サイバー三人組と、遊園地既視感。(サイバー三人組)
私の名前は、サイバー四号。
今日私達三人は、始祖様のご命令で人間の姿に変装した後、とある場所に来ている。
「大人三名様で宜しかったでしょうか?」
“ そうだ ”
「ではこちら、大人三名様分のチケットとなりますのでお受け取り下さい!」
“ 了解した ”
「それでは本日は楽しんで、行ってらっしゃい!」
目の前には満面の笑みで手を振る人間の女。
渡された“ チケット ”と言う紙を受け取り、私達は人間達の列から離れる。
“ 任務の一つを完了した ”
“ 了解、次の任務に移る ”
“ 次の任務は、このちけっとを持ちゲートを潜ることです ”
こくり、と私達は頷き合って“ 入場口 ”と書かれたゲートを潜る。
潜る際に回収された紙を見るに、これで訪れた人間の数を測るのだろうと、私達は始祖様に送る報告書に記載する。
“ ミッション2、完了しました ”
“ 了解、次の任務に移る ”
“ 次のミッション、生物の生態を調査せよ、を遂行する ”
ちけっとを渡した際に渡された地図を広げ、私達は顔を付き合わせる。
ライオン、カバ、白鳥、レッサーパンダ、他にも沢山の種類の生物がどうやら此処には存在しているらしい。
“ ちけっとには、アニマルランドと書かれている ”
“ 我々は、どうやら動物園に来ているらしい ”
“ 現状の把握は完了、周囲に敵反応が無いか調べます······完了しました、周囲に敵反応はありません ”
三号の信号に私達二人は頷き、園内を歩く。
私達の任務は、生物の生態を調査すること。
沢山の生物を観察し、始祖様に報告する為に報告書に記載して行く。
と、不意に私達を睨み付ける視線を感じ、私達は背中合わせに警戒を強めた。
“ 我々を探る正体を発見、鳥だ ”
“ 一号、敵の可能性はあるか? ”
“ 敵意は感じられん、敵の可能性は限りなく低い ”
“ 了解した。引き続き警戒は怠らず任務を再開する ”
そうして一旦通話を止め、私達は先程から全く動きを見せないその大きな、青い鳥を観察する。
ジッ、と私達を睨み付けるその視線は何処か始祖様の目に似ていて、まさか始祖様が来ているのでは?と思い私達はその鳥と会話を試みた。
“ 始祖様ですか? ”
「············」
“ 任務は、無事に遂行しています ”
「············」
“ 後で報告書をお渡しします ”
「············」
やはり目の前の始祖様?は答えない。
ただジッと私達を睨み付け、微動だにしない。
どうすれば良いのか対応に困っていれば、この施設の人間がこの鳥の柵の前に立ち、話し出した。
「皆さーん!今から“ ハシビロコウ ”の“ コウちゃん ”の説明をしまーす!」
ハシビロコウ、と言う名前を知り、私達はその大きな青い鳥を見る。
“ ハシビロコウ、と言う鳥なのか ”
“ 始祖様では無かったようだ ”
“ あの鳥は個体名、コウちゃんと認識。解説を聞きますか? ”
“ 了、その案を認承する ”
私達は再び頷き、人間の子供達に混じって解説を聞く。
10分程の解説を聞いた後、私達はその場を離れ、人間達が入って行くある一つの建物に入った。
“ 此処はみやげもの、と言う物を扱う店らしい ”
“ みやげもの······理解不能な言語だ。始祖様への報告書と共に、資料として何か一つ持って行く ”
“ 了解した ”
仲間達と再び通信を終え、どんな物が一番資料として適しているかを判断する。
······が、どれも似たような物ばかりで私達には到底扱い方が分からない。
“ 三号、四号、コレはどうだ ”
“ 一号の提案を認承、問題は無い ”
“ 四号と同じく、此方も異論はありません ”
“ では決まりだ、購入後速やかに屋敷に戻り、任務を終了する ”
一号が“ れじ ”と呼ばれる場所へ向かい、商品を購入する。
そして、私達は始祖様の待つ屋敷へと戻って行くのだった······。
〜 おまけ 〜
“ タクミ様、任務は無事終了致しました ”
「あぁご苦労」
“ 此方が報告書になります ”
“ そして此方が、調査資料の品となっています ”
「············何だコレは?」
始祖様であるタクミ様が、私達が手渡した資料品を見て問い掛ける。
“ ハシビロコウのコウちゃん、と言う生命体だそうです ”
“ 其方はその生命体を模したきーほるだー、と言う名称です ”
“ 人間達は皆、其方の品を鞄や通信機に付けるようです ”
私達が順にそう説明をすれば、タクミ様はきーほるだーを見詰めた後、口元を少し緩めて笑われた。
「お前達が楽しめたようで何よりだ」
その後、タクミの机にはハシビロコウのコウちゃんキーホルダーが置かれるようになったのだとか······。