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    地球最後の日、らしい

    あなたと素敵な最期を。「緊急です!只今地球に巨大な隕石と思しき物が落下しているそうです……!!」

    時刻は午前9時44分。
    優雅に温かいハーブティーと苺のジャムが乗った香ばしいパンを食べかけていた朝、ラジオ代わりに付けていたテレビから何やら慌ただしい声が聞こえた。画面に目をやると、慌てふためく女性アナウンサーの姿がそこにあった。
    アナウンサーによると現在、地球に向かって隕石が降ってきているとの事だ。それも小さい物ではなく巨大な物。そんな物が落下するとなると地球なんて小さな惑星は一溜りもないだろう。

    狐雪はそれを聞いてぴくりと一瞬反応があった。が、それも束の間。何事も無かったかのように食べかけのパンを再び口に運び始めた。
    混乱していなかった訳では無い。一応不安な感情もありはしたが、今更どう足掻いても無駄だということをその間僅か0.5秒という短時間で冷静に判断したのだ。それに、目の前に用意された食事を平らげたい気持ちの方が勝ったのである。所謂『最後の晩餐』に相応しいかはさておき、璃瑞が作ってくれた手料理を食べられる最後の機会を逃す訳にはいかないと考えた。
    そんな最中アリアがバタバタと2階から駆け下りてこちらに話し掛けた。

    「大変、雪。ニュースは見た?隕石が…!」
    「見たよ。巨大隕石なんだってね」
    「璃瑞たち、大丈夫かしら…きっと怖いわよね…最後に会いたかったわ」
    「ね、怖いよね。不安だよね」
    「…その割には口角が上がっているけれど?」
    「あは、何でだろう。あとちょっとで何もかも終わりなのに不思議、楽しいんだよね」
    「雪…?」
    「きっと好きな人と最後を過ごせるからなのかもね」

    心境を淡々と語る狐雪は、いつも通りな筈なのに何故か少しだけ違って見えた。
    テレビが付けっぱなしだったため、先程のアナウンサーの金切り声が耳を劈く。

    「あぁ、まだ着いてたんだ」
    「慌てているわね、無理もない。突然知らされる死ほど怖いものは無いわ」
    「アリアも怖い?」
    「そうね、少し」
    「じゃあ手を繋いでいよう。そうしたらちょっとは安心するでしょ?」
    「、ええ。ありがとう」

    指を絡め、深く息を吸い込む。恐怖も段々と解れてきた頃、愈々隕石が地球に落下する直前らしい、という情報と共に死のカウントダウンも流れてきた。

    5,

    「アリア」

    4,

    「なぁに?」

    3,

    「愛してる」

    2,

    「ふふ、私も」

    1,

    「愛しているわ、『狐雪』。また来世で」

    -----

    時刻は午前10時36分。
    全ての時間が止まり、遂にカウントダウンが0を迎えた。
    最後に映った狐雪の笑顔は不気味なまでに美しく、それでいて、今までで1番綺麗だった。
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