ドライアイ 虎斗がしぱしぱと強く瞬きをしている。ぎゅっと瞑っては細目を開き、もう一度閉じてしばらく置いてから目を開く、そんなことを繰り返していた。
「どうした」
「ん、なんか……ドライアイっぽくて」
そんなら目薬させばいいだろ、と伝えると、そうだ目薬、とびっくりした声をあげてカバンの中をゴソゴソ探し出した。頭の中にその選択肢がなかったらしい。
「スマホの見過ぎか?」
「そんな見てないっすけどね……バスケ中に見開き過ぎとか……?」
それならオレも目が渇くはずだが、個人差があるのだろうか。生憎とオレは目薬を使う機会がないため持ち歩いてすらいない。
「うわ」
「オマエ目薬下手すぎんだろ」
虎斗の落とした水滴は見事に目の横に落ち、頬を伝う。涙に見えなくもないが、そんな儚い風景とは遠い事象につい面白くて笑ってしまった。
2146