貴方から、貴方へ(サイバー三号ver.)貴方から、貴方へ(サイバー三号)
私の名前は、サイバー三号です。
私には他の仲間達がまだ二機、居ます。
私達は日々、私達の敬愛する始祖様達の為に奮闘しています。
一号、四号と共に。
何故二号が居ないのかは、分かりません。
他の仲間達に聞いてみても、理解不能だと言われました。
「Hey!サイバー三号じゃねぇか!」
“ お疲れ様です、ジェームス様 ”
手下の眷属様達を引き連れて、ジェームス様が屋敷に戻られました。
ぺこり、と頭を下げた私に、ジェームス様はガシガシと私の頭を撫でて笑う。
「相変わらずお前達は堅苦しいなァ!ちょっとは笑え!」
そうジェームス様が仰るけれど、私達に“ 笑う ”と言う感情は、理解不能です。
ですが、それでも始祖様達は、何故か私達に話し掛けて下さります。
今のように、私達の頭を撫でたりします。
“ 笑う、と言う感情は、理解不能です ”
「あァ?んなもん適当に人間のガキ見付けて手ぇ振ってたら分かるもんだ」
“ 人間の、子供ですか ”
「アレ程、感情ってもんを表に出す奴等は居ねぇよ」
だから参考にするなら人間のガキだな、と笑ったジェームス様に、私は深く頭を下げた。
“ ご教授、感謝致します ”
「Non!バンビーノ達も俺も、お前達を認めてるからな!このくらいは手を貸してやるさ」
じゃあな、と去ろうとしたジェームス様は、再び私の方に身体を向け、思い出したように仰った。
「あぁそうだサイバー三号、お前に人間からの手紙を預かった」
“ 私宛に、ですか? ”
「くれた奴は誰だったか······あー、忘れちまったがな、お前に渡して欲しいんだとよ」
受け取れ、と私に手紙を渡したジェームス様は、今度こそ眷属様達を連れて去って行く。
“ 私宛の手紙を貰うのは、初めてです ”
最近、他の仲間達がそれぞれ手紙を貰う様子を見て、何故人間達はそんな行動を取るのだろうと、仲間達と顔を付き合わせて考える。
そうしてみても、やはり私達には理解不能な感情で、この手紙を見ればそれが分かるのでしょうか?と、シンプルに書かれた、宛名の無い手紙を開く。
『顔が良い仕草が素敵ダンスが天才可愛い可愛い可愛い、後、睫毛食べたいです!!』
“ ······睫毛は、食物では無いはずです ”
この手紙が、最近仲間達を悩ませている手紙。
それを見て、確かにこれは理解不能だと、始祖様達に聞いてみても何故か私達の頭を撫でるだけ。
“ 仲間達に、確認を取ります ”
頭の横のアンテナから信号を出して確認しても、やはり睫毛は食物では無い、と言う答えを頂きました。
ならば、この手紙は間違った情報を記載していることになる。
けれど、何故でしょう?それを正そうとは、思えません。
“ 私達には、やはり理解不能な物のようです ”
そう仲間達に返答し、私は鎧の中に手紙を仕舞う。
取り敢えずジェームス様に言われた通り、人間の子供達に手でも振ってみます。
そう考え、後日試しに街へ行き、人間の子供達に手を振ってみました。
私の顔を見て、泣き叫ぶ路地裏の子供達。
やはり、私達が感情を理解するのは、まだまだ先のようです。
泣き叫び、逃げ出して行く人間の子供達の背中を見て、私は仲間達に信号を送りました。
あわよくば次に人間の子供達に出会った時は、泣かれないと良いと言う、何故そう思うのかすら、理解不能な考えを抱きながら私は屋敷に帰るのでした。