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    komaki_etc

    波箱
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    北村Pの漣タケ狂い

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    雨想

    #雨想
    fleetingThing

    シーグラス 三人で海に来たら、それはもうあっという間に、それぞれが別行動をする。クリスさんは海の中へ、雨彦さんはどこかへふらふら、そういう僕も浜辺をうろうろ。波の音だけが僕らを繋いでいる。
     ふと、足元にコツンと何かが当たる。太陽の光をきらきらと柔らかく反射するそれは、貝殻でも珊瑚でもない。拾い上げてみれば、曇ったガラスの欠けら。いわゆるシーグラスだ。緑色の小さな輝きを拾い上げて、太陽に翳してみる。ここに辿り着くまで、どれだけの冒険をしてきたのだろう。僕が名前を知らないどこかの沖で、昔々の海賊が宴会中に放り投げた酒瓶だったら、浪漫がある。それとも案外、この浜辺でうっかり瓶を割っちゃっただけだったりして。くすくす、と込み上げる笑いを波の音に乗せていると、「綺麗だな」と雨彦さんが近付いてきた。
    「汚れ、はもういいんですかー?」
    「ああ。ここの海は澄んでる」
     雨彦さんは僕の手の中を覗き込んで、眩しそうに微笑んだ。
    「お掃除の人としては、ゴミなんじゃないんですかー?」
    「浜辺の清掃を仕事として依頼されてたら、そうだったかもな」
     今は違うさ、と笑い、僕からシーグラスを受け取る。空へ伸ばした腕は、僕よりずっと太陽に近い。
    「人によってはゴミ、人によっては宝物、ってか」
    「輝きの、重さは人に、よりにけり。……僕、持って帰ろうかなー」
    「ほう、珍しいな」
    「海の浪漫を家に飾っておけるなんて、ちょっと特別でしょー?」
    「何だか古論が言いそうなセリフだ」
     もう一度、今度は二人でくすくす笑う。広い広い海の前で、ちっぽけな人間がふたり、笑っている。
     海の方から、クリスさんが僕たちを呼ぶ声が聞こえる。雨彦さんがそれに応えるのを、僕は目を瞑って聞いていた。
     波の音が込められたガラスの欠けらは、きらきらと柔らかく光っている。
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    komaki_etc

    DOODLE雨想♀。一人称は僕。2人で温泉に行く話
    小春日和 しなびた胸だなあ、と思ってしまった。
     僕の行く末かもしれないのに、他人にそんなこと思ってしまうのは失礼だ、そんなことはわかっている。だけど、自分の若々しい張りのある肌が、いずれああなると思うと、どうしても途方もない時間が心を通り過ぎていく気がするのだ。
     雨彦さんと温泉に来たのは、別に商店街の福引があたったわけでも、プロデューサーの提案でもない。僕から言い出したことだった。電車で一時間くらいのところにスパ施設があるので、平日の昼間ならと誘ってみたら、意外にも彼はくいついてきた。メインイベントの風呂自体は別行動になるにも関わらず、二人でのそのそと出かけることとなった。
     のそのそと言うと亀のような、巣籠の熊のようなイメージがあるけれど、実際そんな感じだったので、言い得て妙かもしれない。乗り換えの駅で買い食いをしてみたり、あえて各停に乗ってみたり、僕たちはとにかく、のそのそと言うほかないほどのんびりと目的地に向かった。いつもは雨彦さんかクリスさん、プロデューサーの車に乗っての移動が多いから、こうして電車でゆっくり移動すること自体が久しぶり。僕は大好きな一人旅の時と同じような心地よい高揚感に包まれていた。
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