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    ゆだろ/ydr

    @o_ka_yu_09/ゆだろ
    五悠メインの虎右固定

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    ゆだろ/ydr

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    ワンドロだった気がします。呪専パロ五悠

    バレンタイン「今日と言う今日は許せん! もう一緒に寝てやらんから!」
    「はぁ~~?? べっつに一人でも寝れるし? 久々に広いベッド堪能出来て最高だわ~~~」
    「ぜっったいに俺の部屋こんでよね! 先輩なんか知らん!」

     バン!と激しい音を立てながらドアを閉めた悠仁は本気で怒っているようで、ドスドス足音を立てながら去って行くのが分かる。
     一人残された部屋で、苛々しながらベッドに寝転がる。
     
    「一人でなんてなぁ……眠れるわけねーだろ!」

     売り言葉に買い言葉、というやつで、今日の夜をどう乗り切るか考えるだけで憂鬱になる。
     いつからだっただろう、一人で眠る事が出来なくなったのは。
     いつからだっただろう、悠仁が一緒に眠ってくれるようになったのは。

    「チッ……だる……」

     どうやって謝ろう、なんて考えているのに、素直じゃない自分は部屋に一人きりでも悪態ばかりで嫌になる。
     そんな態度だからいつまで経っても告白すら出来ないんだよ、なんて親友の言葉が頭を過ぎて、ますます腹立たしくなり眠れもしないのに目を閉じた。



     子供の頃からあまり睡眠の質は良くない方ではあった。
     ここ最近は特にそれが顕著に表れ始め、一日一時間睡眠なんて日がザラになっていた。
     別に時間が取れなかったわけではなくて、ただ眠ろうとしても寝付けない、眠っても浅すぎてすぐに目が覚めてしまい、むしろ一睡もしないほうが調子が良いくらいだった。
     けれどそんな生活をしていれば身体にも精神にもガタがくるのは仕方のない事で、だんだん食欲すら湧かず食堂に向かう事が稀になっていった。
     傑にはせめて食事は取れと言われるし、硝子にはサプリメントを渡されて、けれどぼんやりとした頭ではそれすら億劫だった。

     そんな時に声を掛けてきたのが悠仁だった。
     悠仁とはもともとそれなりに仲良くしていたし、気に入っていたので純粋に心配してくれるのは嬉しかった。
     
     ある日、食堂で相変わらず無理矢理栄養を流し込んでいると、これなら無理せずに飲めるんじゃないか、とマグカップにたっぷり淹れられた甘そうなココアを渡された。
     それはなんだかバターのような香りのする、まるでチョコレートのような味がして、温かいそれは小さくなった胃に優しく落ちていった。

    「……美味かった。これ、どこで買った? これなら飲めそう」
    「ん? 俺がココアパウダー買ってきて作ったんよ。前にテレビで見たんだけど、それを参考に先輩好みにアレンジしてみた!」

     全部飲んでくれて良かった!とはにかむ悠仁は本当に嬉しそうな顔をしていて、俺が不調なだけでこんなに心配してくれる人間が居るのかと驚いたものだ。
     
    「なぁ、お前さぁ……いや、なんでもない」
    「え! 何なに!? 気になるから言ってよ!」
    「あー……俺と一緒に寝てくんねぇ?」

     ポカン、と開いた口を見ながら、あぁしまったと思う。
     なんとなく、なんとなくだけれど、悠仁が隣で寝てくれるならぐっすりと眠れる気がしたのだ。
     とは言え男が男の添い寝なんて、簡単に頷いてくれるはずもないし、俺なら断っている。

    「悪い、忘れろ」
    「いいよ、枕だけでいい? 布団も要る? 俺そんな寝相悪く無いつもりだけど、蹴っちゃったらゴメン!」
    「え、マジ……? 正気か? 気持ち悪くねぇの?」
    「? 何が気持ち悪いん? だってそれで眠れるかもしれんなら試すに越したことないっしょ」

     ニカ!と効果音がしそうな顔で笑う悠仁は、風呂に入ってから先輩の部屋で集合!と去って行って、俺はその後ろ姿を見ながら、心臓が煩く鳴るのに気付かないフリをした。

     結果、悠仁が隣に寝ている日は驚く程よく眠れることを知り、その日から任務の時以外は一緒に眠ってくれるようになった。
     身長の関係でもともとそれなりに広いベッドを使っていたけれど、デカイ男二人で横に並ぶとなんとなく窮屈で、朝目が覚めると悠仁を腕の中に抱えている日が多かった。
     向かい合わせで抱き合って目が覚めた時は、お互いなんとなく気恥ずかしくて、けれど「おはよう、先輩」と挨拶をしてくれるのが温かくて。
     
