材を製作してカイ・シルに渡す。彼はいつも感激し、報酬としてクラフタースクリップを渡してくれる。これがあれば、特別な食材を分けてもらうことができる。
マテリアと交換して売却するのも悪くない……。
「それにしても、どら褒めるやん」
「どら」
フェオが不思議そうな顔でフィーネを見る。
「ごめん。方言でちゃった」
普段は標準語を心がけているのだけど。
「すごく褒められたな、ってこと。カイ・シルはおおげさだよ」
「あなた器用だとは思うわよ」
フェオはふぁ、とあくびをしている。彼女にとってユールモアは退屈なようだ。
「『美しい枝』に褒められるのは悪くないねえ」
フィーネは口元を拭きながら皿を重ねる。自分の分とフェオの二人分だ。
「ドリンク無料券ついてるんだって。私たちももらってこようか」
ひらひらと手に持った紙を振ってみせる。さきほど製作を手伝ったチラシを一枚もらったのだ。
「私はいらないのだわ~おなかいっぱい」
そう言うとフェオはもぞもぞとフィーネの服に潜り込み、落ち着きの良い位置を見つけたのか船をこぎだした。指先でほっぺをむにむにするとあたたかい。
最近は毎週ユールモアに通ってカイ・シルを手伝っている。
まかないも毎回出されているので嬉しい。メニューがマッシュルームソテーとブラッドトマトサラダで固定なのはやや気になるが、いまのところ飽きは来ない。
仕事も終わったし、遅めの昼食も食べ終わった。このあとどうしようか。
すーすーと寝息を立てるフェオを眺めながらフィーネは思案する。そういえば彼女に甘味を要求されていた。お茶を吹きかけたお詫びである。まだまだ許してくれていないらしい。
そうだ、この近く、この時間なら「アレ」が採集できるはず。
『美しい枝』をそっと服から出して、彼女専用のポシェットに入ってもらい、肩からさげて運ぶ。
フェオを起こさないように帰り道に素材を採っていこう。