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    bunbun0range

    敦隆、龍握、タダホソの人。

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    bunbun0range

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    モチハナ進捗。アジアカップの翌年。
    花森目線。

    #モチハナ
    hollyhockFlower

    天体観測 顔を上げると、数え切れないほどの星々が瞬いていた。視界にはっきり捉えられるもの以外にも、ピントがぼやけたような小さな星や、赤っぽい光りを放つ星もある。
     かつての人類は、闇夜に浮かぶ星を目印にしたり、星と星を線で結び神々が織りなす物語を創造した。その上、出来上がった星座に自らの運命を委ねたりも。遥か何千光年先の光がこの地球に届いているだけなのに、おかしな話である。
     それでも星座の元になった神々は、おかしな逸話があるものばかりで、聞く分にはちょうどいい退屈凌ぎになるのだ。
    『皆さんは織姫と彦星の話を知っていますか』
     録音されたアナウンスが暗室に響く。
     知っていない者の方が少ないのではないかと内心で突っ込みを入れた。日本の初夏はまさにその二人を押し出しているではないか。実際このプラネタリウムでも、夏の星座特集としてその話題を取り上げている。
     天井に分かりやすく男女のイラストが浮かび上がり、川を挟んで悲壮感を漂わせた。これなら子どもにも分かりやすいだろう。
     結末まで分かりきった七夕の物語を聞き終えたあと、三つの星が線で結ばれ三角形を形成した。一度はどこかで耳にしたことのある『デネブ』『アルタイル』『ベガ』——夏の大三角形だ。
    『アルタイルと呼ばれる星が彦星。ベガが織姫ですね』
     なるほど。そことそこがイコールで繋がるのか。
     新しい発見につい耳が傾く。
    『デネブを尾にして、十字の形に星を繋げると……』
     羽を大きく広げた一羽の白鳥が夜空に浮かんだ。
    『はくちょう座になります。彦星たちにも星座があるんですよ。まず彦星は』
     ベガを中心に歪な十字架が切られる。
     出来上がったのは、星の海を泳ぐもう一羽の鳥。
    『これがわし座です』
    「……」
     鷲と聞いて緑色のエンブレムが頭に過ぎり、花森は眉間に皴を寄せる。
     はくちょう座の神話の中で、鷲が白鳥を追いかけたエピソードを話し出した頃には、いよいよ持田の姿が見えた。十代の時、特に意味はないのに持田に追いかけられた思い出。
     こうやっていないはずの持田が目の前に現れることは幾度もあった。
     彦星のロマンチックな話には到底似つかわしくない憎たらしいあの男の幻想が頭にこびりついて離れそうにない。そばにいるはずのない男が亡霊のように現れ、勝手に感情を揺さぶっていく。昨年のアジアカップでも二十歳前後の若い幻を見た。
    ——いつになったら消えるのだ。
     幻覚から逃げるように瞼を閉じ、暗闇に身を置く。
     視界が閉ざされると、一定の速さで流れるアナウンスの声だけが頭に入ってきた。
     次の話はわし座のエピソードのようだ。
     そして、それは美男子を攫うためにゼウスが化けた鷲という神話だった。手段を選ばないろくでもない最高神である。先ほども話したくせに、またはくちょう座の話も挟んできた。しかし、その理由はすぐに分かった。人妻に興味を持ったゼウスが白鳥に化けたあと、その女と交わったらしい。
    『ゼウスは美しいものに目がなかったみたいですね』
    「……」
     そんな簡単に閉めるな。
     子供向きではないアダルトなエピソードが流れる中、花森はワナワナと震えるしかなかった。
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    bunbun0range

    DONEモチハナ? ハナモチ?(もはやモチ+ハナ)
    花森が出国する日の持田をイメージした。なんちゃって持田の独り言。
    甘い言葉もなければ、付き合ってないと思うけど相変わらずクソでか感情を持ってる2人。
    ちなみに飛行機にちゃんと花森は乗ってる。
    飛行機 吸い込まれそうなほど遠く青い空に、一本の飛行機雲が伸びる。
     東京の電線は宙に浮かんでおらず代わりに地面に張り巡らされていて、松葉杖をついた持田の視界を邪魔するものは何もない。昼間の太陽の眩しさに目を細めると、地上から飛び立った飛行機との距離が縮まった気がした。
    『今日、花森が日本を発つらしい』
     その噂を城西から聞いた時、持田はもうそろそろだと思ったくらいの軽い感覚で、さして心に引っかかる問題ではないと感じた。あちらのシーズンを考えればすぐに納得がいく。自分の足が物理的に止まっている間に、花森がこれまでと同じペースで成長し、当然の評価を受け日本から飛び出しただけの話だった。持田と花森は、頻繁に連絡を取り合うような関係ではないし、出国を知ったところで持田は花森を見送るつもりは毛頭ない。持田にとって花森は、高みを目指す自分に唯一迫ろうとする存在で、ジュニア時代から招集され、幾度も同じ試合に出場し苦楽を共にした相手でもあった。しかし、怪我で代表から離脱せざる得なくなった持田が残された花森とサッカーをする機会は、現状、花森と同じ舞台に立つか、再び代表に返り咲くしかなくなってしまっている。
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