Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    komaki_etc

    波箱
    https://wavebox.me/wave/at23fs1i3k1q0dfa/
    北村Pの漣タケ狂い

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 145

    komaki_etc

    ☆quiet follow

    漣タケ。事後

    #漣タケ

    コーラ味 アイツのくしゃみは二パターンある。大地を揺るがすようなでかいやつと、子供がしたみたいな小さいやつ。今はささやかなほうが漏れた。
    「寒いか?」
    「さむくねえし」
     嘘つけ、と笑って毛布を渡す。薄手とはいえ、一人一枚必要な季節になってきた。外ではすっかり秋の風が吹いている。
     いい加減はだかでいることを諦めた方がいいのだろう、だけど心地いいのだ。つながった後、汗も精も尽きて一息ついて、二人でこうして寝ころんでいるのが。時折思い出したようにキスをするのは、なんだか犬と戯れているみたいだった。
    「オマエってさ」
    「あ?」
    「コーラ飲めるか」
    「飲めるにきまってんだろ」
     何を言ってるんだと心底不思議そうな顔をされてしまった。俺はどうしても小さい頃聞いた「歯が溶ける」という話が頭をよぎって、避けてしまうのだ。
    「今日、事務所でもらっちまって。冷蔵庫にあるから」
    「勝手に飲めってか」
     しめた、というようにニヤリと立ち上がり、全裸のままドカドカと冷蔵庫に向かう。その背中に俺が付けた爪の跡が残っていなくてよかった。以前つけてしまったときの罪悪感は半端なかった。
     アイツがペットボトルを傾けているのを見ながら、とりとめないことを思う。埼京線に久しぶりに乗ったら酷く揺れたこととか、車内広告に恭二さんがいたこととか、コンビニで一番安い水よりも、お茶の方が一円安かったこととか。
    「うまいか?」
    「ん」
     ごくごくと喉を鳴らして飲むアイツの涼しそうな目元に、毛布を掴む力が強くなる。あの目が好きだ、と思う。はちみつ色の、射貫くような視線。俺の上で汗をかいている時の必死さ、殊勝さ、そういったものの傲慢な輝き。抱かれてる時、俺だけを見ていればいいのに、と何度も考えるし、恐ろしいことに実際に伝えたこともある。その時のアイツはなんともいえない顔をしたあと不機嫌になったので、もう言わないようにしているけれど、どうしたって思ってしまう。俺だけを見てればいいのに。
     くしゅん、とまたくしゃみが聞こえた。コーラで身体が冷えたか。
    「そろそろ服着るか。ていうか風呂入るか」
    「明日でいーだろ」
     いつもなら終わってすぐ風呂に行くものの、今日はすっかりまどろんでしまい、汗は完全に乾いている。今から風呂に入るのは正直面倒くさいので、俺も同意見だった。アイツの匂いを身体に纏ったまま寝ることになるのも、まあ、たまにはいいかもしれない。
    「ふう」
    「もう飲み切ったのか」
     コーラを一気飲みしたアイツは満足そうにペットボトルを放った。それを片付けるのは俺なんだぞ。ベコンとシンクが音を立てる。
    「なあ」
    「なんだ」
    「もう一回」
    「え」
     もう無理だ、身体は冷めている、そう伝えようと起き上がったのに、はなから俺に選択肢なんてなかった。コーラ味のキスは強引で、それは今日エスカレーターで目の前にいた女の子の髪型がぴっちりと丸いお団子だったこととか、総菜のポテトサラダがいつもは十パーセント引きなのがニ十パーセント引きになっていたこととか、目まぐるしい日常を溶かしてく。
    「ん、う」
    「ふ」
     冷え切った身体を熱くなった血流が回っていく。寒さで鼻が詰まって、息が苦しい。
     苦しいのに。もどかしいのに。口内がコーラ味に染まっていく。動悸で耳がうるさい。心臓がうるさい。
     その背中に再び爪をたてる。爪は短く切りそろえているから、跡なんかつかないのだけれど。
     歯でもたててやろうか。体内に侵入してくる指の先が擦れるたび、俺は掠れた声を噛み殺した。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    kurautu

    DONE一週間ドロライさんよりお題「クリスマス」お借りしました!
    雨とクリスマス 初めての恋にあたふたしてほしい
    雨は 冷たい雨が凍りついて、白く儚い雪へと変わる。そんなことは都合よく起きなかった。僕はコンビニの狭い屋根の下で、雑誌コーナーを背中に貼り付けながら落ちてくる雨を見上げていた。
     初めてのクリスマスだ。雨彦さんと僕がいわゆる恋人同士という関係になってから。だからといって浮かれるつもりなんてなかったけれど、なんとなく僕たちは今日の夜に会う約束をしたし、他の予定で上書きをする事もなかった。少しだけ先に仕事が終わった僕はこうして雨彦さんを待っている。寒空の下で。空いた手をポケットへと入れた。手袋は昨日着たコートのポケットの中で留守番をしている。
     傘を差して、街路樹に取り付けられたささやかなイルミネーションの下を通り過ぎていく人たちは、この日のために用意したのかもしれないコートやマフラーで着飾っていた。雨を避けている僕よりもずっと暖かそうに見えた。視線を僕の足元へと移すと、いつものスニーカーが目に映る。僕たちがこれから行こうとしているのは、雨彦さんお気に入りの和食屋さんだ。クリスマスらしくたまには洋食もいいかもしれない、なんて昨日までは考えていたけれど、冬の雨の冷たさの前には温かいうどんや熱々のおでんの方が魅力的に思えてしまったのだから仕方がない。
    1915