『ドラルク隊の恋愛事情』 血の滲んだ腕と打撲のせいで薄っすら紫色に変色した肩を目の当たりにして、私は大きく舌打ちをした。
「うっ、あの、すみません」
バツが悪そうに、目の前の部下が体を強張らせる。私は沸々と湧き上がる苛立ちを抑え、長い溜息をついた。どんなに自身を落ち着かせようと試みても、眉間のシワは消えそうになかった。
ここは吸血鬼対策課、私が率いる通称『ドラルク隊』の控え室。個人のデスクが3つと、来客用の小さなソファが片隅に置いてあるだけの簡素な一室だ。
私は今、その来客用のソファに部下であるロナルドくんを座らせている。彼は先程の任務で右肩と腕を負傷したばかりだ。大きな怪我ではないからと頑なに病院に行きたがらないので、私が手当してやることにした。純粋に体を案じているのだが、彼は私の苛立ちを感じ取って完全に萎縮してしまっている。
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