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    waremokou_2

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    waremokou_2

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    最後の最後まで駆け込み乗車でした

    ネヤネが紅茶を一緒に飲む話。
    最終日ですありがとうございました。次回のわれ先生の連載にご期待ください。

     朝。いつもよりずっと早くに起きたのは子供だけではなかった。三毛縞が起きた頃、黒柳は休日であるにもかかわらず少し早く起きたようで、まだ眠たげな目で洗面所に立っていた。うとうとと彼方此方で船を漕ぎながら、隣に揃った三毛縞と共に歯を磨き始める。お互い朝の挨拶程度しか言葉はなかったが、それでも何を期待しているのか、待ち望んでいるかはわかっていた。それからしばらく、お互い寝ぼけた頭でぼうっとコーヒーを片手に待ち続ける事三十分。子供用の寝室から、わあっともはや悲鳴にも近い歓声が上がった時、目を見合わせた二人が示し合わせたように笑ったのは、子供の知らぬ話である。

     サンタへ出した手紙の希望は、結局それ以上のものとして叶えられていた。カルマには彼が希望した本と共に、新しい登山用のジャンバーとハットが。照也には希望に出した人形が二体に、候補の一つであった戦隊シリーズの武器を模したおもちゃが。手紙の返事には、日々の努力を認めその功績としてのプレゼントであるとの旨が記されていたらしく、まるで法廷に提出する書類さながらの堅苦しさの中に、思いやりと慈しみが見え隠れする手紙はたしかに黒柳らしかった。
    「よかったねえ、大事にしないとな」
     サンタさんありがとう、大事にします。夢中な子供たちの笑顔に、三毛縞も黒柳もようやく目が覚めただその光景を目に焼き付けた。

     そんなプレゼントを抱えながら、子供たちはさっさと古谷家へと駆け込んでいく。古谷家主催のクリスマスパーティーは前日から朝日奈らむをはじめ古谷一秋の友人が何人かが集まり飲んで騒いでの大盛況だったようだ。そして今日はその2日目、照也と業を招いてより大人数での(子供がいるため健全な)パーティーが幕を開けるらしい。もらったプレゼントを各々自慢し合い、お菓子とジュースで乾杯し、いくらかゲームも用意されているという。そこに、ねむの友人代表として招かれたのが照也と業だ。いくらか持たせたオヤツに、大きなプレゼントもしっかりと抱えた子供たちを送り届けた黒柳と三毛縞に、古谷の次男・千春は子供たちのプレゼントをめいっぱい褒めちぎりながら、ペコリと頭をさげる。
    「お二人はお出かけですか?」
    「おー、悪いなガキの面倒見せちまって」
    「いえいえ。パーティーは人が多い方が楽しいですし。お二人もまた是非」
     お出かけ楽しんで、と微笑む千春は相変わらず人懐こい表情で、珍しく黒柳が睨みつけない相手でもあった。よく知る朝日奈の姉妹もいればなお安心である。二人を預けながら、黒柳は静かにアクセルを踏んだ。

    「これを」
     一度帰宅した三毛縞に、黒柳はシンプルにラップングされた箱を差し出した。白一色のそれはそれなりの大きさにずっしりとした重さもある。黒柳は何も言わなかった。ただ目で〝開けたいのなら開けたらどうだ〟と言わんばかりに見つめてくるだけ。三毛縞は普段の豪快さを恐る恐る顰めながら、慎重に白い包装紙を丁寧に開いた。
    「――うわ、すげえ……」
     丁寧に包まれた緩衝材の内側に、慎ましく眠る陶器は美しい丸みを帯びていた。柔らかな白が暖かく、開く花を思わせる緩やかなカーブに沿って金のラインが美しい。そのティーセットはかつてメイド長が三毛縞に見せたどのカップとも違う、全く新しいものだった。
    「これは?」
     しかし、三毛縞はこれを差し出した黒柳の意図がわからなかった。見上げた三毛縞にしかし、黒柳はお前にだとまるで当たり前のようにそう言った。
    「二十四日で随分上達しただろう」
     黒柳はそれ以上はもう何も言わなかった。ただそれが、三毛縞にとっての必要な答えであり、このティーセットこそが黒柳の答えでもあった。少し可愛らしい華やかさながらに、上品さもたしかに存在するカップをかかげる。その美しく輝く陶器に、三毛縞は思わずニャハハと笑った。
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    waremokou_2

    DOODLE #HCOWDC 2
    お題は「おぼろ月」でした

    登場人物
    ・吉川直幸
    ・中島修一
    「月が綺麗ですね」
     そう囁く声に、思わず顔を上げた自分が馬鹿らしい。この声らしからぬ標準語じみた発音はどこかぎこち無ささえ感じられるのがゲンナリするのは、おそらくそういった言葉を普段から息をするように無駄撃ちするこの男の自業自得である。ただ――この男がぎこちなく標準語でそう囁いたことにより、かつ見上げた先に薄ぼんやりと輝く朧月に、その言葉が響きどおりの意味だけではないのだという明確な証明になってしまった。と、いうのも――正直にいってこの男に、朧月の美しさなど理解できるとは思えなかったからだ。
    「曇ってるけど」
     だから、あえてそう返事をした。この男が誤魔化すように言葉を撤回すれば、この恥ずかしい言葉は仕方ないから忘れてやろうと思ったのだ。この春休みが始まってから、気がつけばほとんどの時間をこの男と過ごしている気がする。段々と、友人らしい距離感に慣れてしまった。そのままどんどん絆されて、今、重く、熱く、むさ苦しい腕の中に収まっているこの距離感が果たして友情というラベリングを許されるのか、もうわからなくなってしまった。表面上の関係は、契約した以上この男が言うなら俺と中島は恋人だった。中島がそう思っているなら、という不安定な環境下で成り立つ関係性はこちらの感情をひどく乱す。だからなお、一層自分がはっきりと拒絶の意思を示せないことに、自分に腹が立って仕方ない。
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    waremokou_2

    DOODLE吉川のエプロンについての返歌です。
    その節は大変美味しいスイーツコンビをありがとうございました。
    今日改めて8回読み返し、ゲヘゲヘしています。
    美味しい小説をありがとうございました。

    ※これはスイーツ組のファンフィクションです。
    青空の夢を みんなが各々騒ぐ声を聞きながらする皿洗いは家事の中でも好きなものの一つだった。とはいっても、特に嫌いな家事があるわけでもなく――確かに、排水溝のゴミを捨てるのはいい気持ちではないし、虫の駆除は無理だけど――そんな風に思えるのはひとえに、みんなが分担してくれているからだ、というのが大きいだろう。今日は深津が夕飯作りを担当してくれて、俺が皿洗い。彼の料理は山内さん仕込みだと聞いているから、毎食丁寧で感動する。本人が〝そんなことない〟と謙虚なのもまた好ましいのだから、彼にファンが多いのも頷ける。さらには料理中片付けまでしてしまうのだから、こちらとしては彼の後皿洗いをするのは楽でいい。もっと散らかしていい、というのだが、癖だから、気になるから、と料理の片手間にさっさとキッチンまで整えてしまう。俺はと言えば、そのあとみんなで食べた残りの食器を呑気に洗うだけ。そりゃ、家事が嫌いじゃないなんてのうのうと言えるだろうな、と改めて自分の呑気さに呆れた。残りはグラスを濯いでしまえば終わり、という頃になっておおい、とリビングから呼ぶ声がする。
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