可愛い。「losぅ…カワイイデショォ…?なーんて、ふふ、我ながらあれはなかなか…あははっ!!」
静まり返った丑三つ時。
ちょっとした隙間から入ってくる風に身体を震わせつつ、男は静けさを打ち消すように大声で笑う。
「ねぇ皆さん、私が可愛いって言われたい理由、知りたいですか?」
男はパソコンの画面からそっと離れて立ち上がり、くるくると白衣を翻しながら回る。
「だって、ねぇ?ただ容姿のいいだけだったら貴方達飽きちゃうでしょう?」
男はピタッと止まると、ニッコリと慈しみの籠った笑顔を浮べる。
「正直ね?これだけ生きてれば分かるんですよ。」
男はゆっくりと窓際へと近づいていく。
「この容姿ですからね?自慢じゃないですけど、カッコイイだとか、綺麗だとか言われ続けてきたんです。自慢じゃないですけど。」
50cm。
「でもそう言う外見だけ褒めてくる人達って、すぐ離れていくんです。」
40cm。
「私の性格だとか実験のことを知ると、1人、また1人と…ね。」
30cm。
「だからね、思ったんです。」
20cm。
「本当の私を、さらけ出せばいい。と。」
10cm。
「そうすれば、この容姿で集まった大勢の人がいなくたって、私は…」
0cm。
「なんて、冗談ですよ。あれはただ被験者の反応が面白いからやっているだけです。」
そう言って窓枠に腰掛けた男の貼り付けたような笑みは、ほのかに光る月明かりに照らされて、より美しく映った。