     いつのまにか、芽生えていた感情を理解するのは、難しい事では無かった。



     けれど人間というものはその状況に慣れてしまえば、無意識に甘えてきってしまうのだろう、今日みたいに悠仁を怒らせてしまう事は増えていった。
     きっかけはいつだって些細な事で、例えば自分の睡眠欲の為に悠仁がかけていたアラームをあらかじめ止めてみたり、悠仁が楽しみしていた新作のスナックをこっそり食べてみたり。
     今日は冷蔵庫に入っていた板チョコを完食している所を見つかり、素直に謝れば許されただろう所を無駄に煽ってしまったのが原因だった。
     きっと日頃の鬱憤が溜まっていたんだろう、いつもなら少し口喧嘩をして終わりだったというのに、もう寝てくれないときた。

    「……ココア飲みてぇな」

     一人きりの部屋で、せめてあの時作ってくれたココアを飲めば眠れるかもしれないと、冷蔵庫を漁ってみれば封の開いたココアパウダーとやらを見付けた。
     作り方は分からないけれど、子供の頃に何度か飲んだやつは温めた牛乳に粉を入れただけだったな、と同じ様に作ってみれば、見てくれは似た物が出来上がった。
     あっさりと出来上がったココアに、なんだ案外簡単なものだな、と口をつけてみれば思わず吐き出しそうになってしまった。

    「なんだこれ、全然甘くねぇ……なんか香りも違うし……」

     こんなことならレシピを聞いておけば良かったな、と思うも、さっきまでの自分はずっと悠仁は隣に居てくれて、頼めばあの温かく甘ったるいココアを作ってくれると信じていたのだ。
     でも、もう一緒に眠ってはくれないのだ。
     それもこれも、自分勝手で素直になれない自分のせいで。

    「悠仁……」

     持っていたマグカップを落としてしまい、派手に割れたそれには目もくれず、部屋を飛び出していた。



     あっという間に着いてしまったドアの前で、ノックをする事が出来ずに立ち尽くす。
     部屋に来るなと言われたばかりなのに、開けたドアの向こうで嫌な顔をされたらどうしよう、と考えると一歩を踏み出す事が難しい。
     けれどいつまでもこうしている訳にもいかず、ノックをしようと左手でドアを叩こうとした瞬間、ガチャリと開かれたのに驚き小さく声が出る。

    「え、うわビックリした……先輩、居たんだ」
    「ん……あの、さ……ゆーじ、ゴメン。俺、悠仁が居ないと眠れねぇ、から……嫌いにならないで」
    「……先輩は俺の事、抱き枕だと思ってんの?」
    「! 違う!」

     抱き枕だったらなんでもいいわけでは無い。
     悠仁を、腕の中に閉じ込めれば俺だけのものだと安心出来るから。
     まるで何もかもを受け入れてくれるように、抱きしめ返してくれるから。

    「俺、ゆーじが好き。好きで好きで堪らないから、一緒に居てくんねーと、もう寝る事も出来ねぇの」

     一人じゃ眠れないから一緒に寝て、なんて子供が母親に頼むような台詞を、自分が吐くとは思わなかった。
     情けない。
     けれど、本心だから。
     情けなく願ってでも、手に入れたいのはその隣だけだった。

    「ふは、そりゃ一緒に寝てやんねーとだね」
    「え、それって……」
    「俺も先輩が好きだよ。じゃないと先輩好みのココアなんて作れないでしょ」

     今だって結局ココア淹れてたんだ、甘ったるいやつ。
     と困ったように笑う悠仁の向こう側から甘い香りがして。

    「……今日は悠仁の部屋でそれ飲んでも良い?」
    「良いけど、俺の部屋のベッド、狭いよ?」
    「狭い方が好きだし」

     そう言えば、「先輩ってホント天邪鬼だよね」なんて笑われて。
     悠仁が淹れてくれたココアを飲めば、今日はなんだかチョコレートの味がして。
     カレンダーで確認した日付に驚くのは少し先の話だった。



    END
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