夜気の迫る音 そこは暗く、冷たい場所だった。
耳の奥で金属音が鳴り続けるような無音、或いは本当に、鳴っているのかもしれない。
痛い、と思った。
藍忘機は耳を塞ぎ、その無音の痛みから逃れた。
とにかくここがどこなのか、どういった場所なのかを把握する必要がある。
現実味のないその暗闇から夢だとも思ったが、肉体の感覚は現実だと訴える。
いつここに迷い込み、どれくらいここにいるのか。
何かを、何か大切なものを探していたはずだ。
「魏嬰」
大切なものなど、わかり切っている。藍忘機にとって最も大切だと言えるのは彼ひとりに他ならない。もちろん、彼以外がどうでもいいと言う訳ではないけれど、もし彼か彼以外の全てかを選べと言われたら迷わず彼を選ぶだろう。
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