春に捧ぐラブソング (音春)サァァァ、と風が吹き抜ける音がする。それと同時に目の前が淡色に染まり、甘やかな香りがふわりと薫った。舞い散る花びらは風に乗って頬を撫でると、重力に従って地へ向かうように抱えているギターの上を滑り落ちていく。それがなんだか君に触れられているようで、擽ったくなって目を閉じた。
あたたかな君の温もりに似た風の音に、耳を傾けながらコードを押さえて弦を爪弾く。生まれたばかりの取り留めのない旋律に鼻唄を乗せていれば、柔らかな声が降り注いで。
「素敵なメロディーですね」
そっと目を開けて見上げた先にある春の陽射しのような笑顔に、また一つとくんと胸が高鳴る。
ねぇ、どれだけ歌えばこの想いは全て君へと届くのかな?その答えはまだ見つからないけれど、これだけは言えるよ。
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