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    hatimitu_umeko

    @hatimitu_umeko
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    ハイドとニールのお友達デート。薄っすらニルバリとガラハイ前提。面白い男達の会話が楽しかったです。本編後でニールが宇宙服脱いで普通に交流している設定。

    惑星メロンのデート「こちらカップル限定のスペシャルメロンボールです」
     そう言ってカフェの店員がハイドとニールの前に二つ並べたのは、半分に切った青肉の小玉メロンの上にバニラアイスと生クリームが山ほど盛られたパフェだった。一番上にちょこんとミントとナッツが飾りで乗っている。また青肉だけではなく、パフェには赤肉メロンも豊富に使われており、店員によれば中に当店自慢のカスタードとスポンジも入っているらしい。
     手を付ける前に二人分のメロンボールの写真を撮影し、ハイドはガラにデート中と一文を添えて送った。写真の隅には、元気にピースしたニールの手が入り込んでいる。そうして反応を待たずに携帯を置いて、溶けそうなバニラアイスをメロンの欠片と共にスプーンで掬って食べた。強烈な甘味と冷たさが舌を刺激し、その後に来るナッツの塩味とミントの爽やかさが味を引き立てながら余韻を和らげる。セットのコーヒーとの相性も良かった。
    「こういう賑やかな店で、華やかなスイーツを食べるのは久しぶりだ。普段と違う雰囲気を提供して、相手に新鮮味を感じて貰うならば外れてはいない」
    「それは良かった。私はあまり味が分からない身なのだが、これは美味しいものだろうか?」
    「甘くて美味しい。バリスタも同じ感想を抱くはずだ。ただこのコーヒーは彼が淹れたものと比べると評価は低くなるな」
    「確かに。このコーヒーの抽出は申し分なくて、適温で濃度も高く、豆も上等なものを使っている。提供価格を考えれば、シアトル中のカフェの平均より上だろうが、バリスタが淹れたものには劣ってしまう。彼が提供する飲み物の満足度は、私の中では一番だ」
    「それをバリスタとここに来た時に言ってやるといい。きっと喜んでくれる」
     穏やかな微笑みを絶やさず、ニールは優雅にコーヒーを飲み、ハイドと同じ動作でスプーンを使って、メロンボールを掬って口に運ぶ。出会ったばかりの頃の挙動、コーヒーカップに指を入れて飲み物を摂取する事はもうしない。今教えたばかりのハイドの感想を真似て、口の端に生クリームを付け、甘くて美味しいと呟くニールの姿を見て、味を分かっていないと思う者は居ないだろう。
     懐かしい宇宙服を着ず、言葉が流暢になったニールは宇宙人ではなく、何処にでも居る人間にしか見えない。カフェの一部に溶け込んでいる。ニールの目的を考えるならば、地球に適応出来たことは素晴らしい成果の一つだ。しかし本質は変わってないとはいえ、時々あの辿々しい言葉の宇宙飛行士に会いたくなる。我々に楽しい話題を提供してくれた星の隣人。
    「この生クリームとミントと言うものは、一緒に食べるとバリスタのミルキーウェイに似ている気がする」
    「あぁミント、乳製品、甘味と似た組み合わせだからだろう。それ以外にコーヒートークで出されている食材は、このボールに使われてはないな」
    「ふむ、ちなみにこのメロンというウリ科の果実。グリーンとオレンジの二種類を使っているようだが、地球か太陽系、或いは他の惑星のメタファーだったりするのかい?」
    「はは、それは私も分からないな。だがメロンに壮大な宇宙を見出すのは……きっと人類史上、いや銀河史上、君が初めてなはずだ」
     奇をてらわない純粋な質問は、やはりニールらしい。友人の変わらない愉快な部分に笑い、ハイドは舌の上に丸く切り抜かれた赤い火星のメロンを転がした。芳醇な香りと濃厚な味わい、舌だけで潰せる程に柔らかな果肉は口を天国にする。多少の歯応えがありつつ、すっきりした甘味がある青い地球のメロンとは優劣つけ難い。デートだからカップル限定が良いとニールが選んだメニューだが、中々に当たりのスイーツだ。
     だがハイドにとっては、小玉とは言ってもメロンの半分に加え、そこに様々な甘味を乗せたパフェは、食べ切れない訳ではないが量が多い。最初の映画館でニールと分けたビックサイズのポップコーンが未だ胃に残っている。流石に口付けた物をニールに食べて貰う訳にはいかず、懸命にスプーンを動かす。ここにガラが居たなら余裕で自身の分も含めて平らげてくれていた。何よりこのメロンボールの味はガラも好きになってくれるはずだ。
     ニールとバリスタの場合はどうなるか。目の前のニールは余裕な顔で食べているが、バリスタの胃は恐らくハイドと同じぐらいだろう。聞けばニールの種族は栄養を胃以外の器官で貯蓄出来るらしく、大変便利で羨ましい。デートのプランの一つであるカフェ巡りはバリスタには悪くないが、念の為に忠告として地球人の食事量を把握した方が良いと伝える。膨れ過ぎた腹を抱えては、ムードもへったくれもない。
    「ご忠告ありがとう。恐らく大丈夫だと思うが参考にするよ。やはり貴方をデートのアドバイザーとして誘って良かった。急な依頼を受けてくれて嬉しいよ」
    「貴重な異星の友人の頼みだ。断る理由はないさ。それに私もオフで暇だったからな」
     昨夜のコーヒートークでハイドはニールから、バリスタをデートに誘う為にアドバイザー兼練習相手になって欲しいと頼まれた。ガラと付き合っているハイドならば、男性同士のカップルの参考例として適切だと考えたようだ。それを本命のバリスタの前で言うニールの度胸に感心し、面白そうだったから承諾した。バリスタは頬を染めて焦って止めようとしたけれども、運悪くその場には三人しか居らず、加勢してくれる客は他に居なかった。
    「デートスポットの予定候補は、映画、カフェ、公園、ショッピング、ディナー、バー、ホテルだったか。ホテルは一緒に入れないが、それ以外なら時間が許す限り付き合おう」
    「なら公園の前、貴方にショッピングで服を見て貰いたい。地球の多くの人々は、デートの際には着飾る習慣があると聞く」
    「構わない。モデルとして君のファッションを完璧にコーディネートしよう。医者風の格好は悪くないし、聴診器もユニークなアクセントになってるが……デートには少し似つかわしくない」
    「貴方のセンスに全てを委ねよう。しかし私から誘っておいて心配するのもなんだが、ハイドさんの恋人、ガラさんに了承を得なくて良かったのだろうか?恋人が居ながら、他の男と無断でデートを行うという事は、この地球ではトラブルの原因になるのではないか?嫉妬、羨望、疑惑、不信などの感情が発生する可能性がある」
    「あぁ多分、大丈夫だろう。先程、デート中と写真を送ったが……ガラは心の広い男だし、軽い冗談だと思ってくれるはずだ。君と私が友人関係であることは知っている。ただそうだな、冗談の種明かしは早めにしておくか」
     ニールの指摘に少しだけ心配になり、脇の携帯をハイドが手に取れば、既に何通かガラからメッセージが来ていた。食べる事に夢中になっていて、どうやら気付けなかったようだ。やっと一つ下のカスタードまで到達したメロンボールの挑戦を止め、嫌な予感がしつつもアプリを開く。すると同時にガラから、またメッセージが届き、その内容にハイドは口の端を僅かに強張らせた。
     淡々とした文面であるが、その下にある重たい感情がハイドには、ありありと感じ取れた。今し方のニールの言葉を借りるなら、嫉妬と不信だ。メッセージが段々と長文になっているのも危険だった。直ぐ様、謝罪と種明かしの内容を送信すれば、数分後に把握したと短い文だけが返って来る。以降、通知が止まるアプリにガラの機嫌を損ねたことをハイドは理解した。これは次に会った時は、適切な対応と償いをせねばならない。
    「……ニールの方がガラの気持ちを分かっていたようだ」
    「一般的に狼は群れ意識が強く、恋人や伴侶には執着や独占欲が強いと図鑑には書いてあった。それにガラさんからハイドさんへの深い愛情と心配性は分かりやすくて、私じゃなくても気付けるものだったよ。その顔色なら駄目だったようだね。私からもコーヒートークで会った際には、ガラさんに謝罪とお詫びをしよう」
    「助かる。バリスタとガラに徒党を組まれる可能性もあるからな。そうなったら勝ち目がない」
    「それは私でも勝てないな。種族の技術や知識を全て使っても難しい案件だ」
    「私も今回を参考に、ガラをデートに誘うか……思い返せば、最近は互いの家に泊まるばかりで、デートは数か月してなかった気がする」
    「是非ともそうすると良い。そして出来たら勉学の為に聞かせて欲しい。今度はガラさんも同席で」
    「分かった。ニールの方も上手くいったら聞かせてくれ。あのバリスタのプライベートは非常に気になるからな」
     互いに健闘を祈り、ハイドはメロンボールへの挑戦を再開した。このカフェにガラを連れて行くことを考えてスイーツを頬張る。映画館のカップルシートも含め、そういう路線で楽しんだ経験は少ないから、ガラも機嫌を直してくれるかもしれない。ただそのままニールと遊んだ場所を周るのは、逆にガラに取っては気に障るポイントか。食べ終わったら詳しいニールに意見を伺おうと決めて飲み込む。アドバイザーになるつもりが、助言を聞く側になっていた。
     苦いコーヒーで甘い惑星の余韻を消して一息つく。対処は早い方が良い、ガラをコーヒートークに呼び出そうかと思い、帰りに寄ろうと提案すればニールは喜んで承諾した。その時にニールも早速、バリスタをデートに誘うそうだ。あのバリスタの赤面と様子を見るに、今のままでも断ることはなさそうだが、一応誘い文句をレクチャーしよう。友人が横で愛の駆け引きに敗れるのは気まずい。このメロンのような甘いデートになることをハイドは願った。
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