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    samao

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    samao

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    バットリ404
    目が覚めたら君はいない。

    旅の終わり海は嫌いだ。
    あのべったりと纏わりつくような潮風とニオイを嗅ぐだけで吐き気がする。
    昔はとても好きだった気もするけれど、どうだったろうか。
    だから内陸ばかりをぐるぐると旅して回っている。助手席に座る相棒の横顔は、温度を感じないほどに白い。昔はもっと健康的な色をしていたようにも思うし、そうでもなかった気もする。
    「志摩、」
    「なに」
    「だいじょーぶ?疲れた?」
    「ちょっと暑さにやられたかな」
    「今日もめちゃくちゃ暑かったもんね」
    メロンパン号でぐるぐると走り回ってどのくらいの季節が巡っただろう。何度目の夏が来たのかは、もう数えることを止めた。売るためのメロンパンさえ積んでいないこの旅の目的はなんだっただろう。もうわからない。そして、たぶん気がついてはいけない。伊吹の野生の勘がそう告げていた。
    それに気がついてしまったら、たぶんこの旅は終わってしまう。
    旅が終わるだけならいい。でも、きっと。
    「伊吹」
    「志摩ちゃん、次はどこにいく?思い切って日本飛び出しちゃう?」
    「伊吹」
    「ね、志摩好きなところに行こう」
    志摩ひんやりとした手のひらが伊吹のハンドルを握る左手に触れた。志摩の手はこんなにも冷たかっただろうか。伊吹は不意に泣きたいような気持ちになる。車を路肩に停めると、志摩の柔らかな声が鼓膜を震わせた。
    「お前、もう戻れ」
    「戻るって、じゃあ志摩も一緒に戻ろう?」
    「うん」
    「オレたち相棒だろ」
    「そうだな」
    色のない顔をした志摩が、伊吹の目を真っ直ぐに見つめて、ほろりと表情を綻ばせる。
    「一緒に帰ろう」
    相棒、と囁くように言った相棒の輪郭が揺らぐ。ああ、こいつはまたこんな顔して平気でウソをつくんだなあ、と思うと腹立たしいし、ぶん殴ってやりたい。ポロポロとあふれる涙が邪魔だった。ちゃんとしっかりと、この顔を、表情を網膜に刻みつけておかなければいけないのに。
    「志摩」
    旅が終わってしまった。
    旅の終わりが一緒に相棒を連れて行ってしまった。

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