カーネーション(後編)「ジェイド…ごめんね?」
「…何がです?僕を置いて逝った事?それとも今の今まで夢の中でさえ逢いに来てくれなかった事ですか?あ、それとも僕の愛情たっぷりのキノコ料理を残したことで?それとも僕の大事にしてたテラリウムを壊した事です?…あぁ、フロイド何て罪深い人、しくしく」
「うげぇ…きのこ以外は全部ごめぇんだけど…違ぇ事」
「違う事?もっとあるんですか?」
「ん、まぁ…沢山ごめんなんだけど…ジェイド、コレは夢だって思ってねぇ?」
「夢じゃないんですか?…なら、フロイド、どうして此処に?僕を迎えに来てくれたのですか?」
「詳しく話すと長くなっちゃうし途中で俺、話すの飽きちゃうから端折るけどぉ、生き返らせて貰ったんだ〜。ジェイドの寿命半分を対価にして。勝手に半分貰っちゃってごめんね?」
「…は?」
「冥府って言うの?ホタルイカ先輩んとこの。気付いたらそこにいて。あー、俺、死んじゃったんだなー。でも、ジェイド居ないの嫌だし〜ってそこにいた偉い人探し出してお願いしたんだけど条件があって〜、でもジェイド全然言ってくんねーし、1年経っちゃったから手紙出したんだぁ」
突拍子もなくいつもの間延びした声で話すフロイド。聞きたい事がありすぎる。
「僕の命?対価?条件?」
「条件は手紙で気付いてくれたから良いんだけど〜」
「手紙?あぁ、カーネーションの花言葉ですか?」
「そ。本当はジェイドに俺に逢いたいって心から思わせ言ってもらう事が条件だったんだけどジェイドなら花弁気付いてくれっかなぁ?って思ったんだぁ」
「…気づかなかったらどうするんですか?」
「ん、気付くまで送り続けるだけ〜。
まぁあ、俺の寿命は終わっちゃったけどジェイドん事置いてちゃったから、ジェイドの寿命半分貰って還って来た。そしたら今度は一緒に死ねるじゃん?どんだけ生きれるかはしんねーけどこれからは死ぬ時も死んだ後も一緒だよ?」
「…」
やはりこの片割れは常識を意図も簡単に壊してくる。
僕の思考を容易く越えて僕に楽しい事を与えてくれる。
「…さすがです。それでこそ僕のフロイドです」
「ふふ、そうでしょ?」
「えぇ。…おかえなさい、フロイド」
「ただいま!ジェイド」
唇を重ねると一気に感情が押し寄せてくる感覚を止めることが出来ない。
「…泣かないで、ジェイド」
涙を拭ってくれるフロイドの手を取り口付ける。
「フロイド、僕と番になりませんか?」
「…!?うん!なる!…へへっ、嬉しいのにジェイドの涙移ちゃって俺も涙止まんねぇ」
「…ふふふ。僕のせいにしないでください」
コンコンコン。
「ジェイド?入りますよ」
ノックの音と共にアズールの声が聞こえる。
「はい」
返事をするとドアが開きアズールが入ってくる。
「会議の時間になっても来ないので……っ!?」
「ただいま〜、アズールぅ」
「は?え?はぁ?」
片方のベッドに泣き腫らした顔で笑う2匹の人魚。
その状況に処理が追い付かないが2人の笑顔からこぼれ落ちる涙が光を纏って美しいとアズールは思った。
(その人魚達の涙に一瞬お金儲けになるとも思いましたがね。野暮なので黙っておきましょうか。勿体ないですが…)
Fin